3 / 57
03
しおりを挟む
「来年は受験生なのよ!? もっと……智子!?」
先の言葉なんて聞きたくなくて、私はそのまま家を飛び出した。
行く当てなんてないけれど、あそこに居たくなかった。
そして……今、私はフラフラと彷徨っている。
――死に場所を探すように。
生きるって何だっけ。
希望もなければ、夢もない。
ただ敷かれたレールの上を歩いていただけのようで、そこに自分の意思もない。
生きている実感も持てない。ただ虚ろな現実がそこにあるだけだ。
「~♪」
ふと聞こえた音楽に足を止める。
人の喧騒や信号の音など全ての雑音が曖昧な音として耳に届いていた私に……その音はハッキリと届いた。
所々耳につんざく不協和音のおかげで、耳に残ったのかもしれないけれど……。
「~♪~~♪」
ギターの音に合わせて、歌声も乗る。
その歌詞は暗く、自虐的で。とても病んでいる内容だった。
自暴自棄で全てがどうでも良い私は、とても共感できる歌詞に惹かれ音が聞こえる方角へと視線を向け、そちらに向かって歩を進めた。
色んな思惑が立ち込める駅前。急ぎ帰る人や、今から遊びに行くだろう人達が足早に通り過ぎるそこに、小さめな身長をした女の子が弾き語りをしていた。
堂々とした佇まいだけでなく、ホワイトブロンドに青いメッシュが入ったショートヘアは存在感を醸し出す。
見た目的にも二十歳前後に思える程なのだけれど……異様に大人っぽさというか、貫禄があるようにも見える。それは楽しそうに自分の存在をアピールするように歌っているからだろうか。
「……」
歌詞の続きが気になって、その子の前で歌に聞き入る。
だけれど、これからという時にその歌は終わった。まるで最後は想像を掻き立てさせる物語のような終わり方だ。
――何ていうタイトルの曲なのだろう。
問いたかったけれど、その子は楽しそうに楽譜のようなものをめくり、次に歌う曲を探しているようだ。
邪魔をしてしまうのではないかと、私は一回言葉を飲み込んだけれど、どうしても気になる。だって私の心境にピッタリなのだから。
覚悟を決めて、問いかけようと口を開いた時、その子はまたギターを奏で始めた。
「~♪~~♪~」
その曲は知っていた。
反社会的で、世間を批判する現代人の心を曝け出したかのような曲。逃げるでもなく、挑むような……リズムが良いのに歌詞は口調が悪い歌だ。
思わず気持ちが乗せられてしまう。
まだ遊んでいた頃は、よくカラオケの採点で遊んでいたっけ。
音程だけではなく、表現力をどれだけ取れるかで競っていた。
先の言葉なんて聞きたくなくて、私はそのまま家を飛び出した。
行く当てなんてないけれど、あそこに居たくなかった。
そして……今、私はフラフラと彷徨っている。
――死に場所を探すように。
生きるって何だっけ。
希望もなければ、夢もない。
ただ敷かれたレールの上を歩いていただけのようで、そこに自分の意思もない。
生きている実感も持てない。ただ虚ろな現実がそこにあるだけだ。
「~♪」
ふと聞こえた音楽に足を止める。
人の喧騒や信号の音など全ての雑音が曖昧な音として耳に届いていた私に……その音はハッキリと届いた。
所々耳につんざく不協和音のおかげで、耳に残ったのかもしれないけれど……。
「~♪~~♪」
ギターの音に合わせて、歌声も乗る。
その歌詞は暗く、自虐的で。とても病んでいる内容だった。
自暴自棄で全てがどうでも良い私は、とても共感できる歌詞に惹かれ音が聞こえる方角へと視線を向け、そちらに向かって歩を進めた。
色んな思惑が立ち込める駅前。急ぎ帰る人や、今から遊びに行くだろう人達が足早に通り過ぎるそこに、小さめな身長をした女の子が弾き語りをしていた。
堂々とした佇まいだけでなく、ホワイトブロンドに青いメッシュが入ったショートヘアは存在感を醸し出す。
見た目的にも二十歳前後に思える程なのだけれど……異様に大人っぽさというか、貫禄があるようにも見える。それは楽しそうに自分の存在をアピールするように歌っているからだろうか。
「……」
歌詞の続きが気になって、その子の前で歌に聞き入る。
だけれど、これからという時にその歌は終わった。まるで最後は想像を掻き立てさせる物語のような終わり方だ。
――何ていうタイトルの曲なのだろう。
問いたかったけれど、その子は楽しそうに楽譜のようなものをめくり、次に歌う曲を探しているようだ。
邪魔をしてしまうのではないかと、私は一回言葉を飲み込んだけれど、どうしても気になる。だって私の心境にピッタリなのだから。
覚悟を決めて、問いかけようと口を開いた時、その子はまたギターを奏で始めた。
「~♪~~♪~」
その曲は知っていた。
反社会的で、世間を批判する現代人の心を曝け出したかのような曲。逃げるでもなく、挑むような……リズムが良いのに歌詞は口調が悪い歌だ。
思わず気持ちが乗せられてしまう。
まだ遊んでいた頃は、よくカラオケの採点で遊んでいたっけ。
音程だけではなく、表現力をどれだけ取れるかで競っていた。
33
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
側妃は捨てられましたので
なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」
現王、ランドルフが呟いた言葉。
周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。
ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。
別の女性を正妃として迎え入れた。
裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。
あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。
だが、彼を止める事は誰にも出来ず。
廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。
王妃として教育を受けて、側妃にされ
廃妃となった彼女。
その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。
実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。
それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。
屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。
ただコソコソと身を隠すつまりはない。
私を軽んじて。
捨てた彼らに自身の価値を示すため。
捨てられたのは、どちらか……。
後悔するのはどちらかを示すために。
婚約者は、今月もお茶会に来ないらしい。
白雪なこ
恋愛
婚約時に両家で決めた、毎月1回の婚約者同士の交流を深める為のお茶会。だけど、私の婚約者は「彼が認めるお茶会日和」にしかやってこない。そして、数ヶ月に一度、参加したかと思えば、無言。短時間で帰り、手紙を置いていく。そんな彼を……許せる?
