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第1章
第11話、最初の街へ
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「——なんてパターンもあるかな」
「まじですか!? 」
「ユウトなら大丈夫だよ! 」
街へ向かう道中、真琴から色々と話を聞いていた。
その中の一つに、街に着いたらまずは冒険者ギルドへ行って冒険者登録をする事が先決であると。
そして登録の際お金がかかる事が一般的なので、その支払いを済ませて残ったお金で宿を確保し、さらにお金が余るようなら装備とかの必需品を整える事に。
そうそう、冒険者登録の時に適性試験がある場合もあるそうなので、それを聞いて少しテンションが落ちていたりもします。
そんなこんなで初めての街、イドの街へと着いた。
と言ってもまだ街へと入るための審査? の順番待ちをしている最中だけど。
俺たちは馬車が通れる程の大きな門の横に設置された、人ひとりが通れるぐらいの大きさの開け放たれた扉の前に出来ている行列に並ぶ。
回転率はそこそこ良く、現在俺たちを含め6人並んでいるのだけど、こうしている間にも5人になった。
どうやら門番である壮年の騎士と簡単な会話をしたあと、お金を支払い街の中へと通してもらっているようだ。
先ほど拝借した革袋の中を確認する。
釘みたいな棒と一緒に硬貨っぽいモノも入ってるし、これでなんとかなるかな?
そうこう考えていると——。
『クゥ~ン』
気がつけば、前に並ぶ冒険者風のおじさんの隣で大人しく伏せで待っていた大型の老犬が、俺を見ながら鼻を鳴らしていた。
このワンちゃん、働き者である。
身体の両サイドに重そうなバックを下げているため、恐らくこの街に着くまでずっとこれらを運んで来た事が容易に想像出来た。
お疲れ様。
そう念じながらワンちゃんに微笑む。
『ワフゥンッ』
するとワンちゃんが『お前もな』っと答えてきた気がしたため、思わず吹いてしまう。
「また会話をしているのかな? 」
「っあぁ、ちょっとね」
真琴がやれやれと言った感じで苦笑したあと、少し真面目な顔つきになる。
「それよりユウト、さっきからみんな、カードを提示してるんだよね」
「えっ? 」
言われて現在審査をうけている人を見ていると、確かにカードの提示を行なった。
あれ?
最初に見た人はお金を払ってたと思ったんだけど。
なんか急に不安が広がってくる。
前に並ぶワンちゃんを連れたおじさんもカードを提示して門をくぐった。
「次! 」
ついに俺たちの順番だ。
変に意識しないようにしていたのだけど、思わず緊張が走る。
俺たちを見据える衛兵の動きが止まったから。
「……顔は見えるようにするんだ」
そう言えば、俺たちは顔と学生服を隠すようにして、賊から奪ったフード付のマントを羽織っていたのだった。
フードをズラし顔を曝け出す。
「ダークエルフなのか?
それに二人とも奇抜な格好だな」
どう答えよう?
取り敢えずダークエルフではないことは言ったほうが良いのかな?
「ダークエルフではないよ、彼の肌は生まれつきなんだ。ほらっ、耳も尖ってないだろ? 」
真琴だ。なにも臆する事なくペラペラと返答をする。
「そうか……」
すると壮年の騎士は少し考え込んだのち顔を上げる。
「カードの類は持ってるか? 」
「いや、持ってないよ」
「それなら一人500ルガだが払えるか? 」
そこで真琴が沈黙した。
もしかして真琴、ピンチ!?
「たっ、多分あると思います! 」
思わず声が出ていた。
そして自身で言った言葉が、あまりにも突っ込みどころ満載な事に今更ながらに気付く。
隣の真琴もあちゃーってな感じになっちゃってるし。
壮年の騎士はそこでこちらのソウルリストを確認したようで、呟くように深淵の覚醒者と超絶倫の言葉を口にした。
えぇーい、こうなればヤケクソだ!
袋を開き中身を見せる。
「この中に500ルガありますか? 」
「……その金はどうしたんだ? 」
うぐっ。
……えっ、えぇーい!
ここで怯むな!
「道中襲われた盗賊から、慰謝料として貰いました! 」
「襲われた? 見る限り素手のようだが、武器も持たずして返り討ちにしたのか? 」
「その、運が良くて!
そうそう、盗賊の一人はガーレンって奴でした! 」
「冒険者崩れのガーレンか。
確かにこの一帯を縄張りにしている噂は聞くが——」
するとそこに遠巻きにこちらを見ていた門兵の一人が駆けつける。
「ナーガルさん、どうしたのですか? 」
するとナーガルと呼ばれた壮年の騎士が首を横に振る。
「いや、なんでもない」
そして俺の方に向き直る。
「500ルガ、二人で千貰うぞ」
そう言いながら俺が持つ袋から銀貨2枚を抜き取ると、さあ行った行ったという感じで手を振った。
「あの、良いのですか? 」
すると目尻にシワを作る。
「なんだその質問は?
俺は真面目な門番だから、街を守るという仕事以外の事はやらない主義でね。
だからお前が悪い奴ではない事がわかればそれでいいんだよ」
ナーガルさんが同僚の方へ視線だけを送る。
「ヤジル、簡単に街の説明をしてやれ。
それと貨幣に関してもな」
「はっ、はい! 」
そこでナーガルさんは、真琴を正面から見据えた。
「冒険者になるのか? 」
「あぁ、そうだよ」
「無理はするなよ」
真琴がニヤリと笑う。
「言われなくても」
それから俺たちはヤジルさんから説明を受けたのだけど、この人かなりのお喋り好きなようで、事細かに解説をしてくれた。
その時飲み水をタダで貰えたのが嬉しかったりする。
このイドの街、水源が豊富で街中を走る小川の他に、井戸がそこかしこにあるそうだ。
またこの街の住人と商売をしに来た人、そしてこの街で依頼を受注している冒険者はこの通行税の支払いは発生しない。
仮にカード類がなく無一文で来たとしても、金目の物を持っていれば商人を呼んできてくれるそうだ。
しかしそのような状態で物を売ったとしても、足元を見られて買いたたかれるらしいので、おすすめしない事を苦笑混じりで教えてくれた。
またこの世界の貨幣の単位はルガで統一されていた。
感覚としては円と同じに考えて問題なさそうなルガであるのだが、硬貨の形や大きさまでは同じとはいかなかった。
ちょうどマッチ棒くらいの長さと太さの銅棒《・・》が10ルガ。
五百円玉硬貨と同じ大きさと厚さの銅貨《・・》が50ルガ。
素材が銀に代わり、銀棒《・・》100ルガ、銀貨《・・》500ルガ。
そしてスマホの大きさと厚みがある銀の大判である銀判《・・》が1000ルガ。
次に金貨《・・》が1万ルガ、金判《・・》が10万ルガ。
最後に素材がプラチナになり白金判《・・》なんて物があるそうなのだけど、それがなんとなんと100万ルガもするらしい。
プラチナまでくると、一般人は見たことすらない人もいるぐらい高価で、このくらいの街では流通してない事が普通らしい。
またここらの地方の古くからの習わしで、買い物の際基本お釣りが貰えない仕様らしい。
お金持ちのお釣りはいらないよ、ってヤツが標準装備なのだ。
まぁ仲が良ければ、お店によってはお釣りが貰える事もあるそうなんだけど、両替屋なんてものが近辺の街でも何軒もあったりするのはそのためらしい。
ちなみに両替屋の販売員募集と言う依頼がギルド掲示板に張り出される事があるそうなんだけど、防犯の意味でもCランク冒険者の人からしか仕事に就けない規則になっているそうな。
そして現在、通行税の支払いを行ったので、手元には銀判21枚2万千ルガ、銀貨8枚4千ルガ、銀棒22本2千2百ルガ、銅貨7枚350ルガ、銅棒30本300ルガ、と計27850ルガが残っていた。
地味にこれらが重いのがネックである。
そんなこんなで目的地である冒険者ギルドへと向かっているのだけど、行き交う人や露店の売り子、建物の二階の窓から身を乗り出して洗濯物を取り込んでいる人などが見え、この街が多くの人で溢れ活気に満ち満ちているのがわかった。
このイドの街で中規模の街だそうだから、大きな街やこの国の王都なんてのになったら、凄い人が集まって来てるんだろうなと想像が出来る。
「ユウト、さっきはかなり怪しまれてたね」
「……やっぱり? 」
「でもなんで簡単に通してくれたんだろう? 」
「ナーガルさんが良い人だったから? 」
「それもあるんだろうけど、……なにか引っかかるんだよね」
と、そうこうしていると、街についた達成感や安堵感からか、おなかが急に早く食べ物をよこせと叫びだした。
そしてお腹が空いて空いて、胃液が喉まで上がってきたところで、真琴にその事を話して予定変更をして貰うことに。
「真琴、ごめん」
「いやボクもおなかが空いてきてたしね。
それに食事という一番大切な事に気づかずに話を進めてしまってたから、ボクの方こそ謝らなければいけないよ」
「ちなみに、異世界での定番の食べ物屋さんって言ったら、どんなお店になるの? 」
「それは酒場だね。
あそこは出会いやハプニング、イベントの宝庫だし、異世界の食材が出てきて胸躍る、押さえとかないといけない異世界ポイントの一つでもあるよ」
そう言う真琴の瞳は輝いている。
たしかに異国の料理には興味があるし、それが異世界になればなおさらである。
ただそれと同時にハズレも覚悟しておかないといけないかなとも思う。
なんてったって、地球でも美味しいもので溢れている日本にずっと住んでいたわけで、舌は知らず知らずのうちに肥えてしまっているだろうから。
そこで遠目にある看板に、ナイフとフォーク、そしてビールジョッキのオブジェクトを貼り付けたお店を見つけた。
「この先の、あそこなんてどう? 」
「うん、覗いてみようか」
そうして連なる建物の一つである、酒場の前へと足を運んだ。
キィィっと軋む戸を開けると、店内は昼間にも関わらず薄暗かった。
床を埋め尽くすように置かれた丸テーブルの中央には、灯りが灯っていないランプが置かれているので、今の時間は節約でつけていないのではと思う。
またその事から、明かりを求めて窓辺に多くのお客さんが座っており、奥に行けば行くほど人は疎らになっているっぽい。
俺たちはお尋ね者ってわけではないけど、人目は気になるので奥の方の席へと向かった。
そして丸テーブルの下に収納されていた椅子を引っ張り出して座ると、テーブル上に乱雑に置かれていたメニュー表を手に取り眺める。
そこには肉料理とサラダ関係らしい物が多く載っているのだけど、メガコンドルの手羽先などの聞いたこともない動物名らしきものが色々と載っているため、食欲よりも好奇心が刺激せれていく。
真琴はというと、丸々とデカイ肉にかぶりつきたかったみたいだけど、メニュー表にあったそれらしい肉は一つ3480ルガもしたので即却下。
しかし結局何を頼めばいいのか迷いだしてしまい、少しでも節約という事で探していると、580ルガの日替わりランチと言う他のメニューよりもお得そうなのが目につく。
そしてちょうどこのお店のウエイトレスさんが水の入った木製のコップをお盆に乗せ二つ持ってきたので、二人分の注文を済ませた。
程なくして運ばれてきたランチには、丸いパンに野菜スープとサラダ、そしてタイガースネークと言うなんか凄そうな動物のステーキ肉があり、味はそこそこだったのだけど量が素晴らしくおなかは一杯になったのであった。
「まじですか!? 」
「ユウトなら大丈夫だよ! 」
街へ向かう道中、真琴から色々と話を聞いていた。
その中の一つに、街に着いたらまずは冒険者ギルドへ行って冒険者登録をする事が先決であると。
そして登録の際お金がかかる事が一般的なので、その支払いを済ませて残ったお金で宿を確保し、さらにお金が余るようなら装備とかの必需品を整える事に。
そうそう、冒険者登録の時に適性試験がある場合もあるそうなので、それを聞いて少しテンションが落ちていたりもします。
そんなこんなで初めての街、イドの街へと着いた。
と言ってもまだ街へと入るための審査? の順番待ちをしている最中だけど。
俺たちは馬車が通れる程の大きな門の横に設置された、人ひとりが通れるぐらいの大きさの開け放たれた扉の前に出来ている行列に並ぶ。
回転率はそこそこ良く、現在俺たちを含め6人並んでいるのだけど、こうしている間にも5人になった。
どうやら門番である壮年の騎士と簡単な会話をしたあと、お金を支払い街の中へと通してもらっているようだ。
先ほど拝借した革袋の中を確認する。
釘みたいな棒と一緒に硬貨っぽいモノも入ってるし、これでなんとかなるかな?
そうこう考えていると——。
『クゥ~ン』
気がつけば、前に並ぶ冒険者風のおじさんの隣で大人しく伏せで待っていた大型の老犬が、俺を見ながら鼻を鳴らしていた。
このワンちゃん、働き者である。
身体の両サイドに重そうなバックを下げているため、恐らくこの街に着くまでずっとこれらを運んで来た事が容易に想像出来た。
お疲れ様。
そう念じながらワンちゃんに微笑む。
『ワフゥンッ』
するとワンちゃんが『お前もな』っと答えてきた気がしたため、思わず吹いてしまう。
「また会話をしているのかな? 」
「っあぁ、ちょっとね」
真琴がやれやれと言った感じで苦笑したあと、少し真面目な顔つきになる。
「それよりユウト、さっきからみんな、カードを提示してるんだよね」
「えっ? 」
言われて現在審査をうけている人を見ていると、確かにカードの提示を行なった。
あれ?
最初に見た人はお金を払ってたと思ったんだけど。
なんか急に不安が広がってくる。
前に並ぶワンちゃんを連れたおじさんもカードを提示して門をくぐった。
「次! 」
ついに俺たちの順番だ。
変に意識しないようにしていたのだけど、思わず緊張が走る。
俺たちを見据える衛兵の動きが止まったから。
「……顔は見えるようにするんだ」
そう言えば、俺たちは顔と学生服を隠すようにして、賊から奪ったフード付のマントを羽織っていたのだった。
フードをズラし顔を曝け出す。
「ダークエルフなのか?
それに二人とも奇抜な格好だな」
どう答えよう?
取り敢えずダークエルフではないことは言ったほうが良いのかな?
「ダークエルフではないよ、彼の肌は生まれつきなんだ。ほらっ、耳も尖ってないだろ? 」
真琴だ。なにも臆する事なくペラペラと返答をする。
「そうか……」
すると壮年の騎士は少し考え込んだのち顔を上げる。
「カードの類は持ってるか? 」
「いや、持ってないよ」
「それなら一人500ルガだが払えるか? 」
そこで真琴が沈黙した。
もしかして真琴、ピンチ!?
「たっ、多分あると思います! 」
思わず声が出ていた。
そして自身で言った言葉が、あまりにも突っ込みどころ満載な事に今更ながらに気付く。
隣の真琴もあちゃーってな感じになっちゃってるし。
壮年の騎士はそこでこちらのソウルリストを確認したようで、呟くように深淵の覚醒者と超絶倫の言葉を口にした。
えぇーい、こうなればヤケクソだ!
袋を開き中身を見せる。
「この中に500ルガありますか? 」
「……その金はどうしたんだ? 」
うぐっ。
……えっ、えぇーい!
ここで怯むな!
「道中襲われた盗賊から、慰謝料として貰いました! 」
「襲われた? 見る限り素手のようだが、武器も持たずして返り討ちにしたのか? 」
「その、運が良くて!
そうそう、盗賊の一人はガーレンって奴でした! 」
「冒険者崩れのガーレンか。
確かにこの一帯を縄張りにしている噂は聞くが——」
するとそこに遠巻きにこちらを見ていた門兵の一人が駆けつける。
「ナーガルさん、どうしたのですか? 」
するとナーガルと呼ばれた壮年の騎士が首を横に振る。
「いや、なんでもない」
そして俺の方に向き直る。
「500ルガ、二人で千貰うぞ」
そう言いながら俺が持つ袋から銀貨2枚を抜き取ると、さあ行った行ったという感じで手を振った。
「あの、良いのですか? 」
すると目尻にシワを作る。
「なんだその質問は?
俺は真面目な門番だから、街を守るという仕事以外の事はやらない主義でね。
だからお前が悪い奴ではない事がわかればそれでいいんだよ」
ナーガルさんが同僚の方へ視線だけを送る。
「ヤジル、簡単に街の説明をしてやれ。
それと貨幣に関してもな」
「はっ、はい! 」
そこでナーガルさんは、真琴を正面から見据えた。
「冒険者になるのか? 」
「あぁ、そうだよ」
「無理はするなよ」
真琴がニヤリと笑う。
「言われなくても」
それから俺たちはヤジルさんから説明を受けたのだけど、この人かなりのお喋り好きなようで、事細かに解説をしてくれた。
その時飲み水をタダで貰えたのが嬉しかったりする。
このイドの街、水源が豊富で街中を走る小川の他に、井戸がそこかしこにあるそうだ。
またこの街の住人と商売をしに来た人、そしてこの街で依頼を受注している冒険者はこの通行税の支払いは発生しない。
仮にカード類がなく無一文で来たとしても、金目の物を持っていれば商人を呼んできてくれるそうだ。
しかしそのような状態で物を売ったとしても、足元を見られて買いたたかれるらしいので、おすすめしない事を苦笑混じりで教えてくれた。
またこの世界の貨幣の単位はルガで統一されていた。
感覚としては円と同じに考えて問題なさそうなルガであるのだが、硬貨の形や大きさまでは同じとはいかなかった。
ちょうどマッチ棒くらいの長さと太さの銅棒《・・》が10ルガ。
五百円玉硬貨と同じ大きさと厚さの銅貨《・・》が50ルガ。
素材が銀に代わり、銀棒《・・》100ルガ、銀貨《・・》500ルガ。
そしてスマホの大きさと厚みがある銀の大判である銀判《・・》が1000ルガ。
次に金貨《・・》が1万ルガ、金判《・・》が10万ルガ。
最後に素材がプラチナになり白金判《・・》なんて物があるそうなのだけど、それがなんとなんと100万ルガもするらしい。
プラチナまでくると、一般人は見たことすらない人もいるぐらい高価で、このくらいの街では流通してない事が普通らしい。
またここらの地方の古くからの習わしで、買い物の際基本お釣りが貰えない仕様らしい。
お金持ちのお釣りはいらないよ、ってヤツが標準装備なのだ。
まぁ仲が良ければ、お店によってはお釣りが貰える事もあるそうなんだけど、両替屋なんてものが近辺の街でも何軒もあったりするのはそのためらしい。
ちなみに両替屋の販売員募集と言う依頼がギルド掲示板に張り出される事があるそうなんだけど、防犯の意味でもCランク冒険者の人からしか仕事に就けない規則になっているそうな。
そして現在、通行税の支払いを行ったので、手元には銀判21枚2万千ルガ、銀貨8枚4千ルガ、銀棒22本2千2百ルガ、銅貨7枚350ルガ、銅棒30本300ルガ、と計27850ルガが残っていた。
地味にこれらが重いのがネックである。
そんなこんなで目的地である冒険者ギルドへと向かっているのだけど、行き交う人や露店の売り子、建物の二階の窓から身を乗り出して洗濯物を取り込んでいる人などが見え、この街が多くの人で溢れ活気に満ち満ちているのがわかった。
このイドの街で中規模の街だそうだから、大きな街やこの国の王都なんてのになったら、凄い人が集まって来てるんだろうなと想像が出来る。
「ユウト、さっきはかなり怪しまれてたね」
「……やっぱり? 」
「でもなんで簡単に通してくれたんだろう? 」
「ナーガルさんが良い人だったから? 」
「それもあるんだろうけど、……なにか引っかかるんだよね」
と、そうこうしていると、街についた達成感や安堵感からか、おなかが急に早く食べ物をよこせと叫びだした。
そしてお腹が空いて空いて、胃液が喉まで上がってきたところで、真琴にその事を話して予定変更をして貰うことに。
「真琴、ごめん」
「いやボクもおなかが空いてきてたしね。
それに食事という一番大切な事に気づかずに話を進めてしまってたから、ボクの方こそ謝らなければいけないよ」
「ちなみに、異世界での定番の食べ物屋さんって言ったら、どんなお店になるの? 」
「それは酒場だね。
あそこは出会いやハプニング、イベントの宝庫だし、異世界の食材が出てきて胸躍る、押さえとかないといけない異世界ポイントの一つでもあるよ」
そう言う真琴の瞳は輝いている。
たしかに異国の料理には興味があるし、それが異世界になればなおさらである。
ただそれと同時にハズレも覚悟しておかないといけないかなとも思う。
なんてったって、地球でも美味しいもので溢れている日本にずっと住んでいたわけで、舌は知らず知らずのうちに肥えてしまっているだろうから。
そこで遠目にある看板に、ナイフとフォーク、そしてビールジョッキのオブジェクトを貼り付けたお店を見つけた。
「この先の、あそこなんてどう? 」
「うん、覗いてみようか」
そうして連なる建物の一つである、酒場の前へと足を運んだ。
キィィっと軋む戸を開けると、店内は昼間にも関わらず薄暗かった。
床を埋め尽くすように置かれた丸テーブルの中央には、灯りが灯っていないランプが置かれているので、今の時間は節約でつけていないのではと思う。
またその事から、明かりを求めて窓辺に多くのお客さんが座っており、奥に行けば行くほど人は疎らになっているっぽい。
俺たちはお尋ね者ってわけではないけど、人目は気になるので奥の方の席へと向かった。
そして丸テーブルの下に収納されていた椅子を引っ張り出して座ると、テーブル上に乱雑に置かれていたメニュー表を手に取り眺める。
そこには肉料理とサラダ関係らしい物が多く載っているのだけど、メガコンドルの手羽先などの聞いたこともない動物名らしきものが色々と載っているため、食欲よりも好奇心が刺激せれていく。
真琴はというと、丸々とデカイ肉にかぶりつきたかったみたいだけど、メニュー表にあったそれらしい肉は一つ3480ルガもしたので即却下。
しかし結局何を頼めばいいのか迷いだしてしまい、少しでも節約という事で探していると、580ルガの日替わりランチと言う他のメニューよりもお得そうなのが目につく。
そしてちょうどこのお店のウエイトレスさんが水の入った木製のコップをお盆に乗せ二つ持ってきたので、二人分の注文を済ませた。
程なくして運ばれてきたランチには、丸いパンに野菜スープとサラダ、そしてタイガースネークと言うなんか凄そうな動物のステーキ肉があり、味はそこそこだったのだけど量が素晴らしくおなかは一杯になったのであった。
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