双子の妹に全てを奪われた令嬢は訳あり公爵様と幸せになる

甘糖むい

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何をされるのかまったく見当がつかない様子でミシャルはゼリヌに髪を好きにさせていた。
これまでの短い間ですっかりとミシャルはゼリヌに対して気を抜いていた。

今まで悪意にしか触れてこなかったミシャルにとってこの屋敷での好意的な視線や振る舞いはミシャルにとって特別で慣れないものばかりだった。

「これから髪を洗いますね」

そう言ってミシャルは泡が目に入ると痛いからと、目を閉じるようにゼリヌに言われて素直に目を閉じた。
暗闇は怖くて薄目を開けていたが、ゼリヌはミシャルにひどいこともせずにただ優しく頭皮と洗われて、気が付けばうとうとと湯船で船をこぎそうになるほどやさしい手が毛先まで整えてくれていた。
肩に触れる毛先がチクチクしない事に感動していると、ミシャルは一度浴槽から出るように言われて素直に従った。

「次はお身体を洗いましょう。爪の先まで磨きましょうね」

そういってミシャルはゼリヌが作り出した泡に包まれた。
ハーブが数種類混ざった香りに包まれて宣言通り爪の先まで丁寧に磨かれたミシャルは段々と眠気に襲われつつゼリヌに促されてもう一度浴槽に入った。
泡がお湯に触れて流れていくと、シャワーノズルから新たなお湯が出されてミシャルの身体についた泡が全て流されていった。

「今までお水で身体を洗っていたからお湯で洗うなんて思いつきもしなかったです」

ゼリヌによってタオルで水分をふき取られながらミシャルは湯浴みの心地よさを思い出して上気した頬をゆるませた。
ほわほわと、幼子のような微笑みにゼリヌは『お気に召してもらえたならなによりです』と返して細い身体が冷える前に夜着を着せた。

ベロアで出来たワンピース型のネグリジェを着せられてミシャルは次々とゼリヌの手によって化粧水やクリームを塗りたくられた。

「これは、ミシャル様の白いお肌を維持するため、こちらはお肌感想を防ぐクリームです」

一つ一つ説明されながら塗られるそれらを覚える事はまだまだ先になりそうだとミシャルが遠い目をしながらされるがままになっていると、ゼリヌはミシャルの短い髪や爪の手入れまで始める始末で、ミシャルは段々と眠たくなって船をこぎ始めた。

「お疲れでしょうから、お休みになって頂いて構いませんよ」

水分を程よく含んだ髪を櫛で梳きながらミシャルに声をかけるゼリヌは楽しそうにミシャルの世話をして鼻歌まで歌いだしそうな雰囲気だった。

くすんだ金色の髪を整えて、ミシャルの爪に最後の仕上げのオイルを塗る頃にはミシャルはすっかりと寝入ってしまっていた。
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