異世界漫遊記 〜異世界に来たので仲間と楽しく、美味しく世界を旅します〜

カイ

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第2章 エルフの隠れ里〜

閑話 ある神の思いやり

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私はある世界を創造し、全てを支配する神だ。

その世界では私以外にも数名の神が管理している。

その管理している世界から、重要な魂が異次元の壁を越えて別世界へと迷い込んてしまったようだ。

それを知った時は焦ったが、どこに行ったのかはしばらく分からなかったが、ようやく判明した。

それと同時に判明したのが、私の創造した世界を管理している数名の神の誰かがその魂を別世界へと捨てたことだ。

何となく犯人は誰なのか目星はついているが、確定していないので罰することができない。

とりあえず私はその魂を迎えに行くことにした。

その魂が向かった先は「地球」という星の「日本」という国だった。

その国からは私の世界に何人もの魂が流れ込んできているのは知っていたが、まさか私の大事な魂もそこに行っていたとは不思議なものだ。

さっそく私はその魂を私の世界に戻すべく、その魂と対になっている「卵」を創り出した。

なぜその魂が大事なのかというと、その魂は「歴代の神竜の卵を孵して育てる」役割を持っているからだ。

実は神竜の相棒はたった1つの魂が繰り返し繰り返し、担っている。

なのでこの魂がいなくなると私の代理となる神竜を、私の世界に送り込めないのだ。

それでは私はその世界に関与できなくなってしまう。
たぶん犯人はそれを狙ったのだろう。


どうやら私の重要な魂は今の世界でとても大事に育てられ、内面も歪まずに育ってくれたようだ。

ホッとしたところで「彼」に接触する。

無事に「彼」に卵を渡し、前回の反省を踏まえて「彼」には神の力さえ及ばない「完全防御」の腕輪と、神竜が他の神に侵されないよう「完全防御」の首輪を持たせる。

これは悪意のあるものにしか反応をしないが、魂を捨てた犯人の神には悪意がなくても反応するようになっている。

他にも時間停止機能と生物も入ることのできる鞄も持たせた。
これがあればかなり日常が楽になるだろう。

とりあえず「彼」を私の世界へと連れ戻すことに成功する。安心した。


それから暫く見ていたが、なかなか思ったようには鞄を使いこなせないようだ。

そこで私は「彼」の友人という人物に接触する。
その友人はかなり慎重で疑り深い人物のようだ。

それでも私は、さらなる「彼」の旅の利便性を高めるために、その友人に「彼」の鞄の対となる鞄を渡した。

それによって「彼」の鞄はさらなる発展を遂げて、さらに日常が豊かになるだろう。

ふとその友人を見ると、どうやら「彼」と一緒に私の世界を旅してみたかったようだ。

残念ながらその鞄の主となった場合、「彼」同様、世界を渡ることはできない。

「彼」とはとても親しかったようなので、もしこの友人が「彼」の場所に行けたら「彼」はとても喜ぶだろうか?

そこで私はその友人に「目印」としてある能力を授ける。

これは私の世界に来た時しか発現しないので、今の生の間は問題なく普通に過ごせる。

- - - - - - - -

人にとっては長い長い時を経て、私は「彼」の友人が最後の時を迎えるのを眺めている。

その友人が妻に何かを言い残したようだ。

肉体から解き放たれた「彼」の友人の魂を私は素早く回収した。
「彼」の友人との「約束」を果たすためだ。

私はその魂を持ったまま、自身の世界へと戻ってくる。
そして、そこでその魂の意識を覚まさせる。

「……えらい時間がかかったな、「約束」を果たすまでに。まさかここまで長く待たされるとは思ってもみなかった。」

「そうかね?「彼」は今回、かなりの長寿にしたから、多分あっという間だったんじゃないかな?」

すると「彼」の友人は憮然とした顔をして、ふんっ!と鼻息をついた。

「たとえ寿命が長かったとしても、人としての感覚を持っているあいつには長いと感じたはずさ。」

「そうかね?私にはよくわからないよ。ところで君の転生する先なんだけど……とりあえず家族仲は良いところになる予定だ。」

「……予定だってことは、そうならない場合もあるってことなんだな?」

「彼」の友人に図星を指されてしまったが、まさにその通り。

私が授けた能力のせいで辛い人生を歩むだろうが……それでは「彼」の友人がかわいそうだ。
「彼」もそんなことでは悲しむだけだろう。

「少しここで待っていると良い。誰にもついていかないんだよ?」

私はそう言い残すと、しばらく前の過去に戻った。

そこでは今まさに、「彼」の兄が亡くなるところだった。
私は「彼」の友人のように、その魂を捕まえる。

それから少しだけ時間を進め、「彼」の兄嫁の魂も捕まえた。

さらには、元の時間を未来へと進め、「彼」の友人の妻である「彼」の姉の魂も捕まえ、私の世界へと戻ってきた。

「……その手に持っているものは、何だ?」

「彼」の友人は訝しげに私の手の中の魂たちを見た。

「これは「彼」のとても親しい家族の魂だよ。君もよく知っている人たちのものだ。」

「まさかあいつの家族の魂か!?」

「そうだよ。」

「それを一体何にする……もしかして俺と同じ時代に転生させる予定なのか?」

「その通り。これは君と「彼」の為でもあるんだよ?」

そう私が言うと、「彼」の友人はふてくされた顔をした。

「……ホントにそれは俺やあいつの為になるのか?」

「ああ、絶対になるよ。今、この時に、この輪廻の輪が完成したようだ。さあ、まずはこの魂たちを転生させよう。」

私はそう言って、「彼」の兄と兄嫁を先に転生させた。

「次は君の番だよ。その後すぐに君の妻の魂も転生させるから安心してくれたまえ。」

私はそう言って「彼」の友人の魂を転生させ、その後すぐに「彼」の姉の魂を転生させた。

さて、今頃「彼」の友人の両親が名付けをするところだろう。

覗いてみると、彼の父親になる人物が転生した「彼」の友人を抱っこしている。
私はそのそばへと、そっと近づく。

「ありがとう、この子を無事に産んでくれて!……お前も母さんを苦しませずにすぐに産まれてくれてありがとう。」

父親は腕に抱いた赤ちゃんの頭を支えながら頬ずりしている。

「……あなた、いつまでそんなことしているの?早く名付けないとだめよ?」

「わかっているよ!……う~ん、何にするかな……。」

私は悩んでいる父親に助言をする。

「この子は前世で奥さんに『リッキー』と呼ばれていましたから、その名はどうですか?」

私の声は聞こえてないはずだが、父親は1つ頷く。

「よし、この子の名前は『リッキー』にしよう!何となくひらめいたんだ!」

「まぁ!なんて賢そうな名前でしょう。」

……おやおや、本当に聞こえてなかったのかな?
とりあえず名前はリッキーに決まったようで良かった、良かった。
やはり聞き慣れたほうが良いはずだ。

私はそう思いながら「彼」の友人の記憶を封印する。


その記憶の封印はすぐには解けない。

いつかの未来で「彼」と出会い、絆を築き、「その時」が来るまでは。
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