僕が一目惚れした美少女転校生はもしかしてサキュバスじゃないのか!?

釈 余白(しやく)

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最強の相手と

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 三回戦終了から数日たち準決勝の日がやってきた。今日は公式戦初の県営球場入りだ。そういえばここは初めて咲とデートした球場だから想い出深い。あの時は宮崎ヨシカズ選手と勝負してもらえて、野林監督とも話が出来て、信じられないくらいラッキーな一日だった。

 その咲は残念ながら今日の試合、応援に来ていない。咲だけではなく学校の連中は授業があるので球場へは来ることができなかった。

 それに引き替え…… 帝端豆大付属松白はスタンドへ応援団をよこしている。一応鳴物は禁止なのでうるさすぎると言うわけではないが、一方的な応援で相手のやる気を削ごうとでもいうのだろうか。

 学校からは野球部員の他、マネジャーの由布に顧問である引率の真弓先生だけなので、こちら側のスタンドにはほぼ人がいない。そう思っていたのだけど、実際にはチラホラと高校生くらいの人が座っていた。

 その中には山尻兄妹の姿も有り、僕が気が付くと康子が手を振ってきた。他にも知らない生徒がいたので矢島の対戦相手、北矢島高校の生徒かもしれない。その他に何となく見覚えのあるシルエットが……

 あれは若菜亜美じゃないのか!? 確か犬の散歩のときにあんな感じのパーカーを着て目深にかぶっていた気がする。あの子学校サボって見に来ちゃってるよ!

「お、アレって矢島のエースだろ。隣のは彼女だっけか?
 余裕ぶっこいて偵察デートとは舐められたもんだな」

「いやいや、アレは妹だよ。
 すぐ変な目で見るのおやめろってば」

「いやいや、冗談だよ。
 一年坊たちが固くなってるからほぐしてやろうと思ってな。
 固くするのはよるだけにs」

『パカンッ!!』

 木戸の頭に、厚紙を丸めたメガホンが打ちおろされた。それを見たベンチは一気にほぐれて、大分雰囲気が変わったようだ。狙ってるのか天然なのかわからないけど、木戸のこういうところはありがたい。

「まあそう言うことでよ!
 今日はマネちゃんお勧めの、足の速さを重視した打順にしたからそのつもりでな。
 練習通りに狙いをつけていくことを忘れるんじゃないぞ。
 特にシマは転がすだけでいいんだから良く見て当てていけ!
 倉片とオノケンは左の先発引きずり降ろしてからが出番だ!
 ハカセと木尾は、カズが打ちこまれて出番が来ないことを祈っとけよ!」

「「おおおう!!」」

 ここまで順調に勝ち進んできたからか士気が高い。僕たちにとって、他のどんな高校も、決して勝てない相手とは思えなくなっているのだ。

 心配があるとしたら、練習試合から予選三試合までほぼヒットが出ていない嶋谷と、公式戦初スタメンの飯塚まこっちゃんの一年生二人だ。今はいい表情をしているけど、何かの拍子でリズムが狂わなければいいなと考えてしまう。

 松白の部長と真弓先生がメンバー表を交換し、審判員との注意事項確認の後いよいよ整列だ!

「「よろしくお願いします!」」
「「しまっす!!」」

 お互いに礼をした後、高校の松白が守備についた。人の心配をしている場合じゃない。僕は僕で責任を果たさなければならないのだ、エースとして!

 緊張していると思われそうだが、僕は思わずおでこの前で手を組んで祈るようなしぐさをする。そういや以前木戸に指摘されたから注意しておかないといけないな。そんなことを考えつつ、出がけの出来事を思い返す。


◇◇◇


「残念だけど今日は応援に行かれないわね。
 せっかくキミの出番がやってきたというのに、行かれなくてごめんなさいね」

「いや、咲が悪いわけじゃないじゃん。
 学校もまさか勝つとは思ってないだろうから、授業休んで応援なんて言えないんじゃないかな。
 それくらい今日の相手は強いんだよ」

「でも私の想いくらいは一緒に連れて行ってもらおうかしらね」

 そういうと咲は僕の額にキスをして、それから唇にもキスをしてくれた。

「ありがとう! これで百人力さ。
 昨晩のマッサージも良く効いてるみたいで体が軽いしね!
 不安があるとしたら木戸が何か企んでることくらいかな」

「キミの相棒君が?
 でもきっとかしこい人だから大丈夫よ。
 心配しないで全力で頑張ってきてね。
 帰ってきたらご褒美あげるから」

 そう言ってから再び長めのキスをした。

「あなたたち、いちゃついてるのはいいけど遅れないようにね。
 カズ、私も用があって見に行かれないから、結果報告楽しみにしてるわよ」

 いけね、まだ母さんがいたのを忘れてしまっていた。いちゃついてるだなんて言われても喜べないし恥ずかしい。さすがに色々と感づいているのかもしれない。

「カオリ、かわいいカズ君は私がちゃんと面倒見るから平気よ。
 これからもまかせておいてね」

 咲まで何を言い出しているのか…… まあでも、この場に父さんがいないだけマシだったと思うしかない。いたらもちろん玄関でこんなことはするはずもないけど……

「そ、それじゃ行ってきます!
 江夏さんの奥さんにお礼言っておいて!」

「はーい、いってらっしゃい」

「いってらっしゃい、大丈夫、キミならできるわよ、
 だから何の心配もいらないのよ?
 がんばってね、愛しいキミ」

 母さんのやや投げやりな声と重なるように、咲のやさしい声が背中を押してくれた様な、僕はそんないい気分で玄関を出た。


◇◇◇


 初回三者凡退から始まって流れがなさそうに思えるが、木戸と由布は何やら頷きあっていて問題ない様子だ。あのこそこそ話の後、遠くまで写せるカメラを探せなんて言われてどうしようかと思ったが、江夏さんが貸してくれたのはラッキーだった。

 ベンチから由布と真弓先生が交互に覗いていたけど、相手ピッチャーでも見ていたのだろうか。なにか癖があるとか、そんな風には見えなかった。そう言えば、だれ一人いないと思っていた外野席にも、三脚にカメラを載せた集団がいる。あれが噂のスカウトなのだろうか。

 さて僕らの守る番だ。立ち上がりは大切だから、より緊張感を持ってしっかり投げないとな。大切な試合を任された僕は自然と気合が入る。しかし木戸から横やりが入った。

「カズ、わりいけど一点やってくれや。
 運が良ければ無失点で済むだろ。
 後は抑えていいからさ」

「おいおい…… 松白相手に何言ってんだよ。
 理由もなしにそんなことできるわけないだろ?
 木戸よ、お前たち何企んでんだ?」

「カメラやスポンジの件か?
 まあ見てろって、きっとおもしろいことになるからよ。
 何も言わずに任せておけって」

「ちぇっ、いつもそうやってさあ。
 お前本当は絶対頭いいだろ。
 それとも本当に頭の中にはボールでも詰まってんのか?」

「俺も自分で見たことねえからわかんね。
 でも真弓ちゃんにしょっちゅうポカポカやられてっから、すでに丸くないかもしれんな」

「ちょっとキミたち、さっさといきなさい!
 早くしないと遅延プレーで抗議するよ!」

 なんで自軍ベンチから抗議を受けないといけないのか…… 僕たちは慌ててベンチを飛び出していった。調子がよすぎるので投球練習は軽めにしておくことにする。

 プレイがかかって木戸がサインを出してくる。初球はやっぱり緊張する。そういやこの一番は長打自慢らしいから要注意だったな。

 そう思っているのに木戸からのサインはアウトサイドのツーシーム、速度抑え目打ち頃で、って、どうやら一点やれっていうのは本気だったらしい。仕方ないので要求通り投げると、あっさり内野ゴロで打ち取ることが出来た。なぜかわからないが、木戸はベンチを見てから首をかしげている。

 どうやら由布と何やらサインプレーをしているようだ。さすがプロ野球選手の娘、テキパキとサインを出すさまはまるで本物のプロ野球コーチや監督のようだ。

 次は真ん中やや低めにツーシーム、これは問題なさそうだがコース甘目指定が気になる。しかし結果はサードフライでツーアウトだ。

 三番相手にはさすがに厳しく責めるだろうと思っていたけど、やっぱり甘めに速度を押さえたボールの要求だ。インローから中へ入ってくるツーシームは失投でよくあるやつだし、ローボールヒッターに打ち頃だと思うんだけど…… そして結果は、いい当たりだったが嶋谷がうまく飛びついてショートライナーと、上々な立ち上がりと言える結果に僕はひとまず安堵していた。
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