異世界漫遊記 〜異世界に来たので仲間と楽しく、美味しく世界を旅します〜

カイ

文字の大きさ
上 下
49 / 211
第1章 出会い〜旅の始まり

風呂場にて

しおりを挟む

「それはそうと女将さんが言っていたんだが、今夜の夕飯に出た『カレー』とかいうメニュー、君が作ったんだって?」

急に暁の星のリーダーがそう聞いてきた。

「俺の名前はシエルっていいます。これからは名前で呼んでくださいね!あと、確かに今夜のメニューのカレーは俺が作りましたよ?」

俺がそう言うと、リーダーさんは自分も最初の自己紹介で名前を言ってなかったことに気がついたようだ。

「すまなかった、お互いに名前を言ってなかったな。俺は暁の星でリーダーをやっているブラックという。改めてよろしくな!」

「はい、よろしくお願いします!」

「俺はスコットという。で、こっちがリッキーだ。」

みんなで今更ながらの自己紹介が終わると、ブラックさんが口を開いた。

「やっぱりカレーはシエルが作ったんだな。実はうちのメンバーで何人か食べたんだが……あ、もちろん俺も食べたが、あんないろんな香辛料が入っていて複雑な味の食べ物は初めて食べたよ。やみつきになる美味さだったな!」

そう言ってブラックさんはニカッと笑った。
おぉ~、メンバー以外で実食した人のリアルな感想もらったよ!
そうだよね、カレーって中毒性あるよね~、わかるよぉ!

俺がブラックさんの言葉にうんうん頷いていると、突然リッキーさんが一言、苦々しげに言った。

「シエルはお前達にはやらないからな。」

俺は思わず「えっ?」と聞き返してしまったが、言われた本人のブラックさんは少し驚いていた。

「シエルはもう正式にうちのメンバーなんだから、暁の星には移籍させないぞ。なぁ、シエル?」

「は、はいっ!移籍なんて考えたことありませんから大丈夫ですよ!」

俺は慌てて、そう返事した。

俺のその発言を聞いてリッキーさんとスコットさんはホッとした顔をして、ブラックさんは残念そうな顔をした。

あれ?もしかしてブラックさんはホントに移籍して欲しかったのかな?

「それは残念だ。うちも毎日あんなに美味しい料理を食べられたら良いなと思っていたからな。」

なるほど、料理番で欲しかったのね。
それを聞いて俺は苦笑いをする。

「すみません、期待されているところ申し訳ないんですが、俺そんなに料理が上手ってわけじゃないですよ?」

そう、単に日本の調味料とかが素晴らしいだけだと思う!

俺がそう言うとブラックさんは残念そうに「完璧に振られたなぁ」と苦笑した。

それからブラックさんは思い出したかのように話し出した。

「そうそうこの前ギルドの解体場で会っただろ?あの後俺たちもオークを買い取りに出してきたんだが、スコット達はすごい量のオークを倒してきたんだな!……お前たち、確かBランクなんだよな?それにしては凄く強くないか?」

スコットさんたちは話の途中から何を聞かれるのか分かったらしく、苦笑いしている。

2人は目線を合わせると、代表としてスコットさんが答えた。

「……確かに俺たちの実力はもっと上だという自覚はある。だがあまり高ランクすぎると国に目をつけられて、今までのような自由に生活ができなくなるからな。だからこのままで良いんだよ。俺たちの実力は、知り合いのギルマスだけが知っていれば良いんだ。……それに今回のオークの巣の殲滅依頼で、俺たちもまだまだ上に行けると分かったしな。」

それを聞いたブラックさんは苦笑いのまま頷いた。

「それもそうか、Aランクともなるとギルドは国にその存在を報告しなければならず、本人たちは移動したら必ずギルドに滞在することを報告しないとならないもんな。そりゃあ自由にしていたい奴は昇進試験は受けないか。だがほとんどの冒険者は国に認められて『お抱え冒険者』になりたい奴らばっかりだがなぁ。」

