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生十話 ペトラがまた死にそうだ
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頑張って考えて、何とか名前を思いついた。早速、少女に訊いてみた。
「子猫の『コネコ』って、どうかな?」
「子猫って、あの魔物の猫の事ですかぁ?」
魔物の猫がどんな外見をしているのか知らない。
猫っていう名前なら、私がいた日本の猫と同じだと思う。
「ああー、多分それだよ。その猫の子供が可愛いから、コネコって名前が良いかなって」
「可愛い……うぅぅ、アイツがいつもそう言って……うぅぅ」
「ごめん‼︎ すぐに他の名前考えるねえ‼︎」
褒め言葉のつもりだったのに、少女には辛い記憶を呼び覚ましてしまう禁句だった。
ロリコンにされた事が頭の中でフラッシュバックしたのか、顔を歪めて泣き出した。
大至急、可愛い以外の名前を考えないといけない。
「くすんっ……いえ、いいです。コネコって可愛いですから。いいんです……」
その言い方は絶対に良くない。絶対に我慢している気持ちしか伝わってこない。
「ご、ごめんね。自分で良い名前を思い付いたら、それを名乗っていいからね」
「は、はい……」
頑張って考えたのに、もう謝るしかなかった。謝るともう自分で考えてよ、と丸投げした。
もう何も考えたくない。こういう大事な事は他人じゃなくて、自分で決めるべきだと思います。
(くすんっ、泣きたいのは私の方だよ)
コネコとペトラには悪いけど、もう面倒事は全部投げ出して逃げ出したい……
そんな気持ちになってしまった。頑張って頑張った先にあるのは喜びとは限らない。
辛いだけかもしれない。
それでも頑張ろうと思うのは、きっとコネコやペトラが私以上に頑張ってきたからだと思う。
私なんかが想像も出来ないほどの、何百回も逃げ出したいと思うほどの、辛い経験をしてきたからだと思う。
ペトラ達の半分なんて言わない。ほんのちょっと一割以下ぐらいは私も頑張りたい。
人生は辛いだけじゃなくて、楽しい事や嬉しい事もあるって教えてあげたい——
カラララ~ン♪
「あっ、お客さんが来たみたいです」
「…………」
(——ねえ‼︎ 何で今なの‼︎ 今やる気出そうとしてたんだよ‼︎ 店出た後に『あっ、閉まってる』でいいよねえ‼︎)
私が頑張ろうしていた矢先に、店の入り口の鐘が軽やかに鳴った。空気の読めない迷惑な客がやってきた。
『休憩中』『外出中』『閉店』の札を扉に掲げずに、扉の鍵も閉め忘れた私の所為だけど、今だけは空気を読んでほしかった。
「しぃー、静かにしててね。居留守にするから」
「は、はぃ……」
人差し指で口元を隠すと、コネコに静かにするようにお願いした。
店の中に店主がいないなら、諦めて帰ってくれるはずだ。
その所為で店の商品が持ち逃げされても、私は全然困らないからお好きにどうぞだ。
「すみませーん! エイアスさん、いませんかぁー! ペトラです!」
(えっ、ペトラ⁉︎ なな何で⁉︎)
静かに居留守にしていたのに、店の方からこっち(扉)に向かって呼びかけてきた。
しかも、その相手がペトラだった。無視するべきか出て行くべきか、正解が分からない。
(あっ、そういう事か!)
何でペトラがこの店に来たのか分かった。
偽医者から余命一日と聞いて、妖精の薬草が手に入ったのかロリコンに聞きに来たんだ。
それで無いと言われて、冒険者ギルドに薬草探しの依頼に行ったというわけだ。
つまりこのまま居留守していれば、次は冒険者ギルドに行くはずだ。
二回目も一回目もそうだったから間違いない。
「すみませーん! ……うーん、いないのかな? こっちにいない時は中にいるんだけど……」
ごめんね、ペトラ。こっちにもいないんだよ。
多分、お空の上に今向かっているところだよ。
ペトラはロリコンに会いたいようだけど、もう彼には永遠に会えない。
遠い遠い所に行っている最中だ。
「あの子、店によく来る子です。アイツがもうすぐあの子が妹になるよって言ってました」
「妹? あの野朗! 姉妹二人と結婚プレイするつもりだったのか!」
ペトラが帰らずにいると、コネコが小声でロリコンの悪行を教えてくれた。
あのロリコンめ。心配するふりして、ラナさんを治す気がまったくなかった。
コンコン、コンコン♪
「すみませーん。エイアスさん、いませんか?」
(早く冒険者ギルドに行けばいいのに……)
五分は経ったと思う。扉の鐘の音は聞こえない。扉を叩く音は聞こえてる。ペトラはまだ帰らないみたいだ。
冒険者ギルドに行って、ロリコンのふりする良い大男に脅されて、泣きながら家に帰ればいいのに……
(あれ? 家に帰った後はどうなるんだっけ……)
——って! 一人で薬草探しに行って、ロリコン熊に殺されてたじゃん‼︎
待っているように言ったのに、一回目は私が買い物している間に森に行ってしまった。
薬屋に薬草無くて、冒険者にも断られたペトラが一人で森に行くのは簡単に想像がつく。
居留守で乗り切ろうと思ったけど、このままじゃペトラがまた死んじゃう。
「子猫の『コネコ』って、どうかな?」
「子猫って、あの魔物の猫の事ですかぁ?」
魔物の猫がどんな外見をしているのか知らない。
猫っていう名前なら、私がいた日本の猫と同じだと思う。
「ああー、多分それだよ。その猫の子供が可愛いから、コネコって名前が良いかなって」
「可愛い……うぅぅ、アイツがいつもそう言って……うぅぅ」
「ごめん‼︎ すぐに他の名前考えるねえ‼︎」
褒め言葉のつもりだったのに、少女には辛い記憶を呼び覚ましてしまう禁句だった。
ロリコンにされた事が頭の中でフラッシュバックしたのか、顔を歪めて泣き出した。
大至急、可愛い以外の名前を考えないといけない。
「くすんっ……いえ、いいです。コネコって可愛いですから。いいんです……」
その言い方は絶対に良くない。絶対に我慢している気持ちしか伝わってこない。
「ご、ごめんね。自分で良い名前を思い付いたら、それを名乗っていいからね」
「は、はい……」
頑張って考えたのに、もう謝るしかなかった。謝るともう自分で考えてよ、と丸投げした。
もう何も考えたくない。こういう大事な事は他人じゃなくて、自分で決めるべきだと思います。
(くすんっ、泣きたいのは私の方だよ)
コネコとペトラには悪いけど、もう面倒事は全部投げ出して逃げ出したい……
そんな気持ちになってしまった。頑張って頑張った先にあるのは喜びとは限らない。
辛いだけかもしれない。
それでも頑張ろうと思うのは、きっとコネコやペトラが私以上に頑張ってきたからだと思う。
私なんかが想像も出来ないほどの、何百回も逃げ出したいと思うほどの、辛い経験をしてきたからだと思う。
ペトラ達の半分なんて言わない。ほんのちょっと一割以下ぐらいは私も頑張りたい。
人生は辛いだけじゃなくて、楽しい事や嬉しい事もあるって教えてあげたい——
カラララ~ン♪
「あっ、お客さんが来たみたいです」
「…………」
(——ねえ‼︎ 何で今なの‼︎ 今やる気出そうとしてたんだよ‼︎ 店出た後に『あっ、閉まってる』でいいよねえ‼︎)
私が頑張ろうしていた矢先に、店の入り口の鐘が軽やかに鳴った。空気の読めない迷惑な客がやってきた。
『休憩中』『外出中』『閉店』の札を扉に掲げずに、扉の鍵も閉め忘れた私の所為だけど、今だけは空気を読んでほしかった。
「しぃー、静かにしててね。居留守にするから」
「は、はぃ……」
人差し指で口元を隠すと、コネコに静かにするようにお願いした。
店の中に店主がいないなら、諦めて帰ってくれるはずだ。
その所為で店の商品が持ち逃げされても、私は全然困らないからお好きにどうぞだ。
「すみませーん! エイアスさん、いませんかぁー! ペトラです!」
(えっ、ペトラ⁉︎ なな何で⁉︎)
静かに居留守にしていたのに、店の方からこっち(扉)に向かって呼びかけてきた。
しかも、その相手がペトラだった。無視するべきか出て行くべきか、正解が分からない。
(あっ、そういう事か!)
何でペトラがこの店に来たのか分かった。
偽医者から余命一日と聞いて、妖精の薬草が手に入ったのかロリコンに聞きに来たんだ。
それで無いと言われて、冒険者ギルドに薬草探しの依頼に行ったというわけだ。
つまりこのまま居留守していれば、次は冒険者ギルドに行くはずだ。
二回目も一回目もそうだったから間違いない。
「すみませーん! ……うーん、いないのかな? こっちにいない時は中にいるんだけど……」
ごめんね、ペトラ。こっちにもいないんだよ。
多分、お空の上に今向かっているところだよ。
ペトラはロリコンに会いたいようだけど、もう彼には永遠に会えない。
遠い遠い所に行っている最中だ。
「あの子、店によく来る子です。アイツがもうすぐあの子が妹になるよって言ってました」
「妹? あの野朗! 姉妹二人と結婚プレイするつもりだったのか!」
ペトラが帰らずにいると、コネコが小声でロリコンの悪行を教えてくれた。
あのロリコンめ。心配するふりして、ラナさんを治す気がまったくなかった。
コンコン、コンコン♪
「すみませーん。エイアスさん、いませんか?」
(早く冒険者ギルドに行けばいいのに……)
五分は経ったと思う。扉の鐘の音は聞こえない。扉を叩く音は聞こえてる。ペトラはまだ帰らないみたいだ。
冒険者ギルドに行って、ロリコンのふりする良い大男に脅されて、泣きながら家に帰ればいいのに……
(あれ? 家に帰った後はどうなるんだっけ……)
——って! 一人で薬草探しに行って、ロリコン熊に殺されてたじゃん‼︎
待っているように言ったのに、一回目は私が買い物している間に森に行ってしまった。
薬屋に薬草無くて、冒険者にも断られたペトラが一人で森に行くのは簡単に想像がつく。
居留守で乗り切ろうと思ったけど、このままじゃペトラがまた死んじゃう。
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