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 必死に、必死に、必死に勉強して、やっとついていける程度で母は満足しない。
 寝る間を惜しんで勉強して……何とか上位に食い込んでいる程度なのだ。
 だけれど、そんな生活を一年もしていたら体調がおかしくなるのも当たり前で……ホルモンバランスを崩したのだろう私は、生理の痛みと貧血からテストの点数を大幅に下げてしまった。

「あんたは! 何をやってるの!」

 成績表を見た母は激高し、そんな言葉を投げかけてきた。
 そこに私への心配なんて一切ない。
 ……私の顔色が悪い事も、目の下に出来た隈が消える事なく染み付いている事も気が付いていないのではないだろうか。

「私がどれだけアンタに時間をかけてると思ってるの! 何なのこの点数は! こんなんで難関大学が合格できると思ってるの!?」

 ――気持ち悪い。

 もはや母が母と認識出来ず、ただ気持ちの悪い物体にしか思えなかった。
 自身の腕に爪を食い込ませる。自虐行為だって、いつから始まったのか覚えていない。否、始まりは簡単だったように思える。
 眠気と必死に戦って勉強をして……そんな自分に虚しさを覚え、生きている意味すらとっくに失って……シャーペンを手の甲に突き刺した。
 きっかけは、とても些細な事だけれど、私が自虐行為に手を染めている事すら母は気が付いていないだろう。

「……どうでも良い」
「はぁ!?」

 心の底で思っていた言葉が表面に溢れ出たのだろう。私の口から洩れた感情の声は母の耳にしっかり届き、その目を吊り上げてヒステリックな声を上げた。
 だけれど、良い機会なのではないかと思った私は、自分の思いを口に出す。

「別に大学へ行きたいわけでもないし。勉強がしたいわけでもな……」
 バチンッ!!

 言い終わる前に、耳に響く音と頬に走る痛み。
 ガシャンと、飛ばされた眼鏡が床に落ちて割れる音が聞こえたけれど、脳が揺さぶられたせいか思考が止まり、自分が殴られたのだと気が付くまでに数秒かかった。

「何て事を言うの! 何の為に私がここまでしていると思ってるの! この親不孝者!」

 あぁ、無駄だ。
 無駄なのだと悟ってしまった。
 この人に私の言葉は届かない。

 ――私が何をしたというのか。

 夢や目標なんて特になかったのに、自分の力を試す為に進学校を受験した事が悪かったのか。
 それに受かってしまったからいけなかったのか。

 ――私の何がいけなかったのか。

 母の望みを叶える為にと自分を押し殺して、流されるまま勉強し続けていた私が惨めだ。
 所詮母が欲しかったのは勉強のできる、自分の言う事を聞く、都合の良い人形なのではないか。
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