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結の星痕
業火の巡礼
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「報告、報告します!」
普段は静かな謁見の間に、喧騒な声が突然響き渡るのと同時に、乱暴に扉を開け放ってその声の主が現れた。
それは聖なる祠を守る門兵だが、よほど急いで来たのか、ひどく息が乱れており、大粒の汗まで掻いている。
急ぎのあまり入室の許可を得ていないのか、後続してやってきた謁見の間の門兵に「無礼だぞ!」と取り押さえられる。
「どうした?想像しい」
城の主であるフラームはそれを片手で制し、兵士を解放させる。
「祠内部の竜でも外に出たか?」
続けて質問すると、その兵士は息を整える間も無く答える。
「たった今、我が国の巡礼を終えた者が現れました!」
その報告を聞いた途端、謁見の間にどよめきが広がる。
その報告にフラームは勿論関心を抱き、椅子に深く沈めていた身体を起こしてにやりと笑う。
「ほぉ……?あの巡礼を乗り越える者が遂に現れたか。くく、年の瀬に良い報せだな。それで?その者の容態はどうだ」
「はい。だいぶ疲弊してはおりますが、心身共に、今のところ異常は見受けられません。ただ、その者の連れが祠内部に侵入致しまして……」
「堕ちたのか?」
「いえ、そのバスターの適切な処置と、すぐに外へ出たので、問題はないかと」
兵士の報告にフラームは意味ありげに思案する。
「仲間が祠に入ったということは、そのバスターは国外の者か……。余程、我が国の巡礼内容の不満を持っていような?」
兵士は深く頷く。
「はい。それはもう、かなりの怒りようで」
「ふむ。……その者達に客室を貸し与え、医療班を向かわせろ」
「え、よろしいのですか?」
皇帝の言葉が意外だったのか、兵士が驚き顔で聞き返す。
「久方ぶりに現れた、我が国の巡礼制覇者だぞ?それくらいのもてなしは当然だろう」
「承知しました。直ちに手配致します」
「ああ、それと、その巡礼を制覇したバスターの名は何と申す?」
退室しようとした兵士は、もう一度恭しく一礼してから答えた。
「かの亡国、風の王国の出身、スレイヤーボレアリスと名乗っておりました」
国名を聞いた途端、再びどよめきが広がる。
その中で、フラームは静かに目を細めた。
そのスレイヤーの名前には覚えがある。
ボレアリス……。バスター承認試験で、あのタウケティを破った女、か……。確かタウケティは、その女には蒼龍に通じる力を秘めていると言っていたな。
「ふ、くくく……。そうか、遂にここまでたどり着いたか」
フラームは嬉しそうに愉悦を漏らす。
「その者に伝えろ。十分に休息を取った後、俺のへ来いと。何時でも好きな時に会ってやろう。それとそいつには協会からの使いと、おそらくアンタレス家のせがれが一緒にいるはずだ。そいつらも一緒に呼んでやれ」
そう命じられた兵士は深く一礼し、謁見の間から退室した。
「どうも、ご苦労様でした」
巡礼を終え、何故か案内された客室で待機してきた医者達にアウラ達の容態を診てもらい、彼等に礼を述べてからベイドは静かに扉を閉めた。
室内にはグラフィアスが壁にもたれかかり、複数あふ寝台にルクバットとシェアトが眠っており、その二人の間で、アウラが祈るような姿で椅子に腰掛けている。
国内を散策し、時間になって城に戻ってきたベイドとグラフィアスは、最初事態を把握出来ないでいたが、フォーマルハウトの説明により、この国が行っている、恐ろしい巡礼内容を知った。
不幸にもシェアトとルクバットはその力を目の当たりにし、今に至るようだ。
「医者が言うには、二人共特に異常は見られないそうです。貴女も少しは休んだらどうですか?一番ダメージを蓄積しているのは貴女なんですから」
アウラを気遣ってそう声を掛けるが、彼女はうなだれたまま返事をする。
「私は、大丈夫……。この国を舐めてた。ここには、一人で来るべきだったんだ。そうすれば、こんな事には……。二人がこうなったのは、私のせいだ」
「けど、こいつらがいなかったら、お前は祠から出てこられなかっただろ?」
「……それでも、一緒にいちゃけいけなかったんだよ」
グラフィアスがフォローするも、アウラはそう言って自分を責める。
本人はそう言うが、寝台で眠る二人は穏やかな寝息を立てており、素人目で見てもここから急変するようには思えない。
それだけ、アウラにとってこの国の力は、トラウマなのだろう。
少しの沈黙が降りかけたそんな時、扉が静かに開けられ、フォーマルハウトが入ってきた。
「今回の内容を、協会に報せてきました。近いうちに、何らかの審判が降るはずです。……具合はどうですか?」
その質問には、ベイドが答える。
「三人共、問題は無いそうです。二人も直に目覚めるかと。……ああそうだ。さっきの医者から言伝を預かっていたんでした。皇帝陛下への謁見は、いつでも受け付けるそうです。その際、謁見にはアウラさん意外にフォーさん、そしてグラフィアスにも来て欲しいそうです」
「……俺も?」
「ええ。詳しくは知りませんが、そう言っていました。どうしますか?今行くと言うのなら、二人は私が見ていますよ」
最後にアウラにそう質問すると、ルクバットの前髪を優しく撫でていたアウラは、ゆっくりと立ち上がり、こちらを向いた。
「今すぐ行こう」
「……っ」
その表情を見た瞬間、ぞくりと、背筋に悪寒が走った。
一瞬、身体を切り裂かれたかのような幻覚まで見えた。
感情があるようで無い、恐ろしい表情。
視線は間違い無くこちらをみているのに、明らかに違う物を見ている。
その瞳だけが、今のアウラの心情を物語っているような……。
「いや、アウラさんも少しは休んだ方が……」
「今すぐだ。こんな国、さっさと離れたい」
「待った」
アウラの気迫に圧されそうになっていると、グラフィアスが声を挙げる。
「悪いがちょっと用事がある。急用だ。すぐ終わらせるから、お前もちょっと付き合え」
「……」
「謁見には俺も行かなきゃいけないんだろ?さっさと終わらせてやるから、黙ってついてこい」
アウラの無言の圧にも屈さず、グラフィアスはそう笑って部屋を出て行く。
しばらく黙っていたアウラは苦々しげに舌打ちをし、グラフィアスの後を追った。
「……グラフィアスは、一体何を考えているのでしょうか?」
二人が出て行き、緊張が途切れた事でベイドが呟く。
「分かりません……。でも、今のアウラさんを皇帝には合わせない方が良いとは思います。僕もついて行くので、すみませんが、二人の事をお願いします」
そう言ってフォーマルハウトも部屋を出て行き、ベイドは一人で二人を看る事となった。
普段は静かな謁見の間に、喧騒な声が突然響き渡るのと同時に、乱暴に扉を開け放ってその声の主が現れた。
それは聖なる祠を守る門兵だが、よほど急いで来たのか、ひどく息が乱れており、大粒の汗まで掻いている。
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「どうした?想像しい」
城の主であるフラームはそれを片手で制し、兵士を解放させる。
「祠内部の竜でも外に出たか?」
続けて質問すると、その兵士は息を整える間も無く答える。
「たった今、我が国の巡礼を終えた者が現れました!」
その報告を聞いた途端、謁見の間にどよめきが広がる。
その報告にフラームは勿論関心を抱き、椅子に深く沈めていた身体を起こしてにやりと笑う。
「ほぉ……?あの巡礼を乗り越える者が遂に現れたか。くく、年の瀬に良い報せだな。それで?その者の容態はどうだ」
「はい。だいぶ疲弊してはおりますが、心身共に、今のところ異常は見受けられません。ただ、その者の連れが祠内部に侵入致しまして……」
「堕ちたのか?」
「いえ、そのバスターの適切な処置と、すぐに外へ出たので、問題はないかと」
兵士の報告にフラームは意味ありげに思案する。
「仲間が祠に入ったということは、そのバスターは国外の者か……。余程、我が国の巡礼内容の不満を持っていような?」
兵士は深く頷く。
「はい。それはもう、かなりの怒りようで」
「ふむ。……その者達に客室を貸し与え、医療班を向かわせろ」
「え、よろしいのですか?」
皇帝の言葉が意外だったのか、兵士が驚き顔で聞き返す。
「久方ぶりに現れた、我が国の巡礼制覇者だぞ?それくらいのもてなしは当然だろう」
「承知しました。直ちに手配致します」
「ああ、それと、その巡礼を制覇したバスターの名は何と申す?」
退室しようとした兵士は、もう一度恭しく一礼してから答えた。
「かの亡国、風の王国の出身、スレイヤーボレアリスと名乗っておりました」
国名を聞いた途端、再びどよめきが広がる。
その中で、フラームは静かに目を細めた。
そのスレイヤーの名前には覚えがある。
ボレアリス……。バスター承認試験で、あのタウケティを破った女、か……。確かタウケティは、その女には蒼龍に通じる力を秘めていると言っていたな。
「ふ、くくく……。そうか、遂にここまでたどり着いたか」
フラームは嬉しそうに愉悦を漏らす。
「その者に伝えろ。十分に休息を取った後、俺のへ来いと。何時でも好きな時に会ってやろう。それとそいつには協会からの使いと、おそらくアンタレス家のせがれが一緒にいるはずだ。そいつらも一緒に呼んでやれ」
そう命じられた兵士は深く一礼し、謁見の間から退室した。
「どうも、ご苦労様でした」
巡礼を終え、何故か案内された客室で待機してきた医者達にアウラ達の容態を診てもらい、彼等に礼を述べてからベイドは静かに扉を閉めた。
室内にはグラフィアスが壁にもたれかかり、複数あふ寝台にルクバットとシェアトが眠っており、その二人の間で、アウラが祈るような姿で椅子に腰掛けている。
国内を散策し、時間になって城に戻ってきたベイドとグラフィアスは、最初事態を把握出来ないでいたが、フォーマルハウトの説明により、この国が行っている、恐ろしい巡礼内容を知った。
不幸にもシェアトとルクバットはその力を目の当たりにし、今に至るようだ。
「医者が言うには、二人共特に異常は見られないそうです。貴女も少しは休んだらどうですか?一番ダメージを蓄積しているのは貴女なんですから」
アウラを気遣ってそう声を掛けるが、彼女はうなだれたまま返事をする。
「私は、大丈夫……。この国を舐めてた。ここには、一人で来るべきだったんだ。そうすれば、こんな事には……。二人がこうなったのは、私のせいだ」
「けど、こいつらがいなかったら、お前は祠から出てこられなかっただろ?」
「……それでも、一緒にいちゃけいけなかったんだよ」
グラフィアスがフォローするも、アウラはそう言って自分を責める。
本人はそう言うが、寝台で眠る二人は穏やかな寝息を立てており、素人目で見てもここから急変するようには思えない。
それだけ、アウラにとってこの国の力は、トラウマなのだろう。
少しの沈黙が降りかけたそんな時、扉が静かに開けられ、フォーマルハウトが入ってきた。
「今回の内容を、協会に報せてきました。近いうちに、何らかの審判が降るはずです。……具合はどうですか?」
その質問には、ベイドが答える。
「三人共、問題は無いそうです。二人も直に目覚めるかと。……ああそうだ。さっきの医者から言伝を預かっていたんでした。皇帝陛下への謁見は、いつでも受け付けるそうです。その際、謁見にはアウラさん意外にフォーさん、そしてグラフィアスにも来て欲しいそうです」
「……俺も?」
「ええ。詳しくは知りませんが、そう言っていました。どうしますか?今行くと言うのなら、二人は私が見ていますよ」
最後にアウラにそう質問すると、ルクバットの前髪を優しく撫でていたアウラは、ゆっくりと立ち上がり、こちらを向いた。
「今すぐ行こう」
「……っ」
その表情を見た瞬間、ぞくりと、背筋に悪寒が走った。
一瞬、身体を切り裂かれたかのような幻覚まで見えた。
感情があるようで無い、恐ろしい表情。
視線は間違い無くこちらをみているのに、明らかに違う物を見ている。
その瞳だけが、今のアウラの心情を物語っているような……。
「いや、アウラさんも少しは休んだ方が……」
「今すぐだ。こんな国、さっさと離れたい」
「待った」
アウラの気迫に圧されそうになっていると、グラフィアスが声を挙げる。
「悪いがちょっと用事がある。急用だ。すぐ終わらせるから、お前もちょっと付き合え」
「……」
「謁見には俺も行かなきゃいけないんだろ?さっさと終わらせてやるから、黙ってついてこい」
アウラの無言の圧にも屈さず、グラフィアスはそう笑って部屋を出て行く。
しばらく黙っていたアウラは苦々しげに舌打ちをし、グラフィアスの後を追った。
「……グラフィアスは、一体何を考えているのでしょうか?」
二人が出て行き、緊張が途切れた事でベイドが呟く。
「分かりません……。でも、今のアウラさんを皇帝には合わせない方が良いとは思います。僕もついて行くので、すみませんが、二人の事をお願いします」
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楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
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