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~第一章~
一人でのお出かけ
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オリヴァーさんの家にお世話になって数日が経った。
早く街に出て仕事を見つけようと思っていたが「平民になったばかりなのだから、そんなに焦らなくていい。」とオリヴァーさんが言ってくれたので家の手伝いをしながらゆっくりと過ごす事ができた。
ジェイクともこの数日間で色々な話をした。
オリヴァーさんの昔話や仕事の事、ジェイクの夢、リエラさんの好きな物など色んな事を教えてくれた。
オリヴァーさんは貧しい村出身で代々農業をする家に生まれたらしい。兄弟は多かったが食べ物は少ない。
体の大きかったオリヴァーさんは森に出かけてよく狩りをして食料を調達していた。食料調達という大義名分の元、自由に森を駆け回っていたらしい。
そういう生活をしている内に農家ではなく冒険者になりたいと思うようになった。
自由に冒険をしてみたい。
知らない土地に行ってみたい。
そこで家族に相談した所「田舎の村男が冒険者になんてなれるわけない! 現実を見ろ!」そう厳しく叱責されたらしい。
無理矢理 村娘と婚姻させられそうになり、村から逃げ出して冒険者になったらしい。
自分の人生は自分だけの物だ!
誰に何と言われても自分の決めた道を行く!
たとえどんな困難があっても自分の人生を諦めたりなんかしない!
そう心に決めたんだって。
子供達にも「どんな困難や災難があっても立ち向かえ、挫けるな。自分の人生を諦めるな!」「諦めずに進み続ければ道は必ず開ける!」そう言っていたらしい。
そんなオリヴァーさんの背中を見て育ったジェイクの夢も冒険者なんだって。
冒険者なんて危険で収入は不安定だってリエラさんはあまり良い顔をしないそうだけど、息子が決めた道なら仕方ないと諦めているそうだ。
今はまだ王都周辺しか旅には出かけてないけど、いつか色んな所に行く予定らしい。
そして未だに会う事すらほとんどないリエラさん。
同じ家に居るというのに避けられてしまっている。
料理の味付けの時だけ顔を出して、無言で整えてくれる。
オリヴァーさんいわく、歩み寄ろうとはしてるらしい。
うーん、難しいよね。
……私、話しかけても無視されてるからなー。
ジェイクの話によると、リエラさんは甘酸っぱいクエラが好きだという情報を得た。
そこで今日は街に出てお金を稼いでクエラを買って帰ろうと思っている。
何故か私が一人で出歩くのを止めたがるオリヴァーさん達。
「平民になったとはいえ、アクアは元王女だろう!」
「魔法があったとしても、女一人で外に出るなんて危ない。出かけるのなら付いていくから待ってろ。」
お忍びなら何度もしてるから街中には慣れてるのに、心配性の二人は私と一緒に行くと言ってきかない。
それに女一人で街を歩いてる人なんて沢山いるけど……
王都なんだからそこまで治安も悪くないでしょ。
今日は個人的な用件もあるし、一人で出かけたい気分だった私はこっそりと家を抜け出す事にした。
「お昼過ぎには帰ってきますので……」
置き手紙を残して、小さく挨拶して家を後にした。
青色のワンピースに白のフード付きのローブ。
平民になったとはいえ、第二王女の顔を知っている者がいれば騒ぎになる。だから顔は隠しておくのが安全だ。そう思って深くフードを被った。
「まずは仕事をしてからにしよう。お金を稼げばあの子達にもお土産が買える!」
住宅街を抜けて、石畳の道を歩いていく。
すると露店や屋台が並ぶ道に出た。
芳しい香りが漂っていて、お腹を刺激してくる。
此所も帰りに寄って帰ろう、お土産候補だ。
「さて、どうしようかな。妖精の取り替え子の件はどこまで広がってるのだろう。どこでなら仕事になるかな?」
街の中央広場にあった噴水に腰かけながら考えていた。
「下手に関わって知らない人を巻き込むわけにはいかないしな……ここはやっぱり冒険者ギルドかな?」
あそこなら王家や貴族とは関わりのない独立した機関だし、新しい身分証も手に入る。
そう思って冒険者ギルドの扉を開こうとした。
ーーガシッ!
ドアノブに手を伸ばそうとした私を遮る足。
チラッと足の持ち主に視線を向けると、男が通せん坊するように足を壁に叩きつけて扉を遮っていた。
「おいおい、何かギルドにようか? 冒険者っつーのは、お前さんみたいなヒョロくて怪しい奴はお断りなんだよー!」
……くっさッ。
顔を真っ赤にしてアルコール臭がプンプン漂ってくる酔っぱらい男はわざとらしく絡んでくる。
「おい、聞いてんのか? おいっ!?」
面倒くさそうだな……。
とりあえず、此所から離れるかな。
男を無視してその場を離れようとすると「無視してんじゃねぇーよ!」逆上した男が私に飛びかかってきて、フードに手をかけた。
「……あっ!」
勢いよくフードが取られ、栗色の髪がなびいていった。
「お前女か……」
人通りの多い街中で素顔を晒されたアクア。
式典でも遠くからしか民の前に姿を表さないアクリアーナだった。だから素顔を知っている平民は少ないはずだ。
わかっていても焦る気持ちがあった。
もしかしたらこの中に私が元第二王女だと知っている者がいるかもしれない。
そんな事を考えていると大声で声をかけられた。
「おいっ! お前っ!」
「お前だよ! お前っ!」
怒っているような男性数人の声が露店側の道から聞こえてきた。
これはちょっとヤバい?
背後には酔っぱらい男、右側からは明らかに私を怒鳴っている男達がいる。
街中で魔法を放つ訳にもいかないし、暴力もなー。
どうするべきか頭を悩ませていると、ふわっと嗅ぎ慣れた匂いと共に「遅くなって申し訳ございません。」見知った男が側にやって来た。
えっ!? こんな所で何やってんの?
早く街に出て仕事を見つけようと思っていたが「平民になったばかりなのだから、そんなに焦らなくていい。」とオリヴァーさんが言ってくれたので家の手伝いをしながらゆっくりと過ごす事ができた。
ジェイクともこの数日間で色々な話をした。
オリヴァーさんの昔話や仕事の事、ジェイクの夢、リエラさんの好きな物など色んな事を教えてくれた。
オリヴァーさんは貧しい村出身で代々農業をする家に生まれたらしい。兄弟は多かったが食べ物は少ない。
体の大きかったオリヴァーさんは森に出かけてよく狩りをして食料を調達していた。食料調達という大義名分の元、自由に森を駆け回っていたらしい。
そういう生活をしている内に農家ではなく冒険者になりたいと思うようになった。
自由に冒険をしてみたい。
知らない土地に行ってみたい。
そこで家族に相談した所「田舎の村男が冒険者になんてなれるわけない! 現実を見ろ!」そう厳しく叱責されたらしい。
無理矢理 村娘と婚姻させられそうになり、村から逃げ出して冒険者になったらしい。
自分の人生は自分だけの物だ!
誰に何と言われても自分の決めた道を行く!
たとえどんな困難があっても自分の人生を諦めたりなんかしない!
そう心に決めたんだって。
子供達にも「どんな困難や災難があっても立ち向かえ、挫けるな。自分の人生を諦めるな!」「諦めずに進み続ければ道は必ず開ける!」そう言っていたらしい。
そんなオリヴァーさんの背中を見て育ったジェイクの夢も冒険者なんだって。
冒険者なんて危険で収入は不安定だってリエラさんはあまり良い顔をしないそうだけど、息子が決めた道なら仕方ないと諦めているそうだ。
今はまだ王都周辺しか旅には出かけてないけど、いつか色んな所に行く予定らしい。
そして未だに会う事すらほとんどないリエラさん。
同じ家に居るというのに避けられてしまっている。
料理の味付けの時だけ顔を出して、無言で整えてくれる。
オリヴァーさんいわく、歩み寄ろうとはしてるらしい。
うーん、難しいよね。
……私、話しかけても無視されてるからなー。
ジェイクの話によると、リエラさんは甘酸っぱいクエラが好きだという情報を得た。
そこで今日は街に出てお金を稼いでクエラを買って帰ろうと思っている。
何故か私が一人で出歩くのを止めたがるオリヴァーさん達。
「平民になったとはいえ、アクアは元王女だろう!」
「魔法があったとしても、女一人で外に出るなんて危ない。出かけるのなら付いていくから待ってろ。」
お忍びなら何度もしてるから街中には慣れてるのに、心配性の二人は私と一緒に行くと言ってきかない。
それに女一人で街を歩いてる人なんて沢山いるけど……
王都なんだからそこまで治安も悪くないでしょ。
今日は個人的な用件もあるし、一人で出かけたい気分だった私はこっそりと家を抜け出す事にした。
「お昼過ぎには帰ってきますので……」
置き手紙を残して、小さく挨拶して家を後にした。
青色のワンピースに白のフード付きのローブ。
平民になったとはいえ、第二王女の顔を知っている者がいれば騒ぎになる。だから顔は隠しておくのが安全だ。そう思って深くフードを被った。
「まずは仕事をしてからにしよう。お金を稼げばあの子達にもお土産が買える!」
住宅街を抜けて、石畳の道を歩いていく。
すると露店や屋台が並ぶ道に出た。
芳しい香りが漂っていて、お腹を刺激してくる。
此所も帰りに寄って帰ろう、お土産候補だ。
「さて、どうしようかな。妖精の取り替え子の件はどこまで広がってるのだろう。どこでなら仕事になるかな?」
街の中央広場にあった噴水に腰かけながら考えていた。
「下手に関わって知らない人を巻き込むわけにはいかないしな……ここはやっぱり冒険者ギルドかな?」
あそこなら王家や貴族とは関わりのない独立した機関だし、新しい身分証も手に入る。
そう思って冒険者ギルドの扉を開こうとした。
ーーガシッ!
ドアノブに手を伸ばそうとした私を遮る足。
チラッと足の持ち主に視線を向けると、男が通せん坊するように足を壁に叩きつけて扉を遮っていた。
「おいおい、何かギルドにようか? 冒険者っつーのは、お前さんみたいなヒョロくて怪しい奴はお断りなんだよー!」
……くっさッ。
顔を真っ赤にしてアルコール臭がプンプン漂ってくる酔っぱらい男はわざとらしく絡んでくる。
「おい、聞いてんのか? おいっ!?」
面倒くさそうだな……。
とりあえず、此所から離れるかな。
男を無視してその場を離れようとすると「無視してんじゃねぇーよ!」逆上した男が私に飛びかかってきて、フードに手をかけた。
「……あっ!」
勢いよくフードが取られ、栗色の髪がなびいていった。
「お前女か……」
人通りの多い街中で素顔を晒されたアクア。
式典でも遠くからしか民の前に姿を表さないアクリアーナだった。だから素顔を知っている平民は少ないはずだ。
わかっていても焦る気持ちがあった。
もしかしたらこの中に私が元第二王女だと知っている者がいるかもしれない。
そんな事を考えていると大声で声をかけられた。
「おいっ! お前っ!」
「お前だよ! お前っ!」
怒っているような男性数人の声が露店側の道から聞こえてきた。
これはちょっとヤバい?
背後には酔っぱらい男、右側からは明らかに私を怒鳴っている男達がいる。
街中で魔法を放つ訳にもいかないし、暴力もなー。
どうするべきか頭を悩ませていると、ふわっと嗅ぎ慣れた匂いと共に「遅くなって申し訳ございません。」見知った男が側にやって来た。
えっ!? こんな所で何やってんの?
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