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第1章
26そもそも①
しおりを挟む浴室から出て、ほわほわと身体中から湯気とともに香りを匂い立たせながら、レオラムはぐったりしていた。
──ひ、酷い目にあった……。
今は撫でるように王子の魔術で優しく髪を乾かされている最中で、小さく頭を揺らしながら気持ちの良い手捌きに目を細め遠くを見つめた。
いろんな反応とともに確認しよう、などと、反応!? と目を白黒させている間に、抵抗できないよう封じられてから次の行動に出るまであっという間であった。
この機会にレオラムの身体を隅々まで確認しておこうね、と最初は抵抗していたがどう足掻いても王子の思うまま進むので、次第に気力もなくなり身を任せるまま散々弄られた。
あんなところやこんなことをと思うと、羞恥で神経が焼き切れ途中から正気を保っていられなかった。
レオラムは軟体動物でもなったかのように身体中の力が抜けたまま、カシュエル殿下に世話をされるがままだった。
「はぁ……」
思い出しては、溜め息が出る。
カシュエル殿下はとても楽しそうであったが、終始冷静であったように思える。レオラム一人慌てふためいて、最終的には兆してしまったものを扱われて喘がされてイカされてとか、信じられない。
握り込まれ扱われる中、ぬるりと舌先が耳をなぞりカリッと噛まれて最後を迎えるとか、本気であり得ない。
今でもその時の息遣いや熱さが濃厚に思い出される。
ああーっ、無性に叫び出したい気分だ。
他人から与えられる性的な愛撫はとんでもなかった。自分でコントロールできないことが、怖くてそれでいて気持ちよくて。相手が王子である背徳感もまたスパイスとなって、あっけなく達してしまった。
ちらりと見上げると、ばちっと王子と視線が合う。
「レオラムは髪も柔らかくて手触りがいいね」
も、ってなんだ。もって!!
穿った見方をしてまじまじと見るが、カシュエル殿下はにこっと笑うだけで、その笑顔に邪気はない。
美貌の微笑は凄まじい威力で、浴室のこともありレオラムはぼふんっと顔を赤くさせた。
レオラムをイカせるだけで、それも兆してしまったからついでにイっとこうか程度で、他に性的なことをされたわけでもなく、そういう意図で触って欲しいわけではないが、自分だけイクことの罪悪感がものすごい。
お願いしたわけではないのに、悪いことをさせてしまったという気持ちが止まらず、レオラムを大人しくさせた。
「……ありがとう、ございます」
もごもごと返事をしていると髪を乾かし終えた王子に、ふわふわのガウンを着せられる。バスタオルで全身を拭かれたが、念のためと体全体を乾かされた。過保護というか、とても至れり尽くせりである。
カシュエル殿下の魔術の才能は多岐に渡り、聖女召喚を行った後に転移魔法を使ったりと底が知れない。
「ふふっ」
大きな手で優しく頭を撫でられ、この部屋に来た時よりもその表情は柔らかく解けて見えて、レオラムも毒気が抜かれる。
気負っていても仕方がないというか、痴態を見られた後では多少のことは気にしたところで無駄であるというか。
本来なら傅かれる立場の王子は、レオラムの世話をすることが楽しいようで嬉々として構い倒してくる。なので、レオラムもこの短時間に慣れざるを得ない。
ふわふわとガウンに包まれて、レオラムの仕上がりを満足そうに眺めているカシュエル殿下に話しかける。話さないとまたさっきのことを思い出しそうだ。
「殿下、人の世話をするの慣れておられます?」
「ん。いや。するのは初めてだな」
「髪を乾かすのも上手かったですし、手慣れて見えたので。あと、楽しそうにされるので好きなのかなと思ったのですが」
「楽しそう?」
そこでカシュエル殿下は、レオラムをじっと見つめて考え込んだ。
場繋ぎというか、ただの気分転換のつもりの会話に考え込まれ、レオラムはびっくりする。
「殿下?」
「ああ。確かにレオラムの世話は楽しいな」
しみじみ告げられ、鼓動が早くなる。
殿下に他意はないと思うが、言われた方はどう反応していいのか困る。妙に気恥ずかしくなりながら、それを誤魔化すようにレオラムは早口で告げた。
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