*6/21続編公開。「幼馴染の王女殿下は私の元婚約者に激おこだったらしい。次期女王を舐めんなよ!ですって。」
*外部サイトにも掲載しています。(1日だけですが総合日間1位)
断罪されているのは私の妻なんですが?
すずまる
恋愛
仕事の都合もあり王家のパーティーに遅れて会場入りすると何やら第一王子殿下が群衆の中の1人を指差し叫んでいた。
「貴様の様に地味なくせに身分とプライドだけは高い女は王太子である俺の婚約者に相応しくない!俺にはこのジャスミンの様に可憐で美しい女性こそが似合うのだ!しかも貴様はジャスミンの美貌に嫉妬して彼女を虐めていたと聞いている!貴様との婚約などこの場で破棄してくれるわ!」
ん?第一王子殿下に婚約者なんていたか?
そう思い指さされていた女性を見ると⋯⋯?
*-=-*-=-*-=-*-=-*
本編は1話完結です(꒪ㅂ꒪)
…が、設定ゆるゆる過ぎたと反省したのでちょっと色付けを鋭意執筆中(; ̄∀ ̄)スミマセン
【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!
ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、
1年以内に妊娠そして出産。
跡継ぎを産んで女主人以上の
役割を果たしていたし、
円満だと思っていた。
夫の本音を聞くまでは。
そして息子が他人に思えた。
いてもいなくてもいい存在?萎んだ花?
分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。
* 作り話です
* 完結保証付き
* 暇つぶしにどうぞ
公爵令嬢は逃げ出すことにした【完結済】
佐原香奈
恋愛
公爵家の跡取りとして厳しい教育を受けるエリー。
異母妹のアリーはエリーとは逆に甘やかされて育てられていた。
幼い頃からの婚約者であるヘンリーはアリーに惚れている。
その事実を1番隣でいつも見ていた。
一度目の人生と同じ光景をまた繰り返す。
25歳の冬、たった1人で終わらせた人生の繰り返しに嫌気がさし、エリーは逃げ出すことにした。
これからもずっと続く苦痛を知っているのに、耐えることはできなかった。
何も持たず公爵家の門をくぐるエリーが向かった先にいたのは…
完結済ですが、気が向いた時に話を追加しています。
【完結】探さないでください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
私は、貴方と共にした一夜を後悔した事はない。
貴方は私に尊いこの子を与えてくれた。
あの一夜を境に、私の環境は正反対に変わってしまった。
冷たく厳しい人々の中から、温かく優しい人々の中へ私は飛び込んだ。
複雑で高級な物に囲まれる暮らしから、質素で簡素な物に囲まれる暮らしへ移ろいだ。
無関心で疎遠な沢山の親族を捨てて、誰よりも私を必要としてくれる尊いこの子だけを選んだ。
風の噂で貴方が私を探しているという話を聞く。
だけど、誰も私が貴方が探している人物とは思わないはず。
今、私は幸せを感じている。
貴方が側にいなくても、私はこの子と生きていける。
だから、、、
もう、、、
私を、、、
探さないでください。
結婚式後に「爵位を継いだら直ぐに離婚する。お前とは寝室は共にしない!」と宣言されました
山葵
恋愛
結婚式が終わり、披露宴が始まる前に夫になったブランドから「これで父上の命令は守った。だが、これからは俺の好きにさせて貰う。お前とは寝室を共にする事はない。俺には愛する女がいるんだ。父上から早く爵位を譲って貰い、お前とは離婚する。お前もそのつもりでいてくれ」
確かに私達の結婚は政略結婚。
2人の間に恋愛感情は無いけれど、ブランド様に嫁ぐいじょう夫婦として寄り添い共に頑張って行ければと思っていたが…その必要も無い様だ。
ならば私も好きにさせて貰おう!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる