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03.婚約破棄騒動

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 ――ノルウェット帝国。

 大陸で一番の国土を持ち、鉱山を保有している上に、豊作な大地も広くあり、豊かな国だ。勿論、戦も負け知らずで、近隣諸国からこちらへ流れてくる民達も居る程だ。
 そして、周辺国は全て属国である。
 昔の歴史において、帝国の豊かな土地を欲しようとした国々が手を組み、帝国へと戦を仕掛けてきたが、全て全勝で追い返した。潤った資源や作物がない国々は、何度も戦を仕掛ける事も出来ず、結局降伏してきた。
 戦争が終わったは良いが、国々を帝国に変えてしまえば、領土が広すぎて統制が困難であると考えた時の皇帝は、全ての国を属国として存続を認めたのだ。

 つまり、簡単に言うと、広い土地を治めるの大変だよー!各領主の見張りもしんどいよー!書類の確認も大変だよー!もう各自の国でやってくれー!必要な事だけは連絡してね!という事だ。

「……各国で婚約破棄騒動とは……現実に起こした、その後は?」

 私の事はひとまず、お兄様は各国の様子を知るべく、お父様の方へと身を乗り出して訊ねた。
 ……そんなの、大抵行く先は決まっていると思うけどな。と、口には出さず、変わりに私は更にお菓子を頬張った。
 うん、美味しい。疲れが吹っ飛ぶ。
 私にチラリと視線を向け、軽くため息を吐いたお父様は、お兄様へ説明を始めた。

「属国の様々な国で、王太子含む王族や高位貴族が下位貴族……それどころか平民と真実の愛を見つけたと言い、婚約破棄を言い渡しているのだ」
「男性って馬鹿というか単細胞が多いのかしら」
「同じ括りにしないでくれるか?」

 思わず吐いた言葉に、お兄様は物凄く嫌そうな顔をして私に苦言を呈した。

「でもそれ、全て男性側が女性側に婚約破棄を言い渡しているのではなくて?舞台に影響されたと言うのであれば」
「……そうだ」

 眉間に皺をよせ、苦しそうな表情でお父様は頷く。お兄様は理解できないと言ったように表情を歪めた。
 いや、人の作り的に理解は出来るでしょう?と小首を傾げる私に対し、二人の視線が集中した。
 仕方ない。紅茶を一口飲んで口を潤わせてから、私は説明する為に口を開いた。

「女性は子どもを産むまでに十月十日かかり、その間自分の身や子どもを守る事を考えれば政略結婚だとしても、衣食住が約束されていれば納得できます。跡継ぎを作るのも立派な仕事のうちですから。しかし男性は種をまくだけでしょう?だからこそ愛人を囲うのも男性が多いのです。……まぁ、きちんと貴族教育を受けている人は、そんな真似しませんけどね」
「貴族の権力が偏らないようにとか、政治に対してとか考えれば、男性も自分の生活基盤を揺るがない物にする為、必要な事だぞ?愛人を囲って破滅していく奴も多いだろう。夫婦は支え合ってこそ家を回せるというものだ。後継者争いの火種ともなってしまい、余計な殺生を生む。」
「だから単細胞が多いというだけで、男性全てとは言っていませんよ?女性でもそういう人はいますし。お腹の子が誰の種か分からない……とかね」

 人としてどこかおかしい人は、性別関係なくおかしいのだ。ただ、人としての生殖機能を考えた上での考察にすぎず、あくまで今現在、舞台の影響を受けただろう男性の方が統計的に多いというだけだ。

「……そして、婚約破棄を言い渡した国は……?」

 この話はこれで終わり。
 お兄様はお父様の方へ視線を向けると話を戻した。

「謀反が起こったり、国を回せなくなったりして植民地化しているのだ……だから言って、帝国はこれ以上、帝国管理する国を増やす事もできない」

 ……ですよね。
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