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29.ゼインに会いたい。
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夫妻が、ゼインと王様達との連絡用魔道具をこの場に持ってきているらしく、それを使って今連絡をしてみなさいと言われた。
出されたのはオルゴールのような機械に、拳大の金色の魔石がついたもの。魔石を触れば連絡できるそうだ。
僕がもっているお兄様との魔道具とそう変わらない。
「じゃあ私達は戻るから、ゆっくりと心ゆくまで話しなさい。終われば外に待機している護衛に言ってくれたら良いよ。きっと君の婚約者は君からの連絡が来るのを待ってるはずだから、早く連絡してね。それから……トイルズ令息…いや、将来きっと家族になってくれるだろうから、ミラくんと呼んでもいいかな。」
「は、はい!」
「ふふ、そんなに固くならないで。君も、今日はごめんね。来週までには必ずヴレーヒと会う席を作るから。」
「ありがとうございます!」
夫妻は微笑んで部屋を出ていき、ここに残されたのは僕たちだけになった。
「じゃ、じゃあかけるよ…!」
「うん…!!き、きんちょーしてきた…!!」
魔石を触ると光を放ち始めて、その光が収まると同時に愛しい人の声が聞こえてきた。
『ルカ…?』
「あっ、ゼイン!聞こえる?ミラもいるよ!」
少し元気がない、どうしたのだろうか。
『ああ…ルカ……ルカ…………会いたいよ…………』
「わぁ…熱烈だね…ルカ…」
ゼインの必死な願いにミラは若干引いているが、どうしたのだろうか。様子がおかしい。
「うん、僕も会いたい。でもまだ1週間以上会えないんだよ?今からそんなこと言ってたら、持たないよ、ふふ。」
『うぅっ……絶対、絶対に仕事終わらせてそっち行く……。一緒に観光する…。』
「え?公務があって行けないって言ってなかった?」
『全部終わらせる……。そっちのゴタゴタも、公務も、全部!終わらせる!』
うむ…なぜかは知らないけれど、やる気が出たみたいでよかった。
「ひっ……この国の王族と会うのでもかなりギリギリだったのに、自国の王族とも会わなきゃいけないの…?うぅ……ルカの婚約者だから、頑張ろう……」
ミラはなんだか意気消沈してるし…。そんなに王族と会うのが嫌かね。あなた貴族でしょう。緊張しいだもんね、ミラ。
「そう、あのね。もうお話は聞いたんだけど…ネローはそっち、どんな感じ?元気そう?」
すると、魔道具越しだというのにゼインの雰囲気が冷たくなるのが分かった。僕は長く一緒にいるから少しは慣れてるけど、ミラは完全に怯えてしまっている。
『ネロー……ネローねぇ…。正直私はもう二度と私の唯一の前に出したくないほど嫌悪しているよ。ルカに懸想した上に、手を出そうとするなんて…!』
ぽそぽそと話していて、こちらとしては音が途切れ途切れだったからほとんど何を言っているか聞き取れなかった。
「えと…ごめん、聞き取れなかった、なんて言ったの?」
そう言うと、パッと雰囲気が和らいで何でもないように話す。
『ああ、ネローくんは元気だよ。そちらの兄君から逃れることができて一安心、といったところかな。
そっちはどうだい?色々あってフースカを楽しめていないんじゃないか?
もうしばらくしたら落ち着くはずだし、そうしたら目一杯満喫しなさい。私もそっちに行くからね。』
「ふふ、うん!待ってるね!」
『ああ。ミラくん、ここ数日はヴレーヒ殿に会えないだろう。少し残念ではあるが少々待っていてくれ。
それから……くれぐれも、くれぐれも!私のルカをよろしく頼むね。』
「は、はいぃ!!了解しました!!」
「もう!ゼイン!ミラが怯えてるでしょ!圧をかけなくていいの!」
『おや…私はかけているつもりはないのだが。まあ善処しよう。』
そして僕達は通話を終わって、待機している護衛にその旨を伝えると、僕達を部屋へ送ってくれた。
さて…どうしようかな。
ちょっと気になってたんだけど、なんで僕とミラ、同じ部屋なのかな、って考えてたんだよね。貴族は普通、生まれたばかりの子供や夫婦じゃなければ同じ部屋は使わないし。
まあたぶん、安全のためなんだろうなとは思う。
他国からの貴族、王族の貴賓、しかも一時とはいえ、狙われていた人間がこの国にやってきた。しかも第三王子の運命だろう人間と一緒に。
僕たちに何かあれば一気にこの国は窮地に陥る。だから守りやすいように一緒の部屋に入れたのだろう。
そう言えば……この国の第一王子、話に出てこなかったな。
ヒオニ様が王様になるために邪魔だと思ってたのはヴレーヒ様だけだったし…。
もしかして、第一王子も催眠をかけられてたとか?
いや、それだったら国王夫妻は言っているはずだろう。
じゃあなんで?うーん、わからぬ。
ま、いっか!
一緒に行けないと思ってたゼイン、来てくれるらしいし!それを楽しみにして待ってよーっと。
早くゴタゴタが終われば良いんだけど。
「ミラー!このお菓子おいしーよ!美味しいもの食べて元気出そう!」
「ふふ、ルカはいつでも元気いっぱいだね。じゃあ僕このケーキ食べる。」
「はい!」
「ありがと」
早くゼインに会いたいなぁ。
出されたのはオルゴールのような機械に、拳大の金色の魔石がついたもの。魔石を触れば連絡できるそうだ。
僕がもっているお兄様との魔道具とそう変わらない。
「じゃあ私達は戻るから、ゆっくりと心ゆくまで話しなさい。終われば外に待機している護衛に言ってくれたら良いよ。きっと君の婚約者は君からの連絡が来るのを待ってるはずだから、早く連絡してね。それから……トイルズ令息…いや、将来きっと家族になってくれるだろうから、ミラくんと呼んでもいいかな。」
「は、はい!」
「ふふ、そんなに固くならないで。君も、今日はごめんね。来週までには必ずヴレーヒと会う席を作るから。」
「ありがとうございます!」
夫妻は微笑んで部屋を出ていき、ここに残されたのは僕たちだけになった。
「じゃ、じゃあかけるよ…!」
「うん…!!き、きんちょーしてきた…!!」
魔石を触ると光を放ち始めて、その光が収まると同時に愛しい人の声が聞こえてきた。
『ルカ…?』
「あっ、ゼイン!聞こえる?ミラもいるよ!」
少し元気がない、どうしたのだろうか。
『ああ…ルカ……ルカ…………会いたいよ…………』
「わぁ…熱烈だね…ルカ…」
ゼインの必死な願いにミラは若干引いているが、どうしたのだろうか。様子がおかしい。
「うん、僕も会いたい。でもまだ1週間以上会えないんだよ?今からそんなこと言ってたら、持たないよ、ふふ。」
『うぅっ……絶対、絶対に仕事終わらせてそっち行く……。一緒に観光する…。』
「え?公務があって行けないって言ってなかった?」
『全部終わらせる……。そっちのゴタゴタも、公務も、全部!終わらせる!』
うむ…なぜかは知らないけれど、やる気が出たみたいでよかった。
「ひっ……この国の王族と会うのでもかなりギリギリだったのに、自国の王族とも会わなきゃいけないの…?うぅ……ルカの婚約者だから、頑張ろう……」
ミラはなんだか意気消沈してるし…。そんなに王族と会うのが嫌かね。あなた貴族でしょう。緊張しいだもんね、ミラ。
「そう、あのね。もうお話は聞いたんだけど…ネローはそっち、どんな感じ?元気そう?」
すると、魔道具越しだというのにゼインの雰囲気が冷たくなるのが分かった。僕は長く一緒にいるから少しは慣れてるけど、ミラは完全に怯えてしまっている。
『ネロー……ネローねぇ…。正直私はもう二度と私の唯一の前に出したくないほど嫌悪しているよ。ルカに懸想した上に、手を出そうとするなんて…!』
ぽそぽそと話していて、こちらとしては音が途切れ途切れだったからほとんど何を言っているか聞き取れなかった。
「えと…ごめん、聞き取れなかった、なんて言ったの?」
そう言うと、パッと雰囲気が和らいで何でもないように話す。
『ああ、ネローくんは元気だよ。そちらの兄君から逃れることができて一安心、といったところかな。
そっちはどうだい?色々あってフースカを楽しめていないんじゃないか?
もうしばらくしたら落ち着くはずだし、そうしたら目一杯満喫しなさい。私もそっちに行くからね。』
「ふふ、うん!待ってるね!」
『ああ。ミラくん、ここ数日はヴレーヒ殿に会えないだろう。少し残念ではあるが少々待っていてくれ。
それから……くれぐれも、くれぐれも!私のルカをよろしく頼むね。』
「は、はいぃ!!了解しました!!」
「もう!ゼイン!ミラが怯えてるでしょ!圧をかけなくていいの!」
『おや…私はかけているつもりはないのだが。まあ善処しよう。』
そして僕達は通話を終わって、待機している護衛にその旨を伝えると、僕達を部屋へ送ってくれた。
さて…どうしようかな。
ちょっと気になってたんだけど、なんで僕とミラ、同じ部屋なのかな、って考えてたんだよね。貴族は普通、生まれたばかりの子供や夫婦じゃなければ同じ部屋は使わないし。
まあたぶん、安全のためなんだろうなとは思う。
他国からの貴族、王族の貴賓、しかも一時とはいえ、狙われていた人間がこの国にやってきた。しかも第三王子の運命だろう人間と一緒に。
僕たちに何かあれば一気にこの国は窮地に陥る。だから守りやすいように一緒の部屋に入れたのだろう。
そう言えば……この国の第一王子、話に出てこなかったな。
ヒオニ様が王様になるために邪魔だと思ってたのはヴレーヒ様だけだったし…。
もしかして、第一王子も催眠をかけられてたとか?
いや、それだったら国王夫妻は言っているはずだろう。
じゃあなんで?うーん、わからぬ。
ま、いっか!
一緒に行けないと思ってたゼイン、来てくれるらしいし!それを楽しみにして待ってよーっと。
早くゴタゴタが終われば良いんだけど。
「ミラー!このお菓子おいしーよ!美味しいもの食べて元気出そう!」
「ふふ、ルカはいつでも元気いっぱいだね。じゃあ僕このケーキ食べる。」
「はい!」
「ありがと」
早くゼインに会いたいなぁ。
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