「……良いんだよ、俺たちは目立ちたくない。」

いつもはとてもフレンドリーな雰囲気をしているリッキーさんが、珍しく硬い表情だ。

あ、そういえば前にリリーさんが神聖法国に捕まえられたって言っていたっけ……。

さらに強くなると神聖法国だけじゃなくて他の国にも目をつけられて、強制的に国のものにされたりしたら困るもんね。

それでもまだスコットさんたちだけならまだいいが、俺がいる時点でアウトだ。
あちこちの国から狙われてしまう。

そう考えると冒険者ランクのレベルアップは良し悪しなんだね。

それからブラックさんは先に上がっていき、風呂場は俺たちだけになった。

「冒険者ランクが上がるのも良し悪しなんですね。まさかAランクになると国に報告が入るなんて知りませんでした。」

「そりゃあそうだろうな、通常受付では説明されないからな。俺たちはルーシェから教えてもらったんだ。」

「そうそう、ギルマスから『Aランクになると国に報告しなければならなくなり、自由に国を跨いで活動することができなくなるから、Aランクになるのはよしたほうが良いよ?』って言われたんだよ。」

「えっ、国の移動も禁止なんですか!?」

「そうなんだ。国としては貴重な高ランクを他国に取られたくないのと、高ランクを偵察や何かに他国へ派遣したなんて思われたくないからな。」

なるほどねぇ~……高ランクともなるとそれだけで兵士何人分もの強さがあるもんね。

そりゃあ警戒されるか。

俺はまだまだ低ランクだから、頑張ってみんなと同じランクまでは上げるけど、揃ったらそれ以上ランクは上げなくていいかな。

そんな事を話しているうちに流石にのぼせそうになり、上がって部屋に戻ることにした。

部屋に戻るとまだユーリは帰ってきておらず、とりあえず俺は山田にメッセージを送る。

「『風呂から上がってきたから電話できるぞ』っと。あ、そうだ、買い物リストも送っておくか?」

とりあえず俺は電話する前に買い物リストを作っておくことにした。

「やっぱり炊飯器とIHコンロは欲しいなぁ。そうすれば部屋でも料理の作り置きを作ったり、旅の間もかなり楽することできそうだしな!あとは……いろんな調味料を頼もう!醤油とみりん、料理酒、砂糖、塩、酢は外せないよね。あとはチューブのすりおろし生姜やすりおろしにんにく、焼肉のタレやステーキ醤油なんかもあるとバリエーションあるよね!あ、顆粒だしもお願いしよう!なんか久しぶりの料理、意外と楽しみだな!」

俺は他にも日本のいろんな食材を買ってもらおうとリストを作りつつ、山田のところからユーリが帰ってくるのを待つことにした。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】

一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。 追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。 無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。 そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード! 異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。 【諸注意】 以前投稿した同名の短編の連載版になります。 連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。 なんでも大丈夫な方向けです。 小説の形をしていないので、読む人を選びます。 以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。 disりに見えてしまう表現があります。 以上の点から気分を害されても責任は負えません。 閲覧は自己責任でお願いします。 小説家になろう、pixivでも投稿しています。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

ちょっと神様!私もうステータス調整されてるんですが!!

べちてん
ファンタジー
アニメ、マンガ、ラノベに小説好きの典型的な陰キャ高校生の西園千成はある日河川敷に花見に来ていた。人混みに酔い、体調が悪くなったので少し離れた路地で休憩していたらいつの間にか神域に迷い込んでしまっていた!!もう元居た世界には戻れないとのことなので魔法の世界へ転移することに。申し訳ないとか何とかでステータスを古龍の半分にしてもらったのだが、別の神様がそれを知らずに私のステータスをそこからさらに2倍にしてしまった!ちょっと神様!もうステータス調整されてるんですが!!

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

処理中です...