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~第一章~
~王家サイド~
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「一体お父様は何を考えているのですかっ!? あんな方々の訳のわからない言い分を聞いてアクリアーナを追い出すなんてっ!」
王族とは思えない激しい足音をさせながら執務室へと入ってきた第一王女のエリアディーナ。
エリアディーナは、アクリアーナの姉として育ち、努力家で少し危なっかしかった妹をとても大切に思っていた。
「私が居ない内にどうしてこんな決断をしてしまったの! 例えあの娘が本物の妹だとしても、アクリアーナは私の大切な妹よ! あんな仕打ち許せないわっ!」
今年の末に婚姻予定のエリアディーナは他国の婚約者の元にいた為先日の夜会には出席していなかった。
たった一人であんな真実を告げられて、しかも本物の王女を連れてきたのは自分の婚約者。
婚約者に裏切られ、周囲の貴族から偽物だと謗りを受けたアクリアーナが可哀想で仕方なかった。
どうして自分は側に居てあげられなかったのか、どうして両親は妹を守ってくれなかったのか。
怒りと悲しみが溢れるのを止められなかった。
「落ち着け、エリアディーナ。」
「落ち着けるわけないでしょ! お兄様はそれでいいの!?」
「言いわけないだろう! 俺の大切な妹があんな目にあわされて許せるわけないだろう!」
室内には父である国王、母である王妃、そして兄でありこの国の次期国王の王太子殿下 テオドールがいた。
執務室で話し合いをしていた彼等の元に怒りの突撃をしたエリアディーナ。
テオドールもあの夜会の日、参加できなかった自分を激しく責めていた。自分さえあの場に居れば、まだ違った結果があったかもしれないと。
強く手を握りしめながら必死に怒りを押さえていた。
数年前に婚姻していたテオドールは身重の妻がここ何日か体調を崩しており、母から側に居てあげなさいと言われて夜会を欠席していたのだ。
「全部私のせいよ。私があの時、あの歌に反応してしまったから……」
憔悴しきった王妃は顔を手で隠しながら「ごめんなさい……アクリアーナ。」と呟いた。
「……歌? どういう事よ……」
帰って来たばかりで詳しい状況を知らないエリアディーナは困惑しながら母の姿を見た。
王妃として人前ではどんな時も涙を見せなかった母の泣き声が聞こえた。
それはどう見ても追い出したくて追い出した人間の姿ではなかった。
「……エリアディーナ、とりあえず座りなさい。」
疲れきった父に座るように言われ、エリアディーナは戸惑いながら席についた。
そして夜会で起きた事を全て聞かされた。
隣国の王子 クリスディークがサマンサという金髪青目の少女を無断で夜会に連れてきた事。
夜会会場でアクリアーナを偽物だと言い、自分が偽物だと知っていて保身の為に黙っていた悪女だと断罪した事。
クリスディークはアクリアーナとの婚約を破棄して新しくサマンサと婚約すると宣言した事。
その際にクリスディークはアクリアーナに手を上げた事。
混乱していた夜会会場に自分達が到着して、場を収めようとしたがサマンサが歌った記憶の中にあった歌が王妃が胎児に聞かせていた歌と一緒だという事が貴族達に知られてしまった事。
貴族達の興奮は凄まじく、あの歓喜は止められなかった。
見た目だけでなく、あの歌の件を考えるとサマンサが本物の娘である事は間違いない。
あの娘の顔にどことなく自分達の面影を感じてしまう。
それから状況は最悪だった。
三日間に渡って第二王女についての議会が開かれ、その間は関係者との接触はしないように臣下から釘をさされた。というか見張られていた。
忌々しい奴等は私達がアクリアーナに情を残さないようにとの配慮だと言っていた。
普段からアクリアーナを王族から排除しようとしていた者達は好機と捉え、議会でもサマンサが本物の王女でアクリアーナは偽物だと断言し、議題はアクリアーナが罪人かどうかにすり代わっていった。
クリスディークが言った。
アクリアーナが妖精の身代わり子だと知っていた。という発言が問題だった。
そこでグチグチと揉めている内にアクリアーナと会えないまま三日も無駄にしてしまった。
しかも時点でもうアクリアーナを王族として残せる手段は無くなっていた。
幸いアクリアーナが国に尽くしてきた事は事実であり、妖精の取り替え子なのを知っていたかなどは証明出来ない為、罪を問うことなど出来ない。
よって議会での決定は罪人ではなく本来の身分に戻す事に決定した。
それはすなわち、王女としての身分を剥奪して城から追い出すという事だ。
あの時ほど自分が王族に生まれた事を恨んだ時はなかった。
議会で妖精の取り替え子が認められ、サマンサが王女だと認定された以上、私情でその決定を覆す事は出来なかった。
政的な事なら決断が下せた。だが私的な事で不正をするなど王族としての秩序が許さなかった。
それにそんな事をすれば、私がアクリアーナの為にならなんでもする王だと思われ、これまでのアクリアーナの功績さえ疑わしく思われてしまう。
あの血の滲むような努力を無駄には出来なかった。
娘を手放さなければならない。私の愛する娘をーー。
きっと生涯この決断を悔やむだろう。
この胸に生まれた悲しみや懺悔、憎悪や殺意が消える事は決してない。
「……あのサマンサとかいう娘は人心掌握に長けている。クリスディークや我が国の殆どの貴族がもうあの娘の味方だ。」
「ごめんなさい、ごめんなさい……アクリアーナ。」
「あの娘はあろう事か、アクリアーナが城から追い出されると決まったにもかかわらず、私達がアクリアーナと最後に会うのを邪魔した。……私達にはあの時しか時間がなかったというのに、使用人や貴族を操りわざと同じ時間帯に面会希望を出した。自分が本当の娘なのだから優先して欲しいと貴族達の前で涙ながらに嘆願したのだ。」
見張られてて身動きが取りづらかったが、何とか手紙を出した後に会いに行こうとしていた。執事にも私達が会いに行くと伝言を頼んだ。
それなのに約束を違えてしまった。
会えるのが最後だったというのに……別れを告げて、たった一言「幸せになってほしい。」と言いたかっただけなのに……それすらも出来なかった。
第二王女として貴族達からほぼ認められているサマンサを無下には出来なかった。
サマンサの周囲には異常な崇拝があった。
サマンサが望めば謀反でも起こしそうな危険があったのだ。
絶望の中で私は『もうこんな国捨ててしまいたい。』と考えてしまった。王として絶対に考えてはいけない事だったが……あの瞬間全てを捨てて家族で逃げ出したいと考えてしまったのだ。
あの時、隣で泣き崩れていた妻も同じ気持ちだっただろう。
その時の事を思い出しているのか、深くため息をつきながら瞳を閉じた。
「それで……どうするの? このままなんてありえないでしょ?」
「父上、私も聞かせて欲しい。サマンサという女もアクリアーナを裏切ったクリスディークも……そしてあの子を傷つけ続けた貴族達も許すおつもりですか!」
何かを考え込んでいる父を問い詰めるように声を張り上げた。
すると低くてとても恐ろしい声がその場に響いた。
「許す? 私の娘を傷つけた者を許す? ありえない。……あいつらは絶対に許さない。あいつらには自ら身の破滅に向かってもらう。……自分達があの女を選んだんだ。その代償は支払ってもらう。」
「ええ、そうよ。たとえあの子が私達の本物の娘だとしても関係ないわ。17年間私が育てたのはアクリアーナよ。私の娘をあんな人前では辱しめた女を私は決して娘とは認めない! ……私の娘を傷つける奴等は許さないわ!」
父と母の憎しみのこもった視線を受けて、背筋が凍る思いをした子供達。
だがその気持ちは一緒だった。
目の前にあった紅茶を口にして落ち着きを取り戻した。
そして穏やかな声で自分達の気持ちを明かした。
「あの者達の思惑通りアクリアーナの身分を剥奪して王城から追い出す事になってしまった。……だが私はそれでよかったと思っている。」
「えっ……? どういう意味ですか、お父様……」
「あの子は此所にいると辛い目にしかあわない。どんなに守ってあげたくても私達は常に側には居てあげられないし、王族として私情を優先するような身勝手な振る舞いは許されない。……此所にはアクリアーナの味方は少なすぎる。」
「で、ですが……!」
「それにもうあの子に無茶はさせたくない。居場所の無くなってしまった王家に縛りつけて、あの子にまた努力を強いるのか? ただでさえ辛い立場だったのに死にかける程の苦労などもうさせたくはない。」
「ええ……もうあの子には楽になってもらいたい。王族の重責など忘れて……」
「はぁ……クリスディークがただのクソ餓鬼だったとしても隣国の方々はアクリアーナを歓迎してくれてた。あの子の能力を買ってくれていた彼等に託せば幸せになれると思っていたのに……」
「あの国の方々はアクリアーナの容姿など気にせず、常に努力を怠らなかったアクリアーナの王族としての覚悟を評価していたわ。アクリアーナが嫁ぎに来るのを楽しみにしていた彼等がこの事を知ればただでは済まないわね。あのゲス男も……。」
「勿論あのガキにもお礼はたっぷりとするさ。」
彼等の頭の中にはいかに奴等を不幸のドン底に落とすかで溢れ返っていた。
思い思いに地獄に落とす作戦を話し合った後、話しは今後のアクリアーナの事に移った。
「でもアクリアーナは? 今どうしてるの?」
突然知らない家に連れてかれ、見知らぬ者達を本物の家族だと言われて、アクリアーナが無事なのか心配になった。
「今の所問題ない。第三師団の者に見張らせている。」
「えっ! ではーー。」
「ああ、あの者に連絡をつけた。そろそろ帰ってくる頃だ。」
「そうなのね。」
「あいつならきっと騎士団を辞めてアクリアーナの元へ行きますね。」
「そもそも今回の遠征だってアクリアーナの嫁ぎ先に付いていく為の課題なんでしょ?」
「ああ、アクリアーナの騎士として嫁ぎ先の隣国へ同行したいと言われたからな。手柄を立てて、身分を得よ。と命じた。」
「フフフ……意地悪ですわね。貴方もアクリアーナの側にはあの方がいないと駄目だとわかっているでしょう? 」
「お母様の言うとおりよ。あの子は何かと言えば、あの男に頼っていたもの! 私にも相談して欲しかったのに!」
「あいつの『自分が一番頼られている』という優越感を浸ってる顔を思い出すとムカつくな。」
「フフフ……愛されているわね。アクリアーナは……」
そして執務室内ではアクリアーナが今どんな生活を送っているかを事細かに話していた。
王族とは思えない激しい足音をさせながら執務室へと入ってきた第一王女のエリアディーナ。
エリアディーナは、アクリアーナの姉として育ち、努力家で少し危なっかしかった妹をとても大切に思っていた。
「私が居ない内にどうしてこんな決断をしてしまったの! 例えあの娘が本物の妹だとしても、アクリアーナは私の大切な妹よ! あんな仕打ち許せないわっ!」
今年の末に婚姻予定のエリアディーナは他国の婚約者の元にいた為先日の夜会には出席していなかった。
たった一人であんな真実を告げられて、しかも本物の王女を連れてきたのは自分の婚約者。
婚約者に裏切られ、周囲の貴族から偽物だと謗りを受けたアクリアーナが可哀想で仕方なかった。
どうして自分は側に居てあげられなかったのか、どうして両親は妹を守ってくれなかったのか。
怒りと悲しみが溢れるのを止められなかった。
「落ち着け、エリアディーナ。」
「落ち着けるわけないでしょ! お兄様はそれでいいの!?」
「言いわけないだろう! 俺の大切な妹があんな目にあわされて許せるわけないだろう!」
室内には父である国王、母である王妃、そして兄でありこの国の次期国王の王太子殿下 テオドールがいた。
執務室で話し合いをしていた彼等の元に怒りの突撃をしたエリアディーナ。
テオドールもあの夜会の日、参加できなかった自分を激しく責めていた。自分さえあの場に居れば、まだ違った結果があったかもしれないと。
強く手を握りしめながら必死に怒りを押さえていた。
数年前に婚姻していたテオドールは身重の妻がここ何日か体調を崩しており、母から側に居てあげなさいと言われて夜会を欠席していたのだ。
「全部私のせいよ。私があの時、あの歌に反応してしまったから……」
憔悴しきった王妃は顔を手で隠しながら「ごめんなさい……アクリアーナ。」と呟いた。
「……歌? どういう事よ……」
帰って来たばかりで詳しい状況を知らないエリアディーナは困惑しながら母の姿を見た。
王妃として人前ではどんな時も涙を見せなかった母の泣き声が聞こえた。
それはどう見ても追い出したくて追い出した人間の姿ではなかった。
「……エリアディーナ、とりあえず座りなさい。」
疲れきった父に座るように言われ、エリアディーナは戸惑いながら席についた。
そして夜会で起きた事を全て聞かされた。
隣国の王子 クリスディークがサマンサという金髪青目の少女を無断で夜会に連れてきた事。
夜会会場でアクリアーナを偽物だと言い、自分が偽物だと知っていて保身の為に黙っていた悪女だと断罪した事。
クリスディークはアクリアーナとの婚約を破棄して新しくサマンサと婚約すると宣言した事。
その際にクリスディークはアクリアーナに手を上げた事。
混乱していた夜会会場に自分達が到着して、場を収めようとしたがサマンサが歌った記憶の中にあった歌が王妃が胎児に聞かせていた歌と一緒だという事が貴族達に知られてしまった事。
貴族達の興奮は凄まじく、あの歓喜は止められなかった。
見た目だけでなく、あの歌の件を考えるとサマンサが本物の娘である事は間違いない。
あの娘の顔にどことなく自分達の面影を感じてしまう。
それから状況は最悪だった。
三日間に渡って第二王女についての議会が開かれ、その間は関係者との接触はしないように臣下から釘をさされた。というか見張られていた。
忌々しい奴等は私達がアクリアーナに情を残さないようにとの配慮だと言っていた。
普段からアクリアーナを王族から排除しようとしていた者達は好機と捉え、議会でもサマンサが本物の王女でアクリアーナは偽物だと断言し、議題はアクリアーナが罪人かどうかにすり代わっていった。
クリスディークが言った。
アクリアーナが妖精の身代わり子だと知っていた。という発言が問題だった。
そこでグチグチと揉めている内にアクリアーナと会えないまま三日も無駄にしてしまった。
しかも時点でもうアクリアーナを王族として残せる手段は無くなっていた。
幸いアクリアーナが国に尽くしてきた事は事実であり、妖精の取り替え子なのを知っていたかなどは証明出来ない為、罪を問うことなど出来ない。
よって議会での決定は罪人ではなく本来の身分に戻す事に決定した。
それはすなわち、王女としての身分を剥奪して城から追い出すという事だ。
あの時ほど自分が王族に生まれた事を恨んだ時はなかった。
議会で妖精の取り替え子が認められ、サマンサが王女だと認定された以上、私情でその決定を覆す事は出来なかった。
政的な事なら決断が下せた。だが私的な事で不正をするなど王族としての秩序が許さなかった。
それにそんな事をすれば、私がアクリアーナの為にならなんでもする王だと思われ、これまでのアクリアーナの功績さえ疑わしく思われてしまう。
あの血の滲むような努力を無駄には出来なかった。
娘を手放さなければならない。私の愛する娘をーー。
きっと生涯この決断を悔やむだろう。
この胸に生まれた悲しみや懺悔、憎悪や殺意が消える事は決してない。
「……あのサマンサとかいう娘は人心掌握に長けている。クリスディークや我が国の殆どの貴族がもうあの娘の味方だ。」
「ごめんなさい、ごめんなさい……アクリアーナ。」
「あの娘はあろう事か、アクリアーナが城から追い出されると決まったにもかかわらず、私達がアクリアーナと最後に会うのを邪魔した。……私達にはあの時しか時間がなかったというのに、使用人や貴族を操りわざと同じ時間帯に面会希望を出した。自分が本当の娘なのだから優先して欲しいと貴族達の前で涙ながらに嘆願したのだ。」
見張られてて身動きが取りづらかったが、何とか手紙を出した後に会いに行こうとしていた。執事にも私達が会いに行くと伝言を頼んだ。
それなのに約束を違えてしまった。
会えるのが最後だったというのに……別れを告げて、たった一言「幸せになってほしい。」と言いたかっただけなのに……それすらも出来なかった。
第二王女として貴族達からほぼ認められているサマンサを無下には出来なかった。
サマンサの周囲には異常な崇拝があった。
サマンサが望めば謀反でも起こしそうな危険があったのだ。
絶望の中で私は『もうこんな国捨ててしまいたい。』と考えてしまった。王として絶対に考えてはいけない事だったが……あの瞬間全てを捨てて家族で逃げ出したいと考えてしまったのだ。
あの時、隣で泣き崩れていた妻も同じ気持ちだっただろう。
その時の事を思い出しているのか、深くため息をつきながら瞳を閉じた。
「それで……どうするの? このままなんてありえないでしょ?」
「父上、私も聞かせて欲しい。サマンサという女もアクリアーナを裏切ったクリスディークも……そしてあの子を傷つけ続けた貴族達も許すおつもりですか!」
何かを考え込んでいる父を問い詰めるように声を張り上げた。
すると低くてとても恐ろしい声がその場に響いた。
「許す? 私の娘を傷つけた者を許す? ありえない。……あいつらは絶対に許さない。あいつらには自ら身の破滅に向かってもらう。……自分達があの女を選んだんだ。その代償は支払ってもらう。」
「ええ、そうよ。たとえあの子が私達の本物の娘だとしても関係ないわ。17年間私が育てたのはアクリアーナよ。私の娘をあんな人前では辱しめた女を私は決して娘とは認めない! ……私の娘を傷つける奴等は許さないわ!」
父と母の憎しみのこもった視線を受けて、背筋が凍る思いをした子供達。
だがその気持ちは一緒だった。
目の前にあった紅茶を口にして落ち着きを取り戻した。
そして穏やかな声で自分達の気持ちを明かした。
「あの者達の思惑通りアクリアーナの身分を剥奪して王城から追い出す事になってしまった。……だが私はそれでよかったと思っている。」
「えっ……? どういう意味ですか、お父様……」
「あの子は此所にいると辛い目にしかあわない。どんなに守ってあげたくても私達は常に側には居てあげられないし、王族として私情を優先するような身勝手な振る舞いは許されない。……此所にはアクリアーナの味方は少なすぎる。」
「で、ですが……!」
「それにもうあの子に無茶はさせたくない。居場所の無くなってしまった王家に縛りつけて、あの子にまた努力を強いるのか? ただでさえ辛い立場だったのに死にかける程の苦労などもうさせたくはない。」
「ええ……もうあの子には楽になってもらいたい。王族の重責など忘れて……」
「はぁ……クリスディークがただのクソ餓鬼だったとしても隣国の方々はアクリアーナを歓迎してくれてた。あの子の能力を買ってくれていた彼等に託せば幸せになれると思っていたのに……」
「あの国の方々はアクリアーナの容姿など気にせず、常に努力を怠らなかったアクリアーナの王族としての覚悟を評価していたわ。アクリアーナが嫁ぎに来るのを楽しみにしていた彼等がこの事を知ればただでは済まないわね。あのゲス男も……。」
「勿論あのガキにもお礼はたっぷりとするさ。」
彼等の頭の中にはいかに奴等を不幸のドン底に落とすかで溢れ返っていた。
思い思いに地獄に落とす作戦を話し合った後、話しは今後のアクリアーナの事に移った。
「でもアクリアーナは? 今どうしてるの?」
突然知らない家に連れてかれ、見知らぬ者達を本物の家族だと言われて、アクリアーナが無事なのか心配になった。
「今の所問題ない。第三師団の者に見張らせている。」
「えっ! ではーー。」
「ああ、あの者に連絡をつけた。そろそろ帰ってくる頃だ。」
「そうなのね。」
「あいつならきっと騎士団を辞めてアクリアーナの元へ行きますね。」
「そもそも今回の遠征だってアクリアーナの嫁ぎ先に付いていく為の課題なんでしょ?」
「ああ、アクリアーナの騎士として嫁ぎ先の隣国へ同行したいと言われたからな。手柄を立てて、身分を得よ。と命じた。」
「フフフ……意地悪ですわね。貴方もアクリアーナの側にはあの方がいないと駄目だとわかっているでしょう? 」
「お母様の言うとおりよ。あの子は何かと言えば、あの男に頼っていたもの! 私にも相談して欲しかったのに!」
「あいつの『自分が一番頼られている』という優越感を浸ってる顔を思い出すとムカつくな。」
「フフフ……愛されているわね。アクリアーナは……」
そして執務室内ではアクリアーナが今どんな生活を送っているかを事細かに話していた。
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