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助けたい

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 変だ。さっきまで涼しかったのに今は灼熱のように暑い。こう言う時って普通は空気が冷えるんじゃ?心の隅で呑気にそう思う僕がいる。しかし、止まるわけにはいかない。こう言う時は一度口を閉じるともう一度口を開くのは難しくなる。この勢いに任せて口を開くしかない。

「こ、この人が助けてって言ってて、僕とリアンを襲ったのは故意じゃないって、だから、助けたくて……」

 僕の口から出てきたのはそんな言葉で。

 終わった。体に釣られて心まで幼児退行した?そもそも説得って何?どんな感じなの?迷ってる人に説得は違う?提案?だめだ、もうわからない。大体会話初心者の僕に説得なんてハードル高すぎたんだ。しかも相手はヴァンだ。もうラスボスレベルだろ。無理無理。最初はコツコツイージーかノーマルでレベル上げしたい派なんだ。レベル1で魔王を倒すとか、そりゃあ憧れるけど、そんなのができるのは一部で僕は平凡な

「ふっ。ドリス、結界を解除しろ。この魔族をギルドへ連れて行くぞ」

 わお、ラスボスクリア。何故か鼻で笑われたけど、殺さないでくれるならいっか。

「ありがとう」

 一応、お礼を言っとく。僕の言葉で決めてくれたようだから。

「助けるわけじゃない、ギルドに連れて行くだけだ」

 助けるのは僕がやるからいいよとは口に出さない。面倒なことになるのだけはごめん被りたいので。

 さて、肝心の魔族の状態は、と。……貧魔?何、その貧血みたいな名前。字的に魔力が足りないってことでいいかな。思ったより簡単そうでよかったと思いながら、魔力を回復させるポーションを創る。

 創ったはいいけど、これをどうやって魔族に使えばいいんだろう。今魔族は化け物の死骸をクリスにどかされて、仰向けのまま空中に浮かんでる。どうなってるかわからないが、ドリスの魔法だろう。

 魔族の周りには、クリスとドリスとヴァンの三人が集まっていて、近付いてポーションをかけることはできそうにない。うーん……降らせてみようかな。

 試しに空中の魔力を回復させるポーションの液体だけを創る。お、うっすらと空に浮かぶ水滴が見える。あとは手を鳴らすだけ。

 パンっと手を叩くと同時に浮いてた水滴たちが降り注ぐ。

「へ?雨っすか?」

「チッ、どこか雨を凌げる場所を探すぞ」

「雨……?」

 うん、しっかりとポーションが魔族に当たってる。よかった、魔族の上あたりにたくさん創っていて。ザーザーと魔族に向かって降り注いでたから、近くにいたヴァンたちもびしょ濡れになった。

 うん、あの、ごめん。


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