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第2章 エルフの隠れ里〜
これからどうする?
しおりを挟む山田……もとい、リッキーからとてもショッキングな内容の話をされ、俺はしばし固まってしまった。
そんな俺をニヤニヤして見ているリッキー。
「……これから俺は、皆とどう接すれば良いんだろう?」
「好きにすれば良いんじゃないか?どうせ、皆まだ覚醒してないんだろうし。今まで通りに接すればいいと思うが。」
「だけど……スコットさんが兄さんで、エミリーさんが惠美さん、リリーさんが姉さんなんだろ?……なんか、姉さんだけは今までよりも温かい目で見れそうな気がするよ。」
「……マジか?今までどんな印象だったんだよ!」
リッキーが腹を抱えて笑いながらそう言う。
……なんか、すっごい違和感あるけど……なんか、嬉しい。
俺はどうやら意識せずに笑顔になっていたらしい。
リッキーを見ると、あいつもはにかんだ笑顔をしていた。
「あ、そうだ!風呂に行こうって誘ったのに、すごく時間経っちまったな!今からでも入れるか?」
「行ってみる?」
「そうだな。あ、スコットはどうする?誘うか?」
「あれ?もしかしてリッキー単独で俺を風呂に誘いに来たの?てっきりスコットさんも一緒だと思ったのに。」
「……そうなんだよな、いつもなら2人で来るんだが、何となく1人で誘いに行きたかったんだよな。」
もしかして、これも何か操られていたり……?
なんかそう考え出すと、ホントにただの偶然だったりするものが、勝手に必然なんじゃないのかと勘違いしたりするんじゃないだろうか?
そんな事を考え込んでいると、俺の眉間をリッキーが揉んできた。
「そんな顔してるとすぐに皺ができるぞ~?あの『自称神様』の考える事なんか分かる訳ないんだから、気にするだけ無駄だと思うぞ?俺はもう、成り行きに任せることにしたよ。」
そうだよねぇ~、気にしたってしょうがないか。
向こうからこちらに何か接触してくることは無……くはないな?
考えてみればユーリって神からの神託が来ることあるって、鑑定に書いてなかったっけ?
……あれ?
もしかしてユーリ、皆のこと知ってたんじゃ?
なんか兄さんと姉さんを見た時やリッキーを見た時に「なるほどねぇ」なんて呟いていたし、その時にはもう知っていたのかもしれない。
とりあえず、この話はこれで終わり!
俺ももう気にせず、自分なりに自然体でいることにした。
それから俺たちはスコットさんを誘いに行くが、もうすでに入ってきたそうだ。
「えっ、そんなに時間経っていたの!?」って思っちゃったよ!
とりあえず女性陣にもお風呂に入ったか聞くと、もうとっくに入ってきたと言われたので、安心して2人でお風呂に向かった。
それから2人でゆっくりとお風呂に入り、日本での話を色々リッキーから聞いたりして、久しぶりの友人との会話を楽しむ。
今のリッキーの感覚としては「産まれてから覚醒するまでの間の記憶」と「山田としての記憶」の両方が備わっている感じらしい。
覚醒してリッキーとして育ってきた記憶が無くなったわけじゃないようだ。
もしそれまでの記憶が無くなっていたら全くの別人「山田」へと変貌してしまって、明日みんなに会ったらその変化をすぐに気づかれてしまうだろう。
それどころか、この里を出た後に行く予定の「スノービーク」でリッキーの両親と会う予定なのに、肝心のリッキーが親を覚えてない……なんてことになるところだった。
だから両方の記憶を持っていて良かったよ。
あとはリッキーが持っていた能力だが、どうやらその能力も無くなったわけじゃないようだ。
だけど今までと違って「心を読む」だけじゃなくて「感情が流れてくる」事も切っておくことができるようになったらしい。
それなら皆の故郷に行っても心が疲れなくて済みそうだ。
風呂から上がり、リッキーたちの部屋の前に着くとリッキーとは別れた。
「じゃあ湯冷めする前に布団に入ってしっかり暖まれよ?もう朝晩冷えてくる時期だからな。」
「分かっているよ、もう子供じゃないのは知ってるだろ?」
俺がリッキーにそう返すと、苦笑いした。
「……まあな。そういえばその事も皆には内緒にしておいたほうが良いだろうな。皆はお前のこと大人じゃないと思っているからな。」
「そうだよな。でもいつかは……と思っているけど、それよりも皆が覚醒すれば何の問題も無いってところだよな。」
「確かに……。覚醒すれば確実にお前を見る目が変わるからな。かといって……自然に覚醒するのを待ったほうがいいと、俺は思うぞ?」
「それって、リッキーが覚醒したのと同じ方法なのかな?」
「多分な。それに、もしかしたらユーリがなんか知っているんじゃないのか?」
「あっ……ありえそう。今はユーリがそばにいないから聞けないけど、合流したら聞いてみるかな。」
俺がそう言うとリッキーは頷く。
それから俺はリッキーと別れ、1人で部屋に向かう。
部屋に戻るとさっそく山田へと送る「買い物リスト」を考え、長々としたリストを作って送った。
かなり大量に買い込んでもらうことになったが、資金は豊富なので大丈夫だろう!
前もって山田には「何品かのおかず」という「お駄賃」を渡してあるので、また俺の作るおかずをもらえると思えば、多少リストが多かろうと協力してくれるだろう。
いつも助かるよ、山田!
ありがとう、山田!
俺はそう心に思いながら、今夜も眠りについた。
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