異世界漫遊記 〜異世界に来たので仲間と楽しく、美味しく世界を旅します〜

カイ

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第2章 エルフの隠れ里〜

ユーリを迎えに行ける?

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翌朝、俺は起き抜けに昨日の出来事を思い出していた。

「……ホントは、昨日の出来事は夢だったんじゃないんだろうか?」

俺は思わず呟いていた。

それはそうだろう。
昨日の出来事は、そう疑ってしまうほどの出来事だったのだから。

俺がベットに座りながらボ~ッとしていると、ドアをノックする音がした。

「シエル、ご飯食べに行くぞ?」

そう声をかけてきたのはリッキーだった。

俺と山田もといリッキーは、これから日本にいた時みたいに話し出すと周りから何かあったのかと思われるので、その話し方は2人だけの時のみと話し合っている。

なので俺がリッキーに話しかける時は「リッキーさん」となる訳だが、俺の中で「リッキー」が「山田」だと認識してしまっているので、なんだか違和感を感じてしまう。

「分かりました、今、支度します!」

俺はリッキーにそう声をかけ、頬を一回両手で叩いて気合を入れてから着替えを済ませる。

ドアの外に出るとスコットさんとリッキーがいた。

スコットさんが俺の兄さん……。

その事実を知ってしまうと、俺の中にある、それまでのスコットさんに対する気持ちに多少の変化があったようで。

何ていうのか……子供に戻ってしまったせいなのか、兄さんに抱きついて再会を喜びたい気持ちになってしまう。

「……?どうした、シエル?俺の顔に何か付いてるのか?」

俺があまりにもスコットさんの顔を見ていたものだから変に思われたようだ。

「いえ、ちょっとボ~ッとしてしまったようです。」

「さては昨日夜更かししたな?今夜は早めに寝ろよ?」

そう言って俺の頭をガシガシと撫でてくる、スコットさん。
その撫で方も、よく考えてみれば兄さんのそれと同じだ。
案外覚醒して無くても、言動は似通ってしまうのかもしれない。

そう考えればリリーさんも、どことなく姉さんと同じ言動をとっているような気がしてくる。

執着の対象が「俺」なのか「ユーリ」なのかの違いなだけな気がするし。

……もし姉さんが覚醒したら、一体どうなっちゃうんだろう?

俺は少し身震いをすると、2人の後ろについて食堂に向かった。

食堂ではもう他のメンバーが揃っていて、俺たちが最後だったようだ。

俺はテーブルに来ると昨日の余り物のサラダと味噌汁を器に盛り、リッキーが手持ちのおにぎりを大量に出してくれた。

皆それぞれ好きなおにぎりを選び、揃って「いただきます」をする。

「このご飯を固めた食べ物はなんじゃ?初めて見るのぉ。」

ラーシェさんがそんな事を言いながら、隣に座っているルーシェさんの方を見た。

「これはおにぎりっていう食べ物だよ、おじいちゃん。俺がギルマスをしているローランの街で売っているんだ。他の街でもちらほら売っている所を見かけるから、人族の街では普通に食べられているんじゃないかな?」

「そうなのか。これは便利じゃの。手に持って食べられるから、どこでも手軽にご飯を食べられそうじゃ。」

「そうだね、だから軽食として売っていたりするんだよ~。」

そっか、手軽に食べられるからおにぎりって軽食に当たるんだ。

マジックバッグを持っている冒険者には便利な食べ物だと思うんだ。

取り出してすぐに食べられるのは冒険者御用達の固形物の栄養食と同じだけど、美味しさが違う。

「栄養だけはしっかり摂れる固くて不味い固形物」と「柔らかくて美味しいおにぎり」ではおにぎりの方に軍配が上がるだろう。

俺たちはその後もワイワイやりながら朝食を食べた。

食べ終わると今度は魔法のレッスンのために裏庭へ。

そこに着くと、今日から俺も皆と同じく魔法の練度を上げる訓練から始めることに。

「まずはシエルくんの魔法の練度を見ようかの。まず水魔法からじゃ。目の前にできるだけ大きな水球を作り、圧力をかけてできるだけ小さくするのじゃ。」

俺はラーシェさんのいう通りに、巨大な水球を作った。

それを小さく、小さく縮めていく。

なるほど、相当な集中力が必要だから、良い特訓にはなるかも!

少し時間かかったが、25メートルプールの半分くらいの水球を直径30cmほどの球体まで縮めた。いや~、大変だった!

それが完成してからラーシェさんを見ると、目を見開いて相当驚いたようだ。

「いや~、驚きましたぞ!あんなに大きな水球を作れる者は、永く生きている私でもお目にかかったことはありませんな!そしてそれを、その大きさまで小さくするための魔力操作と集中力も相当なものとお見受けしましたぞ。」

ラーシェさんはそう言って俺を褒めてくれた。

やっぱり使い慣れている属性は繊細な操作もしやすいみたいだ。

じゃあ、もしかすると一番レベルの低い属性は難しいのかな?

俺がそう考えていると、ラーシェさんもそのことに気づいたようだ。

「もしかして水魔法は得意な方でしたかな?では扱える魔法の中で一番苦手な属性魔法はなんですかな?」

「確か……闇魔法ですね。まだ一度も使ったことがないんですよ。あとは神聖魔法と光魔法で、まだレベル2とレベル3なんです。」

「……なんですと?闇魔法と光魔法を同時に扱えるのですかな?」

「はい、一応ですが。」

「……もしや他にも扱える属性魔法があったりしますかな?」

俺が闇と光のどちらも扱えると聞いた途端、ラーシェさんは訝しげな顔をしだした。いったいどうしたんだろう?

とりあえず俺は扱える魔法をラーシェさんに伝えた。

「……それは本当ですかな?本当にすべての属性を扱えると?」

「ええ、とりあえずステータスにはそう書いてあります。ですが常に使っている水や土魔法の他は戦闘にしか使用したことなかったので、それで神聖魔法と光魔法、闇魔法をほぼ使用せずにいたんです。」

「なるほどのぉ~……闇魔法は戦闘にも使えますが、どんな魔法があるのかわからなかったんでしょうな。」

そうラーシェさんが予想した。

そう、確かに闇魔法はどんな魔法があるのか未だに分からない。

「ラーシェさんは闇魔法を使えますか?」

「ええ、私はどちらかというと闇魔法は得意な方でしょうなぁ。使ってみせましょうかの?」

「はい!よろしくお願いします。

「では初心者でも扱えるものを披露しますかのぉ。」

そう言うと「影移動」と呟く。

すると一瞬で少し離れた場所にいるルーシェさんの影から出現する。

「これが初心者でも扱える、初期魔法ですな。これなら見える範囲にある影から出現できるので、戦闘中は駆け寄る手間が省けますのじゃ。」

「なるほど……『影移動』というんですね?」

「はい。この魔法が進化すると、相当遠くの場所へも移動できるようになりますのじゃ。任意の人物の影へと移動したりできますのぉ。他には他人の影の中に隠れていたり、重力を利用した攻撃魔法なんかもあったりするのじゃ。これも多分ですが、シエルくんは想像だけでできるようになる気がするのぉ。」

確かにこの魔法、意外と使えそうだね!

俺は先ほど聞いた魔法を次々とどんな魔法なのか想像して使ってみた。

さすがに影移動はまだ見える範囲しか移動できなかったが、他人の影に潜り込んで移動したり、人に重力をかけて動けなくしたりすることはできるようになった。

それぞれラーシェさんに合格点をもらい、闇魔法もあとは使い続けてレベルを上げることが次の課題になった。

神聖魔法と光魔法に関しては、さすがのラーシェさんでも使うことが出来ないらしい。

その話のついでのように言われたのが、『対となる魔法は、片方のみしか扱えない』というものだ。

つまり、『すべての魔法が使える』というのが異常であり、特別な存在らしい。

それでさっき訝しそうな顔をしていたんだね。

他の魔法に関してもラーシェさんとルーシェさんから合格点をもらえたので、俺に教えることはもうないということだった。

じゃあ俺は皆より先に、ユーリのところへそろそろ行っても良さそうなのかな?

ラーシェさんにそう聞くと「夜にはこちらへ帰ってきて食事や休むこと」が条件ではあるが、ユーリのところへ行って良いことになった。

これはちょうど良い転移魔法と闇魔法の練習になるね!

よし、昼を食べてから行ってみようかな!
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