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7.元聖女は辺境の地を訪れました。
176.
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翌日、私たちはステファンの実家に向かった。
「ジョッシュ、引き続き領地境の見回りを頼む」
アイザックさんは、そう副団長さんに言って、私たちの乗った馬車を走らせた。
朝出て、夕方くらいに私たちは大きなお屋敷に着いた。
大きいっていっても、キアーラの王宮みたいに煌びやかで大きいわけじゃないくて、横に広い平たいお屋敷だった。裏には山があって、山のてっぺんにはすごく大きな木が屋根みたいに生えている。
周りも、いろいろなお店とかがあるような街ではなくて、ところどころに農家さんの大きな家が建っていて、畑の横に広がる草原では羊や山羊や豚や鶏や――いろんな動物がのびのびと草を食べている。
とってものどかなところですね……。
「お帰りなさいませ! お早いお戻りで……! 奥様が心配しておられましたよ、アイザック様」
そう言って屋敷から出てきたおじいちゃんの執事は、ステファンを見て口をぱくぱくさせた。アイザックさんはため息を吐いて、おじいちゃんに言う。
「来客があった。フィオナを呼んでもらえるか?」
「ただいま……」
口をぱくぱくさせたまま、おじいちゃんは屋敷の中に戻って来た。
「少し、客間でお待ちください」
アイザックさんは私とエドラヒルさんにとても丁寧にそう言って、私たちを部屋に通してくれた。メイドさんが入れてくれたお茶を一口飲んだところで……、
「ステファンお兄様!? ライガ!? 帰ってきたの?」
ばたばたばたっと足音がして、赤っぽいローブに身を包んだ金髪の女の子が掛け込んで来た。青いぱっちりした瞳がやっぱりステファンやアイザックさんに似ている。
この人は……、
「よぉ、フィオナ! 久しぶり。お前も背伸びたなぁ」
ライガが手を上げて声をかける。やっぱり妹のフィオナさんですね。
「久しぶりじゃないわよ……、どういうこと? なんで二人が急に帰って来たの、アイザックお兄様! それにこのエルフは誰よ」
フィオナさんにつかつかと詰め寄られて、アイザックさんは少し後ずさりをします。
「こちらのエドラヒルさんは母上の昔の知り合いだそうだ。こちらのレイラさんは――兄上の連れだ」
フィオナさんはくるっと私たちの方を向くと、しげしげとこちらを眺めてから、「はじめまして」と挨拶して、それからまたアイザックさんに詰め寄る。
「――それで、どうして二人が――」
「アイザック、フィオナ」
ステファンが呼びかけると、弟と妹はしんっと水を打ったみたいに黙ってじっとステファンを見た。
「――母さんは、父さんのところかな。会わせて欲しいんだけど」
しばらく黙ってから、アイザックさんはむっとした表情のまま言った。
「母上は、今は父上にずっとつきっきりで回復魔法をかけています。――邪魔をしていただきたくない。お話の機会は僕が作ります」
「――ごめん、わかった」とステファンが言う前に、エドラさんが名乗り出る。
「回復魔法なら――、私が代わろう。イザベラ――お前たちの母親とは一緒に生命魔法の研究をしていた。私に辺境伯殿を見させてくれ」
アイザックさんとフィオナさんは顔を見合わせる。
「わかりました。ついてきてください」
アイザックさんはエドラさんにそう言うと、私たちについてくるように促した。
「ジョッシュ、引き続き領地境の見回りを頼む」
アイザックさんは、そう副団長さんに言って、私たちの乗った馬車を走らせた。
朝出て、夕方くらいに私たちは大きなお屋敷に着いた。
大きいっていっても、キアーラの王宮みたいに煌びやかで大きいわけじゃないくて、横に広い平たいお屋敷だった。裏には山があって、山のてっぺんにはすごく大きな木が屋根みたいに生えている。
周りも、いろいろなお店とかがあるような街ではなくて、ところどころに農家さんの大きな家が建っていて、畑の横に広がる草原では羊や山羊や豚や鶏や――いろんな動物がのびのびと草を食べている。
とってものどかなところですね……。
「お帰りなさいませ! お早いお戻りで……! 奥様が心配しておられましたよ、アイザック様」
そう言って屋敷から出てきたおじいちゃんの執事は、ステファンを見て口をぱくぱくさせた。アイザックさんはため息を吐いて、おじいちゃんに言う。
「来客があった。フィオナを呼んでもらえるか?」
「ただいま……」
口をぱくぱくさせたまま、おじいちゃんは屋敷の中に戻って来た。
「少し、客間でお待ちください」
アイザックさんは私とエドラヒルさんにとても丁寧にそう言って、私たちを部屋に通してくれた。メイドさんが入れてくれたお茶を一口飲んだところで……、
「ステファンお兄様!? ライガ!? 帰ってきたの?」
ばたばたばたっと足音がして、赤っぽいローブに身を包んだ金髪の女の子が掛け込んで来た。青いぱっちりした瞳がやっぱりステファンやアイザックさんに似ている。
この人は……、
「よぉ、フィオナ! 久しぶり。お前も背伸びたなぁ」
ライガが手を上げて声をかける。やっぱり妹のフィオナさんですね。
「久しぶりじゃないわよ……、どういうこと? なんで二人が急に帰って来たの、アイザックお兄様! それにこのエルフは誰よ」
フィオナさんにつかつかと詰め寄られて、アイザックさんは少し後ずさりをします。
「こちらのエドラヒルさんは母上の昔の知り合いだそうだ。こちらのレイラさんは――兄上の連れだ」
フィオナさんはくるっと私たちの方を向くと、しげしげとこちらを眺めてから、「はじめまして」と挨拶して、それからまたアイザックさんに詰め寄る。
「――それで、どうして二人が――」
「アイザック、フィオナ」
ステファンが呼びかけると、弟と妹はしんっと水を打ったみたいに黙ってじっとステファンを見た。
「――母さんは、父さんのところかな。会わせて欲しいんだけど」
しばらく黙ってから、アイザックさんはむっとした表情のまま言った。
「母上は、今は父上にずっとつきっきりで回復魔法をかけています。――邪魔をしていただきたくない。お話の機会は僕が作ります」
「――ごめん、わかった」とステファンが言う前に、エドラさんが名乗り出る。
「回復魔法なら――、私が代わろう。イザベラ――お前たちの母親とは一緒に生命魔法の研究をしていた。私に辺境伯殿を見させてくれ」
アイザックさんとフィオナさんは顔を見合わせる。
「わかりました。ついてきてください」
アイザックさんはエドラさんにそう言うと、私たちについてくるように促した。
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