9 / 70
第九話 子竜山に行ってみた
しおりを挟む
コツコツ、コツコツ。
寝ていると窓を突く音が聞こえてきた。
ピーちゃんが帰ってきたみたいだ。
こんなに長く寝るなんて思わなかった。
ベッドから起きると窓の外を飛ぶ青い鳥を見た。
首から茶色の袋をぶら下げて、両脚に綺麗なエメラルドの小さな脚輪をつけている。
買い物の仕方は教えなくていいみたいだ。だけど、節約は教えないと駄目みたいだ。
あれだと稼いだお金も次の日にはなくなってしまう。
「ピーちゃん、お帰り」
『ただいま。お腹減った』
窓を上に押し開けて、ピーちゃんを部屋の中に迎えてあげた。
お腹減っているみたいだけど、今度からは高い装飾品買わずにご飯買うんだよ。
「はい、木の実でいい?」
『何でもいい』
砕いた木の実とプロテイン入りの牛乳を窓枠に置いた。
『そうだ、お土産ある。今度は間違えなかった』
「今度はって、またどこかに行ってきたの?」
『うん、ニセドラの所に行ってきた。赤い石いっぱい拾ってきた』
「?」
ピーちゃんが何を言っているのかよく分かんないけど、脚輪以外にも色々と聞かないといけない。
ご飯を食べ終わるのを待つと、ピーちゃんに何をしてきたのか聞いたみた。
♢♢♢
家を旅立ったピーちゃんは子竜山に再挑戦したそうだ。
それも冒険者ギルドでクエスト受けずに、勝手に行ったそうだ。
この時点で問題ありそうだけど、今は黙って聞くことにしよう。
『飛ばないドラゴンがいる山、どっち?』
ピーちゃん、山の名前覚えてないでしょ。
子竜山だよ。街の北側にある山だよ。
『ああ、あの偽ドラゴンならあっちにいるよ』
『分かった。行ってみる』
『アイツらの卵は食べるなよ。毒あるからな』
空を飛んでいた鳥の群れに聞いたら教えてくれたそうだ。
ピーちゃん、お土産ってそれじゃないよね? ウンチの次は毒卵なの?
それって友達へのお土産じゃなくて、嫌いな人へのお土産だよ。
別の意味でハラハラ、ドキドキしながらピーちゃんの話を聞き続けた。
目的の子竜山にはすぐにたどり着けたそうだ。
そりゃー街から近い方の山だからね。
さて、無事に子竜山に到着したピーちゃんは空から穴を探したそうだ。
でも、山に開いている穴は見つからなかったらしい。
でも、地面に開いている穴は何個も見つけたそうだ。
ピーちゃん、もう気づいていると思うけど、地面に開いている穴も穴だよ。
子竜山の穴は横じゃなくて、下にあるんだと思うよ。
『あっ、ニセドラ見つけた』
全然気づいてない。別のに気がついた。
地面の穴に茶色い大トカゲを見つけた。
ベッドよりもちょっとだけ小さかったそうだ。
僕の中ではそれは十分大きいって言うよ。
『あっ、丸い石見つけた。持って帰らないと』
巣穴に丸い石を見つけた後は楽勝だったらしい。
ニセドラのいない巣穴から赤い丸石と灰色の楕円石を拾って、ニセドラがやってきたら逃げたそうだ。
それを繰り返して、たくさん石を集めたそうだ。
ピーちゃん、ウンチはいいけど、卵は後で返しに行くんだよ。
もちろん僕に言われる前に冒険者ギルドのお姉さんに言われたそうだ。
「ごめんね、鳥さん。【赤影石】は買い取れるんだけど、卵は無理なの。子供ドラゴンがいなくなると赤影石が取れなくなるでしょ? 魔物を保護するのも冒険者ギルドの仕事なのよ。まあ、討伐対象の魔物には容赦しないんだけどね」
『ふぅ~ん、そうなんだ』
ピーちゃん、また聞いてないでしょ。今、警告されているんだよ。
このままだと討伐対象の魔物になるんだからね。
後で卵は絶対返しに行くんだよ。
「赤影石は買い取らせてもらうわね。それと鳥さんの装備が完成してるわよ。小さいから簡単に作れて助かったそうよ」
お姉さんが収納袋から赤影石を全部取り出すと、一個だけ袋に戻した。
そして、受付の上にエメラルドの指輪を二つ置いた。
「これは魔竜石から取り出した風属性の結晶から作られた【風の指輪】よ。これを脚につければ、今よりも速く飛べるようになるわ」
『えっ、本当? わぁーい、もっと速く飛べるんだ!』
お姉さんが色々説明してくれているけど、ピーちゃん全然聞いてない。
魔竜石、つまりウンチの中には『火・水・風・地』の四種類の属性が残っていて。
灰色ドラゴンが吸収できなかった強い属性が、ウンチと一緒に外に出るそうだ。
ウンチの材料は灰色ドラゴンが食べた魔物の肉や骨だ。
ドラゴンと呼ばれる魔物の胃の中には火炎袋があって、ドロドロに溶かされることで綺麗な丸い石が作られる。
子供ドラゴンにも退化しているけど火炎袋がある。
だから、綺麗な石が作れて、ドラゴンの仲間にされている。
とここまでがお姉さんの説明になる。
もちろんピーちゃんが『こんなこと言ってた気がする』と言っているだけで本当に言ったかは分からない。
もちろん僕もピーちゃんが鳥なので、記憶力がそんなに良いとは思っていない。
あとで自分で調べて確認するのが僕の冒険だ。
「ヒヒヒヒ。採取しか出来ねえとは、とんだチキン野朗だな。おっと正真正銘のチキンだったな」
お金と風の指輪を貰って帰ろうとしたら、意地悪そうな男が扉を塞いで言ってきたそうだ。
『帰るから退いて』
勇気と行動力のあるピーちゃんは、ハッキリと言ってやったそうだ。
「ああ、退いてやりますよ。一人じゃ扉も開けられねえ、飛んで逃げるだけしか出来ねえ腰抜けチキンが。今度から俺が扉を開けてやるよ。一回小金貨一枚だ。鳥のくせに楽して稼ぎやがって。俺にも楽に稼がせてくれよな」
『ぐぅぅぅ!』
意地悪な男が扉から退いたので、ピーちゃんは扉を全力で押したそうだ。
男が話している間も全力で押し続けたそうだ。
……ピーちゃん。お金払ってないよね?
寝ていると窓を突く音が聞こえてきた。
ピーちゃんが帰ってきたみたいだ。
こんなに長く寝るなんて思わなかった。
ベッドから起きると窓の外を飛ぶ青い鳥を見た。
首から茶色の袋をぶら下げて、両脚に綺麗なエメラルドの小さな脚輪をつけている。
買い物の仕方は教えなくていいみたいだ。だけど、節約は教えないと駄目みたいだ。
あれだと稼いだお金も次の日にはなくなってしまう。
「ピーちゃん、お帰り」
『ただいま。お腹減った』
窓を上に押し開けて、ピーちゃんを部屋の中に迎えてあげた。
お腹減っているみたいだけど、今度からは高い装飾品買わずにご飯買うんだよ。
「はい、木の実でいい?」
『何でもいい』
砕いた木の実とプロテイン入りの牛乳を窓枠に置いた。
『そうだ、お土産ある。今度は間違えなかった』
「今度はって、またどこかに行ってきたの?」
『うん、ニセドラの所に行ってきた。赤い石いっぱい拾ってきた』
「?」
ピーちゃんが何を言っているのかよく分かんないけど、脚輪以外にも色々と聞かないといけない。
ご飯を食べ終わるのを待つと、ピーちゃんに何をしてきたのか聞いたみた。
♢♢♢
家を旅立ったピーちゃんは子竜山に再挑戦したそうだ。
それも冒険者ギルドでクエスト受けずに、勝手に行ったそうだ。
この時点で問題ありそうだけど、今は黙って聞くことにしよう。
『飛ばないドラゴンがいる山、どっち?』
ピーちゃん、山の名前覚えてないでしょ。
子竜山だよ。街の北側にある山だよ。
『ああ、あの偽ドラゴンならあっちにいるよ』
『分かった。行ってみる』
『アイツらの卵は食べるなよ。毒あるからな』
空を飛んでいた鳥の群れに聞いたら教えてくれたそうだ。
ピーちゃん、お土産ってそれじゃないよね? ウンチの次は毒卵なの?
それって友達へのお土産じゃなくて、嫌いな人へのお土産だよ。
別の意味でハラハラ、ドキドキしながらピーちゃんの話を聞き続けた。
目的の子竜山にはすぐにたどり着けたそうだ。
そりゃー街から近い方の山だからね。
さて、無事に子竜山に到着したピーちゃんは空から穴を探したそうだ。
でも、山に開いている穴は見つからなかったらしい。
でも、地面に開いている穴は何個も見つけたそうだ。
ピーちゃん、もう気づいていると思うけど、地面に開いている穴も穴だよ。
子竜山の穴は横じゃなくて、下にあるんだと思うよ。
『あっ、ニセドラ見つけた』
全然気づいてない。別のに気がついた。
地面の穴に茶色い大トカゲを見つけた。
ベッドよりもちょっとだけ小さかったそうだ。
僕の中ではそれは十分大きいって言うよ。
『あっ、丸い石見つけた。持って帰らないと』
巣穴に丸い石を見つけた後は楽勝だったらしい。
ニセドラのいない巣穴から赤い丸石と灰色の楕円石を拾って、ニセドラがやってきたら逃げたそうだ。
それを繰り返して、たくさん石を集めたそうだ。
ピーちゃん、ウンチはいいけど、卵は後で返しに行くんだよ。
もちろん僕に言われる前に冒険者ギルドのお姉さんに言われたそうだ。
「ごめんね、鳥さん。【赤影石】は買い取れるんだけど、卵は無理なの。子供ドラゴンがいなくなると赤影石が取れなくなるでしょ? 魔物を保護するのも冒険者ギルドの仕事なのよ。まあ、討伐対象の魔物には容赦しないんだけどね」
『ふぅ~ん、そうなんだ』
ピーちゃん、また聞いてないでしょ。今、警告されているんだよ。
このままだと討伐対象の魔物になるんだからね。
後で卵は絶対返しに行くんだよ。
「赤影石は買い取らせてもらうわね。それと鳥さんの装備が完成してるわよ。小さいから簡単に作れて助かったそうよ」
お姉さんが収納袋から赤影石を全部取り出すと、一個だけ袋に戻した。
そして、受付の上にエメラルドの指輪を二つ置いた。
「これは魔竜石から取り出した風属性の結晶から作られた【風の指輪】よ。これを脚につければ、今よりも速く飛べるようになるわ」
『えっ、本当? わぁーい、もっと速く飛べるんだ!』
お姉さんが色々説明してくれているけど、ピーちゃん全然聞いてない。
魔竜石、つまりウンチの中には『火・水・風・地』の四種類の属性が残っていて。
灰色ドラゴンが吸収できなかった強い属性が、ウンチと一緒に外に出るそうだ。
ウンチの材料は灰色ドラゴンが食べた魔物の肉や骨だ。
ドラゴンと呼ばれる魔物の胃の中には火炎袋があって、ドロドロに溶かされることで綺麗な丸い石が作られる。
子供ドラゴンにも退化しているけど火炎袋がある。
だから、綺麗な石が作れて、ドラゴンの仲間にされている。
とここまでがお姉さんの説明になる。
もちろんピーちゃんが『こんなこと言ってた気がする』と言っているだけで本当に言ったかは分からない。
もちろん僕もピーちゃんが鳥なので、記憶力がそんなに良いとは思っていない。
あとで自分で調べて確認するのが僕の冒険だ。
「ヒヒヒヒ。採取しか出来ねえとは、とんだチキン野朗だな。おっと正真正銘のチキンだったな」
お金と風の指輪を貰って帰ろうとしたら、意地悪そうな男が扉を塞いで言ってきたそうだ。
『帰るから退いて』
勇気と行動力のあるピーちゃんは、ハッキリと言ってやったそうだ。
「ああ、退いてやりますよ。一人じゃ扉も開けられねえ、飛んで逃げるだけしか出来ねえ腰抜けチキンが。今度から俺が扉を開けてやるよ。一回小金貨一枚だ。鳥のくせに楽して稼ぎやがって。俺にも楽に稼がせてくれよな」
『ぐぅぅぅ!』
意地悪な男が扉から退いたので、ピーちゃんは扉を全力で押したそうだ。
男が話している間も全力で押し続けたそうだ。
……ピーちゃん。お金払ってないよね?
970
お気に入りに追加
1,303
あなたにおすすめの小説

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈

家族に無能と追放された冒険者、実は街に出たら【万能チート】すぎた、理由は家族がチート集団だったから
ハーーナ殿下
ファンタジー
冒険者を夢見る少年ハリトは、幼い時から『無能』と言われながら厳しい家族に鍛えられてきた。無能な自分は、このままではダメになってしまう。一人前の冒険者なるために、思い切って家出。辺境の都市国家に向かう。
だが少年は自覚していなかった。家族は【天才魔道具士】の父、【聖女】の母、【剣聖】の姉、【大魔導士】の兄、【元勇者】の祖父、【元魔王】の祖母で、自分が彼らの万能の才能を受け継いでいたことを。
これは自分が無能だと勘違いしていた少年が、滅亡寸前の小国を冒険者として助け、今までの努力が実り、市民や冒険者仲間、騎士、大商人や貴族、王女たちに認められ、大活躍していく逆転劇である。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

家族に辺境追放された貴族少年、実は天職が《チート魔道具師》で内政無双をしていたら、有能な家臣領民が続々と移住してきて本家を超える国力に急成長
ハーーナ殿下
ファンタジー
貴族五男ライルは魔道具作りが好きな少年だったが、無理解な義理の家族に「攻撃魔法もろくに使えない無能者め!」と辺境に追放されてしまう。ライルは自分の力不足を嘆きつつ、魔物だらけの辺境の開拓に一人で着手する。
しかし家族の誰も知らなかった。実はライルが世界で一人だけの《チート魔道具師》の才能を持ち、規格外な魔道具で今まで領地を密かに繁栄させていたことを。彼の有能さを知る家臣領民は、ライルの領地に移住開始。人の良いライルは「やれやれ、仕方がないですね」と言いながらも内政無双で受け入れ、口コミで領民はどんどん増えて栄えていく。
これは魔道具作りが好きな少年が、亡国の王女やエルフ族長の娘、親を失った子どもたち、多くの困っている人を受け入れ助け、規格外の魔道具で大活躍。一方で追放した無能な本家は衰退していく物語である。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。

異世界に行けるようになったんだが自宅に令嬢を持ち帰ってしまった件
シュミ
ファンタジー
高二である天音 旬はある日、女神によって異世界と現実世界を行き来できるようになった。
旬が異世界から現実世界に帰る直前に転びそうな少女を助けた結果、旬の自宅にその少女を持ち帰ってしまった。その少女はリーシャ・ミリセントと名乗り、王子に婚約破棄されたと話し───!?

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉
まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。
貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる