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第三章

40. 秘めたる欲望 ③ ※

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 遠野の指が肌を滑る。愛おしむようにゆっくりと。
 それはまるで、壊してはいけないものに触れているみたいで。
 
 だけど、矢神にとってはたまったものではない。
 薬のせいで敏感になっているから、何をされてもビクビクと反応してしまう。
 下半身の熱が集まっている中心部は、痛いほど硬くなっていた。
 ここに触れて欲しいのに、願いは叶わない。
 
 
 ――口に出せってことか?
 

 ふうっ、ふうっと息をして呼吸を整えようとしたが、落ち着くはずもなく。
 遠野には足の付け根を撫で回され、したくもないのに腰を突き出してしまう。

 目隠しで状況がわからない。だが、自分が滑稽な姿をしているような気がした。

 
 ――焦らしプレイかよ!
 
 
 遠野がこの状態を楽しんでいるんじゃないかとさえ思えてくる。

 
 触ってもらえないなら、一人で悶えている方がいい。
 遠野にだけは、こんな姿を見られたくなかった。

 何もかもが苦しくて涙も出てきていた。
 だけど、それも目隠しのおかげで気づかれはしないだろう。

 そう思った瞬間、下半身の硬くなっている部分に手を乗せられた。

「うあっ……」

 なんとも情けない声が出る。

 視覚で確認できないせいか、快感よりも恐怖の方が勝っていた。
 遠野のてのひらが熱いのか、自分の身体が熱いのか、もうよくわからなかった。

 乗せられていただけのその手がゆっくりと動き出す。
 恐怖心を抱いていることに気づいているのか、優しく宝物を扱うかのように、てのひらでやわやわと撫でてくる。

「は、ぁ……っ、う……っん……」
 
 恐怖が快感に変わるのは早かった。
 それは薬のせいなのか、遠野の触り方が気持ち良かったからなのか。
 もっと触って欲しいと腰を押しつけていた。
 

 カチャカチャと金属音が響いてくる。矢神のスラックスのベルトを外しているのだ。緊張に身体がこわばった。
 今度は、ジジっとファスナーを下ろす音が耳に入ってきた。
 期待でゴクリと喉を鳴らしてしまう。
 自分の呼吸音と心音がうるさかった。
 まだか、まだか、と気持ちが焦る。

「ふぅっ、んんっ…」

 下着越しに触れられると、思わず腰を揺らして遠野の手に擦り付けていた。
 先ほどよりも快感が増しているようだった。直接触られたらどうなってしまうのだろう。

 下着の中はカウパーでぐちょぐちょになっているのがわかった。
 硬く熱を持ったその部分を形をなぞるように指が這う。まるで遊ばれているかのようで。
 じれったい触り方に、もっときちんと触って欲しいとそのことだけが頭の中をぐるぐるする。
 
 口にすれば、きっと遠野は言った通りのことをしてくれる。だけど、そんなことは自ら言えるわけがなかった。
 いくら薬でおかしくなっているとはいえ、その意識だけははっきりしていた。

 股間から手が離され、矢神のスラックスを下着ごと下ろす。
 下半身が空気に触れて心もとなかったが、すぐ次の刺激で身体が熱くなるのだ。
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