異世界漫遊記 〜異世界に来たので仲間と楽しく、美味しく世界を旅します〜

カイ

文字の大きさ
上 下
34 / 196
第1章 出会い〜旅の始まり

リッキーさんの事とみんなの事

しおりを挟む
俺は思い切ってリッキーさんに聞くことにした。

「リッキーさん、ちょっと聞いても良いですか?」

「ん?なんだ、急に?」

「実は俺、前から思っていたんですが……リッキーさんって相手の心が読めたりします?」

「あ~…やっぱり気づいたか?これは仲間内しか知らないことなんだが、俺、物心ついた時にはこの『人の心が読めたり、感情が流れてくる』っていう能力があったんだ。」

「やっぱり心を読める能力も持っていたんですね!?」

「ああ、今教えた内容はスノーホワイト以外の奴には内緒な?」

「はい、もちろんです!誰にも言いません!」

やっぱりそんな能力があったんだぁ~!

もし俺がそんな能力持っていたら犯罪者相手に「お前がやったんだろ?分かっているんだ、素直に吐いちまえよ?」な~んて名刑事みたいな事ができ…る……ん?まてよ?

人の心が読めて勝手に感情が流れてくるってことは、知りたくなくても勝手にどんな感情も流れ込んでくるってことだよな?

もしリッキーさんに対して悪感情だった場合、それもそのまま言葉に出さなくてもリッキーさんに伝わってしまうっていうことでは?

もちろんその逆もあるだろうけど、それって相当精神的にきついんじゃ?

「リッキーさん、その能力って自分で切っておくことはできるんですか?」

「ん?ああ、心を読む能力の方は切ることはできるが、感情の方はどうにもならないな。」

リッキーさんは苦笑いしながらそう答えた。

どうやら俺が言いたいことが分かったらしい。

そっかぁ…感情の方はどうしようもないのかぁ。

それは、子供の頃は大変だっただろうなぁ……。

俺がすっかりしょんぼりしてしまったのでリッキーさんが顔を覗いてきた。

「シエルがそこまで気にすることないぞ?これは神から与えられた能力なんだから、いつかこの能力が必要になる時が来るはずだ。俺はそう思って今までも、これからも生きていくつもりだよ。」

そう穏やかな顔で俺を見つめるリッキーさん。

そんな俺たちを見ていたスコットさんが話しかけてきた。

「シエルは、俺とエミリー、リリーの3人はリッキーの幼馴染だって聞いただろう?」

「はい、街に出かけた時に聞きました。」

俺の答えを聞いてからスコットさんはリッキーさんを見て、彼が頷いたのを確認してから話しだした。

「リッキーは幼い頃からその能力があってな、周りからは距離を置かれて育ったんだ。それはリッキーの親戚も含めてのことだ。両親だけはリッキーのことを大切に愛情を持って育ててきたんだが、周りの他の大人はリッキーのその能力を怖がってしまって。子供は大人たちの対応を見て真似をしたのか、あまりそばには寄り付かなかったんだ。」

スコットさんから語られたのはリッキーさんの辛い過去の話だった。

だが当のリッキーさんは顔に「しょうがない事だったんだ」という感情を滲ませているだけだった。

「俺たちは最初、そんなリッキーを見て可哀想だと思い、年も近いから一緒に遊んでいたんだ。だがそのうちリッキーの事が分かってくると、心が読めるなんてことは忘れて仲良くなっていってