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青年期:帝国編
最高位冒険者
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龍の谷から帰還して夕焼けが沈み始めた街をとぼとぼと歩き、倒れ込むようにしてエルピスは自らの部屋のベットに倒れ込む。
体が何処までも沈み込んでいくような感覚にその全身を浸していると、先程までの戦闘経験が頭の中を何度も駆け抜けていった。
対象の龍種を強化する権能を用いてようやく龍達は全盛の力を取り戻すことができたのだが、あれだけの数相手に権能を行使したのはエルピスにとってもはじめての経験だ。
肉体的な疲労よりも今は精神的な疲労がいちばん大きい割合を占めている。
「服ぼっろぼろなんだけど」
仰向けになったまま自分の状況を改めてみてみれば、神の力を使用して作った衣服のそこかしこがほつれ始めていた。
攻撃による負傷というよりは今のエルピスでは権能を用いて服を作ることができなかったので自壊した形だが、結果的には同じような事だ。
魔力で作り出した糸を用いて応急処置をしていると、ベットに沈み込むエルピスを覗き込むようにしてニルがその顔を見せる。
ぷっくらと膨らんだ頬は少し赤みがかっており、あからさまな程に怒っているのが見てとれた。
「僕を置いていくからだよ。先に言ってくれたらなんだって出来たのに」
「師匠じゃないけど俺だって戦いたかったからね。仕方ない」
レネスと戦闘をすると命をかけた戦闘が始まるので気軽には行えないが、龍種達相手であればエルピスもある程度は余裕を持って対峙することができる。
戦闘訓練か本当の戦闘か、その線引きは実際に相手を殺せる道具を使っている以上どれだけ相手との力量差が近いかによって決まるのだ。
「それなら私と戦うかい? エルピス」
「戦えないからって今言いましたよね師匠。話聞いてました?」
「んむぅ。訓練できないじゃないか」
いつの間に部屋に入ったのか、部屋の壁に背中を預けて右手に持った刀をふらふらとさせるレネスの姿にエルピスも少しだけ呆れてしまう。
自分の腕を切り落とし、貫き、傷をつけたあの刀はエルピスからしてみればトラウマの対象だと言っても良い。
エルピスがレネスとの戦闘に乗り気でないのはそう言ったところも大きいのだ。
不満そうな表情を浮かべるレネスを無視していると、ニルがエルピスの腕を持ちふらふらとさせながら話題を変える。
「それでこの後もどっか出かけるんでしょ?」
「今日は最高位冒険者のライオネットさんに呼ばれてるんだよ、それが楽しみでさ」
フィトゥスに探してもらっていた最高位冒険者の一人であり、国に所属しないエルピスとは違い国に管理されている稀有な冒険者でもある。
龍を蹴散らし街を救い、幾つもの戦争を事前に止めた人物だ。
興味がそそられる。
「確か女の人だよね?」
「そうだよ。黒の令嬢の二つ名を持つ最高位冒険者だね」
黒の令嬢の二つ名の起源が何処なのかは分からないが、少なくとも彼女は女性であったはずである。
帝国に入るに当たって当てにしていた人物の一人であり、最高位冒険者であることからエルピスの父であるイロアスと接点を持っていてもおかしくない人物だ。
「ん? もしかして……焼きもちやいてたり?」
「いやしてないんだけど、この前見た時男っぽく見えたからさ」
「そんなにバッサリ言われると焼いてほしさもありつつ。まあ防具も着てれば仕方ないんじゃないかな」
冒険者が本気で防具を着込むと顔すら見えないことが多い。
人間そのものの脆弱性が故なので仕方のないところではあるのだが、ニルが性別を見誤るというのはなかなか珍しいことだ。
話している間に服の補修も終わり、エルピスは重たくなった体を無理やり上げてベットから立ち上がる。
「それじゃあ行って来る」
「言ってらっしゃい。痴漢とスリには気を付けて」
「ははっ、ありがと」
セリフが逆な気持ちもしなくはないが、ニルからの言葉をありがたく受け取りエルピスはそのまま目的の店へと向かって徒歩で向かう。
街を歩けば付近に不審な人物こそいないが、エルピスが歩いているだけで目立つのか他人からの視線をよく買う。
十数分歩くと目的の店が現れ、エルピスが入っていくと執事服の男性が現れる。
「――エルピス様ですね。どうぞ」
言われるままに先へと進んでいけば、1番奥の個室に案内された。
西洋風の内装に似付かない丸テーブルが中心に鎮座しており、過剰なほどに造形された装飾で作られた椅子を引かれてそこに座る。
「ライオネット氏は後からやってきますので少々お待ちください」
「分かりました」
言われるがままに待っている間、エルピスが収納庫から取り出したのはニルから貰った戦術指南書である。
個人戦闘を覚えた次は集団戦闘用の兵法を覚える必要があり、こうして隙間を縫って勉強しているのだ。
ゆったりと本を読んでいると、ふと鼻をくすぐる良い匂いにエルピスは本から顔をあげる。
視界の先にあったのは見るからに高そうな鳥の丸焼きだ。
「――失礼します。こちら白鳥のボイル焼きです」
「ど、どうも。これ誰から?」
「ライオネット氏から。来るまでおなかを空かせてはいけないと」
出された料理に舌鼓を打ちながらライオネットがやってくるのを待っていると、10分もするとこちらへとやってくる強者の気配が感じられた。
「すまないね、遅れてしまったよ。許してほしい」
入ってきたのは女性とも少年とも見れる中世的な顔立ちをした最高位冒険者、ライオネットその人である。
黒姫と呼ばれる通り全身真っ黒な服装をしているが、その肌は透き通るように白く、いっそ死神のようにすら見えた。
ここに来るまでに戦闘を行ってきたのか多少血の匂いこそするが、気にならない程度に抑えられているので匂いを気にする乙女的嗜好もあるらしい。
「ああよかった、食べていてくれたんだね。シェフ、私も何か食べ物を。あとワインも有ったらほしい」
「了解いたしました」
「こちらに来てから随分と仕事を任されてしまっていてね。遅れてしまった非礼をお詫びしたい」
「いえいえ、私もいろいろとしていましたから大丈夫です。それにその仕事、おそらく私に回ってくるはずの物でしたからね」
エルピスがこの国に来てどれほどだろうか。
最高位冒険者に渡される依頼は年に数回程度しかないが、エルピスはその業務をほとんど行なっていない。
現在帝国には数多くの最高位冒険者が存在するが、その中で業務をまともにこなしていないのはエルピスくらいのものだろう。
会議に出席する際の書類作りや貴族との会談などで免除されていることではあるが、他のものがやっているのに自分だけやっていないというのはなんだか後ろめたさがある。
「それなら幸いだよ」
「それで話は?」
「食べ終わってからで。言葉は大切なものだからね、何かのついでに発してしまうのは、言葉の価値を下げてしまう」
言葉を用いて戦闘を行う彼女らしい言動に納得し、エルピスは黙々とご飯を口に運ぶ。
生きるのに必要のない食事だとはいえ、胃を満たしていく食物は言いようのない充実感を与えてくれる。
沈黙の中で食べる食事は普段の物とはまた違った味わいを感じさせ、エルピスはからになった皿を前にして静かに手を合わせた。
「ーーご馳走様でした。それで私が貴方を呼んだ訳だけれど、はっきり言って私は今回の戦争に参加する気はない」
ーーなるほどそう来たか。
本題に入るとしても少しくらいの時間は欲しかった物である。
彼女の戦争参加を拒否する理由はいくつか考えられる、そのどれもがおそらくここに来るまでに周到に考えられた完璧な物なのだろう。
おそらくは何を言ったところで既に答えは確定している、だがいきなりはいそうですかと肯定するわけにもいかないので、エルピスも一応理由を聞く。
「そうですか。それは残念です。理由をお聞きしても?」
「まず私の能力は評議国の決定によって振われるもの。私が振るうものではない。次に評議国防衛の義務が私にはある、だから私は動けない」
義務と決定権、一体この国に来てからこの言葉を何回聞いたことか。
本音はもちろん別のところにあるし、もはや建前すらもあるかどうかすら怪しいと言って良い。
背後関係について考察するのはそう難しいことではないが、おそらくそれをしたところでなんの意味もないだろう。
「そう言う事でしたら問題ありませんよ、むしろありがたいです。評議国は国土面積に比べて国民の数が多いので困っていたんです、そこを守っていただけるならばありがたい」
「意外だね。憤慨してくるのかと」
「別に守れれば誰でもいいんですよ、今回の目的はあくまでも人類含めてこの世界に混乱が招かれない事です」
ならば好きなようにさせるのがエルピスにとって正しい行動だ。
自国防衛の為に自ら積極的に働いてくれるのであれば、エルピスの負担はかなり軽減されることだろう。
評議国は山岳地帯がその国土の大半を占める為防衛に特化していると言えるが、逆に平野と違って勝手を知らない人物であれば敵が隠れる場所も多い。
もしエルピスが防衛をすることになっていたのならば、人が存在しない山は全て平地に変えていたことだろう。
「そう、そこだよ」
ふとライオネットが思い出したようにーーいや、思い立ったようにして言葉を発する。
「私は気になっていたんだ、君がそう考えているのにもかかわらず仮想敵である種族に対して先制攻撃を仕掛けない事を。なぜ敵になるとわかっている種族を置いておく? 本当の狙いはなんなのかな?」
「聞かない方が身のためですよ、聞いてろくなことなんてないし」
(踏み入ってくるなぁ……何処が裏にいるんだろ)
言葉を重宝している割には、その言葉を使って己の身を危険に晒すような行動を取る。
ライオネットの発言に対して違和感を覚えるエルピスだが、〈鑑定〉を使用してもその後ろに何が居るかは分からない。
多重人格者か記憶を消去されたか、あるいは自らの意思で行動しているのか、あるいはーー
「一体どんなのが敵なのか、考えるだけで身震いしてしまいそうだよ」
「ーー話しませんよ、そんなに見つめられても」
「今回の会議発足は私からの呼びかけも大きい。その功績を買ってくれるべきだよ」
考えを妨害されてしまったことに少しの不満が募るものの、ライオネットが口にする事も分からないことはない。
秘密を隠そうとすればするほどその秘密を知ろうとする。
くどい程のしつこさが彼女の知恵をさらに加速させていくのだろう。
「口は災いの元なんじゃないかな」
「口を司る私相手に存外失礼な口を聞く。秘匿する事を美徳とするならばそれを伝える事は絶望になるのかな?」
「そうですね……そんなに話して欲しいのなら良いですよ。口外しないお約束ができるので有れば」
口約束さえ済ませてしまえば、権能の発動場所からライオネットの近くにいるのが誰かは判断することが可能だ。
エルピスの予想が正しければ、おそらく権能が発動しないだろうが、それだったらそれでも構わない。
「ふむ…まぁいいだろう。それでことの真実とは?」
「破壊神の復活です。今回の戦争の大元は世を混乱に落とし荒れた世界を落とすことで、敵の目的は破壊神を下ろす為の大地作成です」
破壊神という言葉をエルピスが口にすると同時、一瞬だけ〈神域〉の中を不穏な気配が過ぎ去っていく。
今のがライオネットの裏に居るものなのかどうか判断はつかないが、破壊神について詳しく知っている風なのは確かだ。
この世界にも一応破壊神という単語自体は存在するものの、それは怒り狂った神を指す言葉であって、この大地に降ろすようなものでなく、破壊神という神自体は存在していない。
だというのにエルピスの言葉に反応できたということは、この世界よりも上の世界の神について知っているのだろう。
「破壊神か……なるほどねぇ」
「驚かないんですね」
「いや驚いているよ、ただ君がこれくらいの動きをするのだからそれくらいの敵が相手でも不思議ではないだろう」
そしてライオネットもおそらく破壊神についてある程度知っているのだろう。
もし暴走する神の話だと思っているのであれば、エルピスが亜人種や上位種に対して警戒しているのは違和感がある。
そこに対して踏み入ってこないということはそういう事だろう、そう判断してエルピスは話を続けていく。
「随分と買ってくれているんですね」
「買っていないよ、むしろその行動を卑下している。破壊神の復活は人類が阻止すべき急務だ。それに対しての対応がこれでは少々弱いと言わざるおえない」
ワインを片手に揺らしながら冷たい目線を向けるライオネット。
それに対してエルピスは己のこの一年間以上の努力を下に見られたようで文句の一つも言いたくなるが、それより早くライオネットが言葉をたたみかける。
「ーーそう責めたような顔をしないでくれ、分かっている。君もまたこの世界を生きる人間だ。限界はある」
これでは立場が逆だ。
神であるエルピスが人のように扱われ、人であるはずのライオネットが神のように振る舞う。
その違和感になんともいえない気持ちのまま、エルピスはただ苦笑いを浮かべていた。
この話はこれ以上深追いすれば、面倒方がやってくるまでの時間が早くなるような予感がしていたからだ。
「それでは私はこの辺で、すまないが行くところができたのでね」
「評議国の守護は任せましたよ」
「あぁ。もちろんさ」
/
「ライオネット、通ります」
場所は変わって帝国の辺境、辺り一帯が暗闇に包まれた森の中にライトネットはいた。
先程までエルピスと食事をしていた彼女とはまた違った雰囲気を持っており、先ほどよりより一層死神らしいといえばらしい。
そんなライオネットの赤い目の視線の先には、黒いローブを全身に纏った人物が大きな木の麓で背中を預けながら座っていた。
近くには特に武器といったものこそ無いというのに、他の生物が彼に近寄ることはない。
『遅かったな。どうだった混ざりの神は』
「強いですね、仙桜種との戦闘訓練を経てその実力はもはや神の中でも上位です。司るものが弱い神では相手にもならないでしょう」
思い出すのは先程まで微妙な表情を浮かべていたエルピスの事だ。
最低でも二つ以上、予想では四つ程の神の称号を持つ混ざりの神。
一つの物事に対してしか得ることのできない筈である神の称号を複数持ち、神の中でしか伝承されていない破壊神についての話をおそらくはこちら側より知っている人物。
その戦力は果てしなく、ライオネットではおそらく持って数秒であろう。
『そうか。話は耳を通して聞いていた』
「制約の方は大丈夫だったでしょうか?」
『我は貴様でもある。制約の範囲内だ』
エルピスが感じた違和感の正体は目の前の人物に他ならない。
ただエルピスの邪神の権能である制約は他の能力を応用した言わば副産物、対処法さえ知っていれば事前準備で避けられないモノでもない。
跪き頭を垂れたライオネットの姿は忠臣のそれであろう、ローブの男はそれに対して特に何もするでなくライオネットの言葉を待つ。
「人類生存圏第四の神、混沌の神よ。私の忠誠を貴方に」
エルピス、法国が信仰する神、そして国を持つ淫魔の神。
人類生存圏内において表立って活動する三柱の他に、混沌を生業とする神が居るのは極一部の人物しか知らないところである。
『ああ。約束の時は近い』
混沌を望む神は自らの目的を果たす為に行動を開始する。
彼が目指すのは一体何処なのか、それはライオネットすらも知らないことだ。
ただ一つ言えることがあるとすれば、おそらくそれは人類にとって良い結末を産むものではないだろうと言うことだけである。
体が何処までも沈み込んでいくような感覚にその全身を浸していると、先程までの戦闘経験が頭の中を何度も駆け抜けていった。
対象の龍種を強化する権能を用いてようやく龍達は全盛の力を取り戻すことができたのだが、あれだけの数相手に権能を行使したのはエルピスにとってもはじめての経験だ。
肉体的な疲労よりも今は精神的な疲労がいちばん大きい割合を占めている。
「服ぼっろぼろなんだけど」
仰向けになったまま自分の状況を改めてみてみれば、神の力を使用して作った衣服のそこかしこがほつれ始めていた。
攻撃による負傷というよりは今のエルピスでは権能を用いて服を作ることができなかったので自壊した形だが、結果的には同じような事だ。
魔力で作り出した糸を用いて応急処置をしていると、ベットに沈み込むエルピスを覗き込むようにしてニルがその顔を見せる。
ぷっくらと膨らんだ頬は少し赤みがかっており、あからさまな程に怒っているのが見てとれた。
「僕を置いていくからだよ。先に言ってくれたらなんだって出来たのに」
「師匠じゃないけど俺だって戦いたかったからね。仕方ない」
レネスと戦闘をすると命をかけた戦闘が始まるので気軽には行えないが、龍種達相手であればエルピスもある程度は余裕を持って対峙することができる。
戦闘訓練か本当の戦闘か、その線引きは実際に相手を殺せる道具を使っている以上どれだけ相手との力量差が近いかによって決まるのだ。
「それなら私と戦うかい? エルピス」
「戦えないからって今言いましたよね師匠。話聞いてました?」
「んむぅ。訓練できないじゃないか」
いつの間に部屋に入ったのか、部屋の壁に背中を預けて右手に持った刀をふらふらとさせるレネスの姿にエルピスも少しだけ呆れてしまう。
自分の腕を切り落とし、貫き、傷をつけたあの刀はエルピスからしてみればトラウマの対象だと言っても良い。
エルピスがレネスとの戦闘に乗り気でないのはそう言ったところも大きいのだ。
不満そうな表情を浮かべるレネスを無視していると、ニルがエルピスの腕を持ちふらふらとさせながら話題を変える。
「それでこの後もどっか出かけるんでしょ?」
「今日は最高位冒険者のライオネットさんに呼ばれてるんだよ、それが楽しみでさ」
フィトゥスに探してもらっていた最高位冒険者の一人であり、国に所属しないエルピスとは違い国に管理されている稀有な冒険者でもある。
龍を蹴散らし街を救い、幾つもの戦争を事前に止めた人物だ。
興味がそそられる。
「確か女の人だよね?」
「そうだよ。黒の令嬢の二つ名を持つ最高位冒険者だね」
黒の令嬢の二つ名の起源が何処なのかは分からないが、少なくとも彼女は女性であったはずである。
帝国に入るに当たって当てにしていた人物の一人であり、最高位冒険者であることからエルピスの父であるイロアスと接点を持っていてもおかしくない人物だ。
「ん? もしかして……焼きもちやいてたり?」
「いやしてないんだけど、この前見た時男っぽく見えたからさ」
「そんなにバッサリ言われると焼いてほしさもありつつ。まあ防具も着てれば仕方ないんじゃないかな」
冒険者が本気で防具を着込むと顔すら見えないことが多い。
人間そのものの脆弱性が故なので仕方のないところではあるのだが、ニルが性別を見誤るというのはなかなか珍しいことだ。
話している間に服の補修も終わり、エルピスは重たくなった体を無理やり上げてベットから立ち上がる。
「それじゃあ行って来る」
「言ってらっしゃい。痴漢とスリには気を付けて」
「ははっ、ありがと」
セリフが逆な気持ちもしなくはないが、ニルからの言葉をありがたく受け取りエルピスはそのまま目的の店へと向かって徒歩で向かう。
街を歩けば付近に不審な人物こそいないが、エルピスが歩いているだけで目立つのか他人からの視線をよく買う。
十数分歩くと目的の店が現れ、エルピスが入っていくと執事服の男性が現れる。
「――エルピス様ですね。どうぞ」
言われるままに先へと進んでいけば、1番奥の個室に案内された。
西洋風の内装に似付かない丸テーブルが中心に鎮座しており、過剰なほどに造形された装飾で作られた椅子を引かれてそこに座る。
「ライオネット氏は後からやってきますので少々お待ちください」
「分かりました」
言われるがままに待っている間、エルピスが収納庫から取り出したのはニルから貰った戦術指南書である。
個人戦闘を覚えた次は集団戦闘用の兵法を覚える必要があり、こうして隙間を縫って勉強しているのだ。
ゆったりと本を読んでいると、ふと鼻をくすぐる良い匂いにエルピスは本から顔をあげる。
視界の先にあったのは見るからに高そうな鳥の丸焼きだ。
「――失礼します。こちら白鳥のボイル焼きです」
「ど、どうも。これ誰から?」
「ライオネット氏から。来るまでおなかを空かせてはいけないと」
出された料理に舌鼓を打ちながらライオネットがやってくるのを待っていると、10分もするとこちらへとやってくる強者の気配が感じられた。
「すまないね、遅れてしまったよ。許してほしい」
入ってきたのは女性とも少年とも見れる中世的な顔立ちをした最高位冒険者、ライオネットその人である。
黒姫と呼ばれる通り全身真っ黒な服装をしているが、その肌は透き通るように白く、いっそ死神のようにすら見えた。
ここに来るまでに戦闘を行ってきたのか多少血の匂いこそするが、気にならない程度に抑えられているので匂いを気にする乙女的嗜好もあるらしい。
「ああよかった、食べていてくれたんだね。シェフ、私も何か食べ物を。あとワインも有ったらほしい」
「了解いたしました」
「こちらに来てから随分と仕事を任されてしまっていてね。遅れてしまった非礼をお詫びしたい」
「いえいえ、私もいろいろとしていましたから大丈夫です。それにその仕事、おそらく私に回ってくるはずの物でしたからね」
エルピスがこの国に来てどれほどだろうか。
最高位冒険者に渡される依頼は年に数回程度しかないが、エルピスはその業務をほとんど行なっていない。
現在帝国には数多くの最高位冒険者が存在するが、その中で業務をまともにこなしていないのはエルピスくらいのものだろう。
会議に出席する際の書類作りや貴族との会談などで免除されていることではあるが、他のものがやっているのに自分だけやっていないというのはなんだか後ろめたさがある。
「それなら幸いだよ」
「それで話は?」
「食べ終わってからで。言葉は大切なものだからね、何かのついでに発してしまうのは、言葉の価値を下げてしまう」
言葉を用いて戦闘を行う彼女らしい言動に納得し、エルピスは黙々とご飯を口に運ぶ。
生きるのに必要のない食事だとはいえ、胃を満たしていく食物は言いようのない充実感を与えてくれる。
沈黙の中で食べる食事は普段の物とはまた違った味わいを感じさせ、エルピスはからになった皿を前にして静かに手を合わせた。
「ーーご馳走様でした。それで私が貴方を呼んだ訳だけれど、はっきり言って私は今回の戦争に参加する気はない」
ーーなるほどそう来たか。
本題に入るとしても少しくらいの時間は欲しかった物である。
彼女の戦争参加を拒否する理由はいくつか考えられる、そのどれもがおそらくここに来るまでに周到に考えられた完璧な物なのだろう。
おそらくは何を言ったところで既に答えは確定している、だがいきなりはいそうですかと肯定するわけにもいかないので、エルピスも一応理由を聞く。
「そうですか。それは残念です。理由をお聞きしても?」
「まず私の能力は評議国の決定によって振われるもの。私が振るうものではない。次に評議国防衛の義務が私にはある、だから私は動けない」
義務と決定権、一体この国に来てからこの言葉を何回聞いたことか。
本音はもちろん別のところにあるし、もはや建前すらもあるかどうかすら怪しいと言って良い。
背後関係について考察するのはそう難しいことではないが、おそらくそれをしたところでなんの意味もないだろう。
「そう言う事でしたら問題ありませんよ、むしろありがたいです。評議国は国土面積に比べて国民の数が多いので困っていたんです、そこを守っていただけるならばありがたい」
「意外だね。憤慨してくるのかと」
「別に守れれば誰でもいいんですよ、今回の目的はあくまでも人類含めてこの世界に混乱が招かれない事です」
ならば好きなようにさせるのがエルピスにとって正しい行動だ。
自国防衛の為に自ら積極的に働いてくれるのであれば、エルピスの負担はかなり軽減されることだろう。
評議国は山岳地帯がその国土の大半を占める為防衛に特化していると言えるが、逆に平野と違って勝手を知らない人物であれば敵が隠れる場所も多い。
もしエルピスが防衛をすることになっていたのならば、人が存在しない山は全て平地に変えていたことだろう。
「そう、そこだよ」
ふとライオネットが思い出したようにーーいや、思い立ったようにして言葉を発する。
「私は気になっていたんだ、君がそう考えているのにもかかわらず仮想敵である種族に対して先制攻撃を仕掛けない事を。なぜ敵になるとわかっている種族を置いておく? 本当の狙いはなんなのかな?」
「聞かない方が身のためですよ、聞いてろくなことなんてないし」
(踏み入ってくるなぁ……何処が裏にいるんだろ)
言葉を重宝している割には、その言葉を使って己の身を危険に晒すような行動を取る。
ライオネットの発言に対して違和感を覚えるエルピスだが、〈鑑定〉を使用してもその後ろに何が居るかは分からない。
多重人格者か記憶を消去されたか、あるいは自らの意思で行動しているのか、あるいはーー
「一体どんなのが敵なのか、考えるだけで身震いしてしまいそうだよ」
「ーー話しませんよ、そんなに見つめられても」
「今回の会議発足は私からの呼びかけも大きい。その功績を買ってくれるべきだよ」
考えを妨害されてしまったことに少しの不満が募るものの、ライオネットが口にする事も分からないことはない。
秘密を隠そうとすればするほどその秘密を知ろうとする。
くどい程のしつこさが彼女の知恵をさらに加速させていくのだろう。
「口は災いの元なんじゃないかな」
「口を司る私相手に存外失礼な口を聞く。秘匿する事を美徳とするならばそれを伝える事は絶望になるのかな?」
「そうですね……そんなに話して欲しいのなら良いですよ。口外しないお約束ができるので有れば」
口約束さえ済ませてしまえば、権能の発動場所からライオネットの近くにいるのが誰かは判断することが可能だ。
エルピスの予想が正しければ、おそらく権能が発動しないだろうが、それだったらそれでも構わない。
「ふむ…まぁいいだろう。それでことの真実とは?」
「破壊神の復活です。今回の戦争の大元は世を混乱に落とし荒れた世界を落とすことで、敵の目的は破壊神を下ろす為の大地作成です」
破壊神という言葉をエルピスが口にすると同時、一瞬だけ〈神域〉の中を不穏な気配が過ぎ去っていく。
今のがライオネットの裏に居るものなのかどうか判断はつかないが、破壊神について詳しく知っている風なのは確かだ。
この世界にも一応破壊神という単語自体は存在するものの、それは怒り狂った神を指す言葉であって、この大地に降ろすようなものでなく、破壊神という神自体は存在していない。
だというのにエルピスの言葉に反応できたということは、この世界よりも上の世界の神について知っているのだろう。
「破壊神か……なるほどねぇ」
「驚かないんですね」
「いや驚いているよ、ただ君がこれくらいの動きをするのだからそれくらいの敵が相手でも不思議ではないだろう」
そしてライオネットもおそらく破壊神についてある程度知っているのだろう。
もし暴走する神の話だと思っているのであれば、エルピスが亜人種や上位種に対して警戒しているのは違和感がある。
そこに対して踏み入ってこないということはそういう事だろう、そう判断してエルピスは話を続けていく。
「随分と買ってくれているんですね」
「買っていないよ、むしろその行動を卑下している。破壊神の復活は人類が阻止すべき急務だ。それに対しての対応がこれでは少々弱いと言わざるおえない」
ワインを片手に揺らしながら冷たい目線を向けるライオネット。
それに対してエルピスは己のこの一年間以上の努力を下に見られたようで文句の一つも言いたくなるが、それより早くライオネットが言葉をたたみかける。
「ーーそう責めたような顔をしないでくれ、分かっている。君もまたこの世界を生きる人間だ。限界はある」
これでは立場が逆だ。
神であるエルピスが人のように扱われ、人であるはずのライオネットが神のように振る舞う。
その違和感になんともいえない気持ちのまま、エルピスはただ苦笑いを浮かべていた。
この話はこれ以上深追いすれば、面倒方がやってくるまでの時間が早くなるような予感がしていたからだ。
「それでは私はこの辺で、すまないが行くところができたのでね」
「評議国の守護は任せましたよ」
「あぁ。もちろんさ」
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「ライオネット、通ります」
場所は変わって帝国の辺境、辺り一帯が暗闇に包まれた森の中にライトネットはいた。
先程までエルピスと食事をしていた彼女とはまた違った雰囲気を持っており、先ほどよりより一層死神らしいといえばらしい。
そんなライオネットの赤い目の視線の先には、黒いローブを全身に纏った人物が大きな木の麓で背中を預けながら座っていた。
近くには特に武器といったものこそ無いというのに、他の生物が彼に近寄ることはない。
『遅かったな。どうだった混ざりの神は』
「強いですね、仙桜種との戦闘訓練を経てその実力はもはや神の中でも上位です。司るものが弱い神では相手にもならないでしょう」
思い出すのは先程まで微妙な表情を浮かべていたエルピスの事だ。
最低でも二つ以上、予想では四つ程の神の称号を持つ混ざりの神。
一つの物事に対してしか得ることのできない筈である神の称号を複数持ち、神の中でしか伝承されていない破壊神についての話をおそらくはこちら側より知っている人物。
その戦力は果てしなく、ライオネットではおそらく持って数秒であろう。
『そうか。話は耳を通して聞いていた』
「制約の方は大丈夫だったでしょうか?」
『我は貴様でもある。制約の範囲内だ』
エルピスが感じた違和感の正体は目の前の人物に他ならない。
ただエルピスの邪神の権能である制約は他の能力を応用した言わば副産物、対処法さえ知っていれば事前準備で避けられないモノでもない。
跪き頭を垂れたライオネットの姿は忠臣のそれであろう、ローブの男はそれに対して特に何もするでなくライオネットの言葉を待つ。
「人類生存圏第四の神、混沌の神よ。私の忠誠を貴方に」
エルピス、法国が信仰する神、そして国を持つ淫魔の神。
人類生存圏内において表立って活動する三柱の他に、混沌を生業とする神が居るのは極一部の人物しか知らないところである。
『ああ。約束の時は近い』
混沌を望む神は自らの目的を果たす為に行動を開始する。
彼が目指すのは一体何処なのか、それはライオネットすらも知らないことだ。
ただ一つ言えることがあるとすれば、おそらくそれは人類にとって良い結末を産むものではないだろうと言うことだけである。
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※カクヨムでも連載しています

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yoshikazu
ファンタジー
橘 涼太。高校1年生。突然の交通事故で命を落としてしまう。
しかしそれは神のミスによるものだった。
神は橘 涼太の魂を神界に呼び謝罪する。その時、神は橘 涼太を気に入ってしまう。
そして橘 涼太に提案をする。
『魔法と剣の世界に転生してみないか?』と。
橘 涼太は快く承諾して記憶を消されて転生先へと旅立ちミハエルとなる。
しかし神は転生先のステータスの平均設定を勘違いして気付いた時には100倍の設定になっていた。
さらにミハエルは〈光の加護〉を受けておりステータスが合わせて1000倍になりスキルも数と質がパワーアップしていたのだ。
これは神の手違いでミハエルがとてつもないステータスとスキルを提げて世の中の悪と理不尽と運命に立ち向かう物語である。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
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五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
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もはや文字ですら無かった
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