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04.私にも婚約者がいましたね
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帝国が全ての国を支配してしまえば、もう大陸全土と言っても過言ではない。ある程度、属国として独立させているからこそ運営できるのである。それを全て帝国へ土地返還のようにされても……無理だ。
「……数代に渡り、帝国の王族が各属国の王族へ嫁いだりして、帝国の教育を取り入れたりしている筈ですが……」
「……叔母から、手に負えなかったと手紙はきた」
属国であるという証の為、皇女はどこかの国の王族へ嫁いでいく、という決まりがある中、近しい親族としてお父様の叔母様からは手紙がきていたようで、お父様はそれを取り出して私達の前へ置いた。
――私が外交で不在をしている間に、騒動が起こりました。醜聞をもみ消す事も出来ず、王太子を廃嫡いたしましたが国王も信用に値せず。帝国法に則り、後は任せます。
「丸投げしましたね」
私の言葉に、お兄様とお父様が項垂れた。
お父様は子沢山というわけではなかった為、子どもは私とお兄様の二人だ。
あまりに多すぎても権力争いが起きても大変だという考えの元だったが、今となれば沢山作っておけば良かったのにと思う。本当に今更すぎるけど。
第二王子や第三王子が居れば、その者達に他国を治めさせる事も出来たのだ。
私はため息をつきながら、もう休ませてもらおうと腰を浮かせた瞬間、兄が心配そうに私の顔を覗き込んできた。
「……リズの婚約者は大丈夫なのか?」
「え?あぁ、忘れていましたわ」
「忘れていた!?」
私の返事を聞くと、お兄様は驚愕し口を大きく開けた。
私も例にもれず、生まれた時から属国の王族へと嫁ぐ事が決まっていた。そして同じ年で立太子を済ませた隣国の王太子との婚約が決まった。しかし、会ったのなんて片手で数えられる程だ。隣国なのに!
まぁ、お互い恋心なんてものはないし、所詮ただの政略結婚である。国を治める事と世継ぎを生む事さえ出来れば他に何も問題はない。流石に帝国の血を引くものを入れないわけにはいかないので、そこはお互い頑張るところだと割り切ってはいる。
「……そういえば、手紙が来なくなって、どれくらいかしら」
「お前……婚約者の務めって知っているか?」
「お返事を頂けないのであれば、こちらからしつこく送るのも面倒……失礼かと思いまして」
「面倒って言ったな。本音が出ているぞ」
政略結婚だと割り切ってしまっていれば、相手に何かを期待する事や求める事もない。侍女達には冷たくないかと言われた事もあるけれど、恋愛に憧れがあるわけでもないのだ。
手紙だって、いわば書類のやり取りをしているようなもので、返事がこないなら書く必要性を見いだせない。むしろこちらが責を負わない為に返しているだけで、向こうから返してこないのであれば、向こうが責務を放棄したという事だと思える。
「……女は可愛げある方が良いぞ?」
「お兄様の好みに当てはまる必要もないと思いますの」
「ぐっ」
「あの……な?」
私とお兄様のやり取りを静かに聞いていたお父様は、言い出しにくそうに、視線を背けながら声をかけてきた。
まだ話があるのかと思えば、もっと早く逃げておくべきだったと後悔しかない。
もういっそ諦めて割り切ってしまおうと、お茶のお代わりを頼む。……そうでもしないと、休みたくてイライラしてしまう。
「…………ロス・ロドルに、親しくしている娘がいるという事を耳にした」
「なんだって!?」
ボソリと、小さな声で私を伺うようにお父様が呟いた。
その言葉に対していち早く反応したのはお兄様で、声の大きさに大変な事なのかと疑問に思いつつ私は小首を傾げた。
「……数代に渡り、帝国の王族が各属国の王族へ嫁いだりして、帝国の教育を取り入れたりしている筈ですが……」
「……叔母から、手に負えなかったと手紙はきた」
属国であるという証の為、皇女はどこかの国の王族へ嫁いでいく、という決まりがある中、近しい親族としてお父様の叔母様からは手紙がきていたようで、お父様はそれを取り出して私達の前へ置いた。
――私が外交で不在をしている間に、騒動が起こりました。醜聞をもみ消す事も出来ず、王太子を廃嫡いたしましたが国王も信用に値せず。帝国法に則り、後は任せます。
「丸投げしましたね」
私の言葉に、お兄様とお父様が項垂れた。
お父様は子沢山というわけではなかった為、子どもは私とお兄様の二人だ。
あまりに多すぎても権力争いが起きても大変だという考えの元だったが、今となれば沢山作っておけば良かったのにと思う。本当に今更すぎるけど。
第二王子や第三王子が居れば、その者達に他国を治めさせる事も出来たのだ。
私はため息をつきながら、もう休ませてもらおうと腰を浮かせた瞬間、兄が心配そうに私の顔を覗き込んできた。
「……リズの婚約者は大丈夫なのか?」
「え?あぁ、忘れていましたわ」
「忘れていた!?」
私の返事を聞くと、お兄様は驚愕し口を大きく開けた。
私も例にもれず、生まれた時から属国の王族へと嫁ぐ事が決まっていた。そして同じ年で立太子を済ませた隣国の王太子との婚約が決まった。しかし、会ったのなんて片手で数えられる程だ。隣国なのに!
まぁ、お互い恋心なんてものはないし、所詮ただの政略結婚である。国を治める事と世継ぎを生む事さえ出来れば他に何も問題はない。流石に帝国の血を引くものを入れないわけにはいかないので、そこはお互い頑張るところだと割り切ってはいる。
「……そういえば、手紙が来なくなって、どれくらいかしら」
「お前……婚約者の務めって知っているか?」
「お返事を頂けないのであれば、こちらからしつこく送るのも面倒……失礼かと思いまして」
「面倒って言ったな。本音が出ているぞ」
政略結婚だと割り切ってしまっていれば、相手に何かを期待する事や求める事もない。侍女達には冷たくないかと言われた事もあるけれど、恋愛に憧れがあるわけでもないのだ。
手紙だって、いわば書類のやり取りをしているようなもので、返事がこないなら書く必要性を見いだせない。むしろこちらが責を負わない為に返しているだけで、向こうから返してこないのであれば、向こうが責務を放棄したという事だと思える。
「……女は可愛げある方が良いぞ?」
「お兄様の好みに当てはまる必要もないと思いますの」
「ぐっ」
「あの……な?」
私とお兄様のやり取りを静かに聞いていたお父様は、言い出しにくそうに、視線を背けながら声をかけてきた。
まだ話があるのかと思えば、もっと早く逃げておくべきだったと後悔しかない。
もういっそ諦めて割り切ってしまおうと、お茶のお代わりを頼む。……そうでもしないと、休みたくてイライラしてしまう。
「…………ロス・ロドルに、親しくしている娘がいるという事を耳にした」
「なんだって!?」
ボソリと、小さな声で私を伺うようにお父様が呟いた。
その言葉に対していち早く反応したのはお兄様で、声の大きさに大変な事なのかと疑問に思いつつ私は小首を傾げた。
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