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第1章 出会い〜旅の始まり
風呂場にて
しおりを挟む「それはそうと女将さんが言っていたんだが、今夜の夕飯に出た『カレー』とかいうメニュー、君が作ったんだって?」
急に暁の星のリーダーがそう聞いてきた。
「俺の名前はシエルっていいます。これからは名前で呼んでくださいね!あと、確かに今夜のメニューのカレーは俺が作りましたよ?」
俺がそう言うと、リーダーさんは自分も最初の自己紹介で名前を言ってなかったことに気がついたようだ。
「すまなかった、お互いに名前を言ってなかったな。俺は暁の星でリーダーをやっているブラックという。改めてよろしくな!」
「はい、よろしくお願いします!」
「俺はスコットという。で、こっちがリッキーだ。」
みんなで今更ながらの自己紹介が終わると、ブラックさんが口を開いた。
「やっぱりカレーはシエルが作ったんだな。実はうちのメンバーで何人か食べたんだが……あ、もちろん俺も食べたが、あんないろんな香辛料が入っていて複雑な味の食べ物は初めて食べたよ。やみつきになる美味さだったな!」
そう言ってブラックさんはニカッと笑った。
おぉ~、メンバー以外で実食した人のリアルな感想もらったよ!
そうだよね、カレーって中毒性あるよね~、わかるよぉ!
俺がブラックさんの言葉にうんうん頷いていると、突然リッキーさんが一言、苦々しげに言った。
「シエルはお前達にはやらないからな。」
俺は思わず「えっ?」と聞き返してしまったが、言われた本人のブラックさんは少し驚いていた。
「シエルはもう正式にうちのメンバーなんだから、暁の星には移籍させないぞ。なぁ、シエル?」
「は、はいっ!移籍なんて考えたことありませんから大丈夫ですよ!」
俺は慌てて、そう返事した。
俺のその発言を聞いてリッキーさんとスコットさんはホッとした顔をして、ブラックさんは残念そうな顔をした。
あれ?もしかしてブラックさんはホントに移籍して欲しかったのかな?
「それは残念だ。うちも毎日あんなに美味しい料理を食べられたら良いなと思っていたからな。」
なるほど、料理番で欲しかったのね。
それを聞いて俺は苦笑いをする。
「すみません、期待されているところ申し訳ないんですが、俺そんなに料理が上手ってわけじゃないですよ?」
そう、単に日本の調味料とかが素晴らしいだけだと思う!
俺がそう言うとブラックさんは残念そうに「完璧に振られたなぁ」と苦笑した。
それからブラックさんは思い出したかのように話し出した。
「そうそうこの前ギルドの解体場で会っただろ?あの後俺たちもオークを買い取りに出してきたんだが、スコット達はすごい量のオークを倒してきたんだな!……お前たち、確かBランクなんだよな?それにしては凄く強くないか?」
スコットさんたちは話の途中から何を聞かれるのか分かったらしく、苦笑いしている。
2人は目線を合わせると、代表としてスコットさんが答えた。
「……確かに俺たちの実力はもっと上だという自覚はある。だがあまり高ランクすぎると国に目をつけられて、今までのような自由に生活ができなくなるからな。だからこのままで良いんだよ。俺たちの実力は、知り合いのギルマスだけが知っていれば良いんだ。……それに今回のオークの巣の殲滅依頼で、俺たちもまだまだ上に行けると分かったしな。」
それを聞いたブラックさんは苦笑いのまま頷いた。
「それもそうか、Aランクともなるとギルドは国にその存在を報告しなければならず、本人たちは移動したら必ずギルドに滞在することを報告しないとならないもんな。そりゃあ自由にしていたい奴は昇進試験は受けないか。だがほとんどの冒険者は国に認められて『お抱え冒険者』になりたい奴らばっかりだがなぁ。」
「……良いんだよ、俺たちは目立ちたくない。」
いつもはとてもフレンドリーな雰囲気をしているリッキーさんが、珍しく硬い表情だ。
あ、そういえば前にリリーさんが神聖法国に捕まえられたって言っていたっけ……。
さらに強くなると神聖法国だけじゃなくて他の国にも目をつけられて、強制的に国のものにされたりしたら困るもんね。
それでもまだスコットさんたちだけならまだいいが、俺がいる時点でアウトだ。
あちこちの国から狙われてしまう。
そう考えると冒険者ランクのレベルアップは良し悪しなんだね。
それからブラックさんは先に上がっていき、風呂場は俺たちだけになった。
「冒険者ランクが上がるのも良し悪しなんですね。まさかAランクになると国に報告が入るなんて知りませんでした。」
「そりゃあそうだろうな、通常受付では説明されないからな。俺たちはルーシェから教えてもらったんだ。」
「そうそう、ギルマスから『Aランクになると国に報告しなければならなくなり、自由に国を跨いで活動することができなくなるから、Aランクになるのはよしたほうが良いよ?』って言われたんだよ。」
「えっ、国の移動も禁止なんですか!?」
「そうなんだ。国としては貴重な高ランクを他国に取られたくないのと、高ランクを偵察や何かに他国へ派遣したなんて思われたくないからな。」
なるほどねぇ~……高ランクともなるとそれだけで兵士何人分もの強さがあるもんね。
そりゃあ警戒されるか。
俺はまだまだ低ランクだから、頑張ってみんなと同じランクまでは上げるけど、揃ったらそれ以上ランクは上げなくていいかな。
そんな事を話しているうちに流石にのぼせそうになり、上がって部屋に戻ることにした。
部屋に戻るとまだユーリは帰ってきておらず、とりあえず俺は山田にメッセージを送る。
「『風呂から上がってきたから電話できるぞ』っと。あ、そうだ、買い物リストも送っておくか?」
とりあえず俺は電話する前に買い物リストを作っておくことにした。
「やっぱり炊飯器とIHコンロは欲しいなぁ。そうすれば部屋でも料理の作り置きを作ったり、旅の間もかなり楽することできそうだしな!あとは……いろんな調味料を頼もう!醤油とみりん、料理酒、砂糖、塩、酢は外せないよね。あとはチューブのすりおろし生姜やすりおろしにんにく、焼肉のタレやステーキ醤油なんかもあるとバリエーションあるよね!あ、顆粒だしもお願いしよう!なんか久しぶりの料理、意外と楽しみだな!」
俺は他にも日本のいろんな食材を買ってもらおうとリストを作りつつ、山田のところからユーリが帰ってくるのを待つことにした。
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