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ゼリヌに服を脱がされそうになってミシャルは慌てて自分で出来ると真っ赤になって抵抗した。
「一人で脱げます!」
誰かに肌を見られたことがないミシャルにとって同性であっても恥ずかしいことに変わりはなく、全身をリンゴ色に染めたミシャルをゼリヌは可愛い物を見る目で見つめて微笑んだ。
恥じらうミシャルに気を使ってゼリヌは先に浴室の扉を開いた。
裸になっても寒くないようにと浴室を程よく温めておきつつ、ミシャルが服を脱ぎやすい空気を作ってやった。
あたたかな空気が脱衣所にまで流れてきて、ミシャルはゼリヌの意識が自分に向いていない間にと慌てて衣服を脱いでから簡単に畳んで足元に置いた。
「足元にお気を付けください」
ゼリヌに返事をしてからミシャルは今日何度目かの感嘆を上げた。
「わぁ!…すごい、屋根裏部屋より広くてとてもいい匂いがするわ!」
湯気が立った猫足のバスタブと花の香りに包まれてミシャルは自分が裸である事も忘れて足早にバスタブに近寄った。
そっと、手を差し入れると体温よりもいくつか高い温度のお湯に触れて無意識のうちにため息が漏れた。
「お身体が冷えないうち入ってください。猫足はついていますが、バスタブは逃げませんよ」
「っ…はい」
ミシャルが物珍しい表情で湯船のお湯を指先で遊んでいると、ゼリヌはそっとミシャルに声をかけた。
その言葉にミシャルは自分が裸で子供のようにお湯に夢中になっていた事を思い出して慌てて身体を丸めると、バスタブの端からゆっくりと片足を入れた。
まるで野良猫をお風呂に入れる様子を再現したような状況にゼリヌはくすりと、一つ笑ってからミシャルが両足を入れて、広いバスタブの中で身体を丸めたミシャルに近寄った。
「身体から力を抜いて寛いでください。お湯浴みは一日の疲れを癒すためにあるんですよ」
そうやって声をかければミシャルは素直に身体から力を抜いてバスタブにもたれ掛かった。
肩までしかないミシャルの髪がバスタブの淵に触れてから肩に落ちる。
「ミシャル様が温まっている間に髪を洗いましょう」
ゼリヌはミシャルに触れてもよいか許可を取ってから、整えられた様子のない短い髪に触れた。
碌に手入れもされていない髪にお湯をかけて簡単な汚れを落とすように何度か同じ事を繰り返せば、ミシャルは気持ちがよさそうな表情でため息をついた。
「後で毛先も整えましょうね、目を瞑っていて下さい」
そうやってゼリヌの一言一言に怯えた表情を見せるものの、ゼリヌの笑みに絆されて簡単にミシャルはゼリヌに従って目を閉じた。
不安なのがありありとわかる薄目を開けたままのミシャルの様子に、ゼリヌは保護したばかりの子猫がいたらこんな様子なのだろうと心を和ませた。
「一人で脱げます!」
誰かに肌を見られたことがないミシャルにとって同性であっても恥ずかしいことに変わりはなく、全身をリンゴ色に染めたミシャルをゼリヌは可愛い物を見る目で見つめて微笑んだ。
恥じらうミシャルに気を使ってゼリヌは先に浴室の扉を開いた。
裸になっても寒くないようにと浴室を程よく温めておきつつ、ミシャルが服を脱ぎやすい空気を作ってやった。
あたたかな空気が脱衣所にまで流れてきて、ミシャルはゼリヌの意識が自分に向いていない間にと慌てて衣服を脱いでから簡単に畳んで足元に置いた。
「足元にお気を付けください」
ゼリヌに返事をしてからミシャルは今日何度目かの感嘆を上げた。
「わぁ!…すごい、屋根裏部屋より広くてとてもいい匂いがするわ!」
湯気が立った猫足のバスタブと花の香りに包まれてミシャルは自分が裸である事も忘れて足早にバスタブに近寄った。
そっと、手を差し入れると体温よりもいくつか高い温度のお湯に触れて無意識のうちにため息が漏れた。
「お身体が冷えないうち入ってください。猫足はついていますが、バスタブは逃げませんよ」
「っ…はい」
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その言葉にミシャルは自分が裸で子供のようにお湯に夢中になっていた事を思い出して慌てて身体を丸めると、バスタブの端からゆっくりと片足を入れた。
まるで野良猫をお風呂に入れる様子を再現したような状況にゼリヌはくすりと、一つ笑ってからミシャルが両足を入れて、広いバスタブの中で身体を丸めたミシャルに近寄った。
「身体から力を抜いて寛いでください。お湯浴みは一日の疲れを癒すためにあるんですよ」
そうやって声をかければミシャルは素直に身体から力を抜いてバスタブにもたれ掛かった。
肩までしかないミシャルの髪がバスタブの淵に触れてから肩に落ちる。
「ミシャル様が温まっている間に髪を洗いましょう」
ゼリヌはミシャルに触れてもよいか許可を取ってから、整えられた様子のない短い髪に触れた。
碌に手入れもされていない髪にお湯をかけて簡単な汚れを落とすように何度か同じ事を繰り返せば、ミシャルは気持ちがよさそうな表情でため息をついた。
「後で毛先も整えましょうね、目を瞑っていて下さい」
そうやってゼリヌの一言一言に怯えた表情を見せるものの、ゼリヌの笑みに絆されて簡単にミシャルはゼリヌに従って目を閉じた。
不安なのがありありとわかる薄目を開けたままのミシャルの様子に、ゼリヌは保護したばかりの子猫がいたらこんな様子なのだろうと心を和ませた。
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