異界娘に恋をしたら運命が変わった男の話〜不幸の吹き溜り、薄幸の美姫と言われていた俺が、英雄と呼ばれ、幸運の女神と結ばれて幸せを掴むまで〜

春紫苑

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望む未来 8

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 重たい沈黙。玄関広間の喧騒だけが、館内に響く。
 そこで、それまで口を閉ざしていたサヤが、口を開いた。

「あの……白い方が短命……というのは、何故なのでしょう?
 先天性白皮症の方は、色は作れませんが、陽の光の対策をしっかりとされており、他に疾患が無いのなら、人体の機能としては、正常な人と同じです。寿命も当然、同じです。何か、他に大きな疾患を伴ってらっしゃいますか?」
「疾患とは?」
「ん……血が固まりにくいとか……免疫不全……えっと……病気になりやすい。とか……筋力低下。運動神経や精神の発達障害……だったでしょうか。私も、うろ覚えですし、似ている別の病である可能性も捨てきれないので、なんとも頼りないのですが……」

 それに対し、ディート殿が首を傾げ、思考を巡らせる様に視線を彷徨わせる。この面々の中では、彼が一番、直近の姫様に詳しい。

「発達障害というのはどういうものだ?   よく分からぬが……人並みのことをする分には支障のないお身体だと思うが?   癇癪持ちは精神の発達障害か?」
「い、いえ、普通だと思います……」
「血が固まりにくいということもない。病は多いが……」

 学舎にいた頃から、体調を崩すことは多かったからな。しかし……。

「クリスタ様は、人に弱味を見せることを嫌う。だから、陽の光の下で無理をされていることも多いと思う」
「そういえば、ここにいらっしゃってから、姫はまだ体調を大きく崩されていないな……」

 ディート殿のつぶやきに、ギルも唸る。

「雨季で雨続きだから……というのもあるだろうが、それだけじゃねぇだろうな。学舎では、雨の日でも体調を崩してた」

 それを聞いたマルも、顎に手を当てて、天を見つめる。

「ここでは比較的健康……。つまり、王都でもしょっちゅう、体調を崩されておられるわけですね。王都の生活がどんな風か、一度確認してみなければ、分からないですねぇ」

 そんな風に言ってから、視線を俺に戻した。

「で、レイ様はどうされたいです?」
「は?」
「姫様の夫になるの、嫌なんですよね?なら、それを前提に、僕らは動きますよ」

 言われることの意味が、分からない……。

「い、嫌だけど……だからって、どうしようも、ないだろ……」

 この国の最高権力者となる方が命じたのだ。どうしようもない。そう思ったのだが……。

「レイ様が嫌だと言うなら、そうならないで済むように、僕らは動きますよ。
 なに、婚儀を挙げたわけでもありませんし、誓約だって使われてしまっている状況です。やりよう次第で逃げることだって、不可能ではない」

 そう言われて、ドキリとする。
 つ、使われてしまっている……?   俺の誓約を、マルは知ってる⁉︎
 愕然とするしかない俺に、マルはにっこりと笑った。王家の内情まで把握してる男に不可能は無いってことか……恐ろしすぎる。そんな男が、俺に言うのだ。

「僕、レイ様の印を頂きました。だから、それなりに仕事をする気はあるんですよ?
 レイ様が、クリスタ様の夫となり、王となって下さるなら、それが僕にとっては理想に最も近い形です。でも、レイ様の気持ちが伴わない以上、意味を成さないことでもあるのですよ。
 貴方の気持ちが無い時点で、僕の計画は優先順位から外れました。ですから、貴方の望みをお聞きしています。
 レイ様は、どうなさりたいですか?」

 それを言ってしまうと、迷惑をかけることに、なるんじゃないのか……?
 俺が全部飲み込んで、姫様の命に従うことが、一番穏便なんじゃないのか?
  そう思ったけれど、それを考えると、恐ろしくて身が竦んだ。
 たかだか男爵家の妾腹出である俺が、傀儡とはいえ王に祭り上げられるのだ。周りの風当たりは相当だろう。
 リカルド様の態度を見ていても、それは明白だ。
 ハインはきっと、それでも俺について来てくれるだろうけれど、メバックに支店を持ったギルとは離れることになる……サヤだってきっと、ここに残るのだろう……帰り方の手掛かりは、泉しかないのだから。
 そしてなにより、この村は……河川敷は……父上は……。俺の、担うと決めた、役割は……。

「レイ、言うて」

 葛藤する俺に、サヤが小さな声で、そう言った。

「聞かへんと、分からへん。最も良い道を探すことすら出来ひん。レイだけやない。クリスタ様のことかて、そうや」

 俺の瞳を覗き込み見上げてくるサヤ。
 苦しげに、何か思いつめた表情をしている。

「言わな、分からへん……。今回よう分かった……やっぱり、言わな、分からへんのんや。
 かんにん、私、勝手なこと、してしもた。レイの気持ち確認せずに、勝手したから、こんなことになってしもた……」

 サヤが何をしたのかは分からない。
 けれど、サヤが悪意を持って行動しただなんて、思ってない。だから、気にしてないと、首を振った。
 だがその俺の手を、サヤが握る。額に押しつける様にして、必死さの滲む声で。

「教えて、レイ。レイがどうしたいんか。私、もう、間違えたくない……ちゃんと、レイが本心、望むことを知りたい。それを成す為に行動する、考える!
 レイが一人、我慢せんでもええ。みんなが、ちゃんと納得できる道を、探そう?」
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