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「マーガレット・アーク侯爵令嬢!お前との婚約は破棄させてもらう!」
声高々に宣言したのは、金髪碧眼で見目麗しい、我がガーラント王国の第一王子にして王太子のシンス・ガーラントだ。
とりあえず今は王家主催で行われている、学園の卒業パーティ真っ只中。
国唯一の学園、しかも学ぶ余裕があるなんて貴族しかいないわけで、結局貴族のパーティ…しかも保護者がいるとなれば、大規模どころの話ではない。
この後始末はどうしたものかと考えた矢先、殿下は更に言葉を続けた。
「そして私は新たに、ここに居るアリス・ココットと婚約する!」
そう言って、ピンクゴールドの髪に金の瞳をした小柄な令嬢の腰を引き寄せた。
周囲はざわつき、視線を一斉に浴びているのが分かる。
そして私は色々と…諦めた。
否、考える事を放棄した。
「分かりました」
えぇ、分かりましたよ。
宰相であり侯爵の爵位を持つ父や陛下達がご存知かどうかは、考えない。
考えたくもないし、聞きたくもない。
殿下が言っている内容が分かっただけだ。
詳しくは後から父に聞こう。
「待て!」
そのまま踵を返そうとしたところに、更に殿下から声がかかった。
早くこの雰囲気を変えたかったし、私はこんな茶番をおこなうより、行きたい場所があったのだが、どうやら許してもらえないらしい。
「おまえはアリスを虐めていただろう!よってこの国から追放する!」
「それは困りますね」
追放の二文字に、私は振り返り即答する。
色んな意味で、それは困る。
これはもう後始末とか周囲の目とか言っていられない。
殿下のプライドとか王太子問題とか、もう全部無視して良いかもしれない。
それほどまでに、私にとって追放というのは逆鱗だった。
「そもそも誰ですか、その令嬢は。虐めていたと言われても心当たりが御座いませんので、証拠を出していただけますか」
「おまえ!先ほど、わかった。と言ったばかりではないか!」
「わかったのは、殿下が私と婚約破棄をし、新たな令嬢と婚約を結びたいと思っていることがわかった、のです」
私の言葉に眉間に皺をよせ顔を赤らめている殿下を無視して、ココット嬢がこちらに顔を向けてきた。
「心当たりがないなんて、嘘です!私の家が男爵の爵位だからと見下し、殿下と仲良いのが気に入らないからと教科書を破いたり、持ち物を隠したり水をかけたりしてきたではありませんか!」
「なんですか、その低脳な嫌がらせは。そんな足がつきやすい嫌がらせならば当然山のように証拠がございますよね、ご提示ください」
正直、呆れた。
貴族同士の足の引っ張り合い、特に令嬢達となれば、その程度は日常茶飯事で、それに対し、どうやり返すか。どう自分の心を落ち着かせるか。
それで潰れていく令嬢も居るが、そういった令嬢は貴族と言えど辺境に領地を持っている人の元へ嫁いで、領地でゆっくりのんびりとした生活を送っていったりする。
ある意味で学園の生活は、自分の向き不向きを見極めることができたりもするのだ。
むしろ、この程度で騒ぐようであれば、嫉妬渦巻く王家ではやっていけない。
嫌がらせと言っても、それは命を狙われるレベルになるのだ。
ココット男爵令嬢もそうだが、その真っ只中にいる王太子は理解をしていないのか、理解をしたくないのか。
この程度の嫌がらせならば証拠を提示して揚げ足をとってしまえば良いだけの話。
実際私は何もしていないので、証拠を捏造しない限り、それは出来ない話で、話の筋をおおまかに理解したであろう周囲の令息令嬢達は不信な目を殿下達に向けている。
声高々に宣言したのは、金髪碧眼で見目麗しい、我がガーラント王国の第一王子にして王太子のシンス・ガーラントだ。
とりあえず今は王家主催で行われている、学園の卒業パーティ真っ只中。
国唯一の学園、しかも学ぶ余裕があるなんて貴族しかいないわけで、結局貴族のパーティ…しかも保護者がいるとなれば、大規模どころの話ではない。
この後始末はどうしたものかと考えた矢先、殿下は更に言葉を続けた。
「そして私は新たに、ここに居るアリス・ココットと婚約する!」
そう言って、ピンクゴールドの髪に金の瞳をした小柄な令嬢の腰を引き寄せた。
周囲はざわつき、視線を一斉に浴びているのが分かる。
そして私は色々と…諦めた。
否、考える事を放棄した。
「分かりました」
えぇ、分かりましたよ。
宰相であり侯爵の爵位を持つ父や陛下達がご存知かどうかは、考えない。
考えたくもないし、聞きたくもない。
殿下が言っている内容が分かっただけだ。
詳しくは後から父に聞こう。
「待て!」
そのまま踵を返そうとしたところに、更に殿下から声がかかった。
早くこの雰囲気を変えたかったし、私はこんな茶番をおこなうより、行きたい場所があったのだが、どうやら許してもらえないらしい。
「おまえはアリスを虐めていただろう!よってこの国から追放する!」
「それは困りますね」
追放の二文字に、私は振り返り即答する。
色んな意味で、それは困る。
これはもう後始末とか周囲の目とか言っていられない。
殿下のプライドとか王太子問題とか、もう全部無視して良いかもしれない。
それほどまでに、私にとって追放というのは逆鱗だった。
「そもそも誰ですか、その令嬢は。虐めていたと言われても心当たりが御座いませんので、証拠を出していただけますか」
「おまえ!先ほど、わかった。と言ったばかりではないか!」
「わかったのは、殿下が私と婚約破棄をし、新たな令嬢と婚約を結びたいと思っていることがわかった、のです」
私の言葉に眉間に皺をよせ顔を赤らめている殿下を無視して、ココット嬢がこちらに顔を向けてきた。
「心当たりがないなんて、嘘です!私の家が男爵の爵位だからと見下し、殿下と仲良いのが気に入らないからと教科書を破いたり、持ち物を隠したり水をかけたりしてきたではありませんか!」
「なんですか、その低脳な嫌がらせは。そんな足がつきやすい嫌がらせならば当然山のように証拠がございますよね、ご提示ください」
正直、呆れた。
貴族同士の足の引っ張り合い、特に令嬢達となれば、その程度は日常茶飯事で、それに対し、どうやり返すか。どう自分の心を落ち着かせるか。
それで潰れていく令嬢も居るが、そういった令嬢は貴族と言えど辺境に領地を持っている人の元へ嫁いで、領地でゆっくりのんびりとした生活を送っていったりする。
ある意味で学園の生活は、自分の向き不向きを見極めることができたりもするのだ。
むしろ、この程度で騒ぐようであれば、嫉妬渦巻く王家ではやっていけない。
嫌がらせと言っても、それは命を狙われるレベルになるのだ。
ココット男爵令嬢もそうだが、その真っ只中にいる王太子は理解をしていないのか、理解をしたくないのか。
この程度の嫌がらせならば証拠を提示して揚げ足をとってしまえば良いだけの話。
実際私は何もしていないので、証拠を捏造しない限り、それは出来ない話で、話の筋をおおまかに理解したであろう周囲の令息令嬢達は不信な目を殿下達に向けている。
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