双子の妹に全てを奪われた令嬢は訳あり公爵様と幸せになる

甘糖むい

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ミシャルが目を覚ますと辺りはすっかり明るくなっていた。
クリーム色のカーテンに遮られていた光が部屋に広がっている。

「おはようございます」

声をかけられて身体を跳ねさせたミシャルは自分がなぜベッドに居るのか記憶がなくてシーツを掴んで困惑していた。
ミシャルの記憶はソファーでゼリヌに髪を梳かれていた所で止まっていた。
カーテンが開けられるとまぶしい光が部屋に取り込まれて、ミシャルは眉を寄せた。

「お手入れに時間が掛かってしまってお嬢様が寝入ってしまわれたんです」
「えっ、ごめんなさい!」

そう言って部屋の中を動き回るゼリヌがミシャルの傍によってくると、緊張から力を入れすぎて白くなった指先からシーツを取り上げた。
ふわふわとしたベッドの慣れない感触と相まって子供のように世話を焼かれる自分を恥じてミシャルの頬が赤くなった。

「いいえ、慣れない事ばかりでお疲れだったのでしょう、お紅茶をお持ちしますね」

そう言ってゼリヌは顔を洗うための器とタオルをベッド脇に置いてミシャルの返事を待たずに出て行ってしまった。
残されたミシャルはゼリヌに言われた通り顔を洗おうと器に手を入れて中身がお湯である事に驚いた。

温かくちょうどいい温度のお湯で顔を洗うとそれだけで思考がスッキリとまとまった気がした。

…ここの人達は目の色についても何も言わないで優しくしてくれる。

タオルで顔を拭ってもいいかわからず、袖を使って顔を拭ったミシャルは、なぜ自分が受け入れられているのか不思議で仕方がなかった。
ミシャルは自分が特別に扱われていると何となく感じていたもののその原因がわからないでいた。
自分がもしもシャルルであったなら、誰もが美人と誉めそやし、社交的で明るくどんな人にも好かれる妹なら初対面から好待遇なのもうなずける。

けれどもミシャルはシャルルと違って明るくもなければ内気で、見た目も地味だった。
皆がシャルルを褒めるのに対してミシャルは吐き捨てるように言葉の暴力を投げつけられ、黒い瞳を見せるなと常に俯いて生活することを強いられてきていた。

前髪を伸ばせば見苦しいと罵られ、何をしても物や暴力が飛んでくる環境から一転した状況に今更ながらミシャルはいつ同じような目に合うのか不安に駆られていた。

「紅茶が熱くないといいな」

まさか口に出来るとは思ってもいないミシャルは、頭から紅茶をかけられるなら熱湯からすぐ入れた物じゃなければいいなとゼリヌが戻るまでベッドの中で身体を小さく丸めて待っていた。
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