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無力なままではいたくない

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 翌朝。
 旅路を急ぐということで、朝早くからエニケイ村を発とうとした(お弁当について相談したら無償で提供してくれた、ありがとうございます)俺とシャルだったが、この村の人達は皆さんえらい早起きらしく、慎ましく出発するはずが、なんか朝から祝賀パレードみたいになってしまった。
 昨夜のことを思い出してか、シャルはやはり居心地悪そうだった。



 エニケイ村を発ってすぐに、ベルク山道へ足を踏み入れる。

「シャル、ここからは山道になる。足元に気を付けるんだぞ」

「……分かってます」

 シャルの反応が鈍い。
 加えて、見るからに気落ちしてそうだった。
 昨夜のことで、自信を喪失してしまっているんだな。
 とはいえどう声を掛けてやればいいものか。

 微妙な空気のまま山道を歩き始める。

 時折一歩後ろを見て、シャルの様子を確かめつつ歩く。
 けれどシャルの顔は浮かないままだ。
 少し話して気分を換えさせるしかないか。

「シャル」

「はい?」

 とは言え会話の内容に困る。
 さて、どうする。
 落ち込んでいるシャルの気を紛らわせて、なおかつ当たり障りない内容……

 あっ、そうだ(名案)

「昨夜、村長の娘さんと話をしていたそうだな。どんなことを話していたんだ?」

「あ、はい」

 村長の娘さんと、自分の家のことや義兄たる俺のこと、エニケイ村の内情についてなど、色々と話していたらしい。俺はその時、村長のワインを美味しくいただいてたけど。

「その、「あなたとお兄さんがいなかったら、きっと私は今夜でいなくなってた。だから、ありがとう」と、何度も感謝されました」

「そうかそうか」

 本来なら彼女が生贄にされて、あの日で人生が終わるところだったんだ。感謝しかないだろう。

「でも……肝心のわたしは魔物も倒せず、お兄様のお手を煩わせただけでした」

「……」

 答えに窮するとはまさにこれ。
 今のシャルは、自分の無力さを嘆いている。
 そうだな、とも、そんなことはない、とも言えない。

「なら、どうするんだ?」

 俺はシャルに問い掛けた。

「えっ……」

 そこで問い掛けになると思ってなかったか、シャルは目を丸くした。

「自分が無力なのが嫌で、俺の手を煩わせたくない。なら、お前はこれからどうしたいんだ?」

 肯定すれば余計に落ち込み、否定しても余計に落ち込む。
 なら、どっちでもないグレーな答え方……相手に対して問を投げ掛けることだ。ぶっちゃけ考えるのを一時放棄したとも言える。

「これから、どうしたい……」

 歩みを止めないままに、シャルは考え込む。
 だがまぁ……シャルの性格を鑑みれば、答えは既に決まっているようなものだがな。
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