病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?

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第十話 地獄の猛特訓開始

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『アイツ、ぶっ飛ばす』

 お金払わずに扉が開いた瞬間に逃げたそうだ。でも、ピーちゃんめちゃ怒っている。
 僕の部屋の扉に体当たりしている。扉壊したら、今度は僕とお母さんが怒るからね。

「ピーちゃん、体当たりするならこっちにして」
『分かった。そいつ、ぶっ飛ばす』

 枕を両手で持って構えるとピーちゃんに言った。
 扉を壊せるとは思えないけど、念の為だ。

『ぶっ飛ばす。ぶっ飛ばす』

 ポスッ、ポスッと乾いた音と軽い衝撃が枕からあがってくる。
 ピーちゃんには悪いけど、ぶっ飛ばすのは木から落ちてくる枯葉で我慢した方がいいよ。

『ふぅー、今日はこの辺で勘弁してやる』

 どこで覚えた台詞か知らないけど、ピーちゃんは満足したみたいだ。
 翼で頭をひと撫ですると枕体当たりをやめた。

「……ピーちゃん、もういいの?」

 でも、この程度で終わるなんてありえない。
 僕の友達が馬鹿にされたんだ。馬鹿にされたまま終われない。

「ピーちゃん、悔しくないの? 悔しくないの! 僕は悔しいよ‼︎」
『ピィ、ピィー』

 ピーちゃん大特訓開始だ。目標は『一人で扉開け』だ。
 手始めに窓を一人で開けられるようにする。
 窓枠にピーちゃんを立たせると、くちばしで窓を押し開けるように言った。

『ぐぅぅぅ!』
「ピーちゃん、頑張って! ピーちゃんならやれるよ!」

 やれば出来る。やらなきゃ出来ない。
 窓を押し上げようと一生懸命なピーちゃんを僕も一生懸命応援する。
 多分開けられないと思うけど、そんなこと最初から分かっている。
 努力は裏切らない。必ず結果は出るはずだ。

『ピィー、ピィー、し、死んじゃう……』
「まだ休憩時間には早すぎるよ! 次は枕体当たり千回だ! ピーちゃん、行くよ!」

 一ミリも上げられずに窓枠で倒れているけど、まだまだこんなもんじゃない。
 地獄の猛特訓だ。ピーちゃんには悪いけど、僕、今日、鬼になるからね。

 ♢♢♢

 それから三日三晩、僕とピーちゃんの猛特訓は続いた。
 でも、そろそろいいよね。
 ピーちゃん、もう気は済んだよね? 僕、疲れちゃった。

【種族:ブルーバード レベル10 筋力12 耐久8 敏捷20 器用5 知力5 魔力3 運4 残りポイント6】

『アイツ、ぶっ飛ばす』

 疲れている僕とは違い、ピーちゃんのやる気はみなぎっている。
 猛特訓の結果はピーちゃんの能力にハッキリ出ている。
 最後にポイント6を筋力に分けた。これで筋力18だ。
 もう誰にも腰抜けチキン野朗とは言わせない。

 窓を押し上げて飛び立ったピーちゃんを窓を押し下げて見送ると、ベッドに横になった。
 男になって帰ってくるんだよ、ピーちゃん。

 ♢♢♢

 コツコツ、コツコツ。
 それから二日後。窓を突く音が聞こえてきた。
 ベッドから起き上がると窓を見た。

「……」

 窓の外には包帯だらけのミイラピーちゃんがヨロヨロ飛んでいた。
 何も言わなくても分かるよ、ピーちゃん。頑張ったんだね。

 窓を開けるとピーちゃんが入ってきた。
 窓枠に横になると言ってきた。

『ちょっと転んだ。転んだだけだから』
「そうなんだ。薬草取ってくるね」

 何も言うつもりはないらしい。僕も何も聞かないよ。
 行儀は悪いけど窓から外に出ると、花壇の薬草を一本取ってきた。
 扉を開けて、廊下歩いて、玄関開けるよりも、窓の方が早い。

 薬草を食べ終わるとピーちゃんは寝てしまった。
 お母さんが「凄い薬草が出来た!」と喜んでいたから、すぐに良くなると思うよ。
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