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風呂上がりにワインと言う贅沢
しおりを挟む家人のベッドを借りる形で、俺とシャルは村長のご自宅で一晩お世話になることとなった。
シャルを先に入浴させて、それを待つ間に俺は部屋の中で地勢図を広げて位置確認。
「っと、この辺りがエニケイ村だから……」
エニケイ村はこの地勢図には載ってないから、野宿予定地点をこの村と仮定。
明日の早朝には、この辺りのすぐ近くにある山道ーー『ベルク山道』に入山するつもりだ。
山道内に『ベルク村』と言う小さな村もあり、明日はここで一晩泊めさせてもらう。
予定通りなら、ベルク村を経って半日過ぎぐらいには山道を越えて、その麓にあるサダルスウドへ到着するはずだ。
キンジョーの町からここまで、何度も食事をいただいたおかげで、食料は十分残っている。
もし良ければ、村長の奥さん、或いは娘さんに食材をいくつか渡して、お弁当を作ってもらうのもいいかもしれないな。
お願いしたらそれくらいはしてくれそうだし、後で相談してみるか。
地勢図による位置確認を終えるが、シャルはまだ上がってこない。
武具の手入れもするか。
ザックの中にある道具袋から砥石を取り出し、ロングソードの刀身をシャコシャコと研ぐ。
刀身が部屋の灯りを照り返してキラリと輝く。うん、こんなもんだな。
それも済んで一息ついたところで、コンコンと控えめなノックがドアを叩く。
「お兄様、お風呂から上がりました」
「ん、シャルか。分かった」
シャルが風呂から上がってきたようだ。
じゃ、俺もひとっ風呂浴びるとしますか。
男の風呂はカラスの行水、とは誰が言ったのか。
そんなことを考えつつ、俺はせっせと身体を洗ってざぶんと湯槽に身を沈める。
ふぅ、今日は色々とあった一日だな。
キャラバンの皆さんからおにぎりを餞別としていただき、スライムとコカトリスと遭遇して戦闘になったり、地勢図には無かったエニケイ村に着いたと思ったら、村は死活問題に晒されており、シャルがその生贄の変わりになると言い出して、初号機……もとい、魔物と戦って勇者様とか持て囃されたり。
体力も気力も魔力も使った一日だった。
風呂に入って、シャルも少しは落ち着けただろうか。
怖かったし何もできなくて居心地も悪いわで、テンションは最低だろう。
あとで話し相手にでもなってあげないとな。
もう十秒だけ湯槽に浸かってから、俺は勢いよく風呂場を出た。
着替えて、タオルを頭に乗せながらシャルのいる部屋のドアをノックしようとしたら。
「お兄さんと二人で旅を?」
「そうなんです。わたしとお兄様は、元々は伯爵のお家に住んでいまして……」
「伯爵……貴族!?えっ、それがどうして旅に出ることになったんですか!?」
「えぇと、それなんですけど……」
シャルと……もう一人いるな、本来の生贄にされる予定だった村長の娘さんかな?
女の子同士、仲良さそうに話してるみたいだし、俺が出る幕は無さそうだ。友達が出来たようで何より。
「勇者様、お風呂上がりですか?」
っと、村長が話しかけてきたので意識をそちらへ。
「いい湯でした。ありがとうございます」
「いえいえ。ところで、この村自慢のワインはいかがでしょうか?」
ほぅ、ワインとな。それはちょっと興味あるぞ。
「いいですね、寝る前に一杯いただいても?」
「どうぞどうぞ、ではこちらへ」
村長に果実酒を勧められたので、明日に支障をきたさないよう、グラス一杯だけいただきました。美味しかったです。
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