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この際、周囲の視線は完全に無視した。
王家主催のパーティがどうなろうと知ったことではない。
そもそも壊しているのは王太子なため、後は全て陛下が処理をするだろうと、開き直ることにした。
何か言われたとしても、追放を回避する為で手段を選ばなかったと正直に言えば、父だけでなく陛下も納得するだろう。
それだけの理由が私にはある。

「それで、いつ私がココット嬢を見下しましたか?存在すら知らないのに」
「ひどい…」

ひどいという返事が、私が放ったどの言葉にかかるのか理解できません。
私は事実を述べたまでです。
感情を返すのではなく、きちんと話が出来ないとは、そもそもの学びが足りないように思えるので、王太子の婚約者として選んだ殿下には疑問しかない。
これは陛下の邪魔が入る前に片付けたいが、落としどころをどうしようか悩んでしまう。
もう手続きも何もかも吹っ飛ばして、婚約破棄が決定できないかとさえ考えてしまう。

「存在を知らない?俺といつも一緒にいたアリスのことを知らないわけないだろう」
「知りませんよ。殿下と仲良い人どころか、殿下の行動範囲も知りませんし、知ろうと思ったこともありません」

殿下が眉間に皺を寄せ、理解できないという顔をして、こちらをジッと見ている。

「お前は…私が…自分の婚約者が何をして居るか知ろうとすら思ってなかったというのか?」
「失礼を承知で質問を質問で返しますが、殿下は私が何をしているか知ろうとしていたのですか?」
「っ!…それは…」
「何言ってるんですか!?王子様ですよ!?知りたいと思って当然じゃないですか!?」
「身分で見下されたと喚く人が、王子という身分に憧れて当然という言葉を使うのですか?」

途中から入ってきた低脳な言葉に目眩を起こしそうになり、頭を抱え、つい反論した。
矛盾しかないなら、もう黙っていて欲しい。

「私…そんなつもりじゃ…だって殿下はカッコイイじゃないですか」
「アリス…」

瞳を滲ませ、俯くココット嬢を、愛おしそうな瞳で見つめる殿下。
そんな二人の良いムードを破るように言葉を紡ぐ。

「追放されるのが嫌なので、この場で正直に申し上げさせていただきます。そもそも大前提がおかしくないですか?殿下とココット嬢が仲良いと私が気に入らないと思うわけがありません。そもそも、貴族、特に王家の婚約なんて政略以外ありえません。お互い恋愛しているわけではありませんから、嫉妬のしようがありません。更に言うのであれば、私的に殿下が側室を何人、何十人と侍らそうが、文句を言うつもりもないほど無関心なのです。」

そうよね、と言う呟く声や、クスクスと笑う周囲に居る貴族の令息、令嬢たちは二人に対し呆れたような目線を向けて居る。
それと相反するように驚いた顔をする二人。
ココット嬢はともかくとして、どうして殿下まで驚いて居るのだろう。
そもそも、周囲に貴方達の味方は誰一人としていないと思いますが、それも理解しているのでしょうか。

「大丈夫だよ。何があってもマーガレット様は追放にはならないから」

入り口の方から凛とした声が響き、皆の視線が一斉にそちらへ向いた。
声の主はシンス・ガーラントの二つ下の弟であり、第二王子のラドリック・ガーラントだ。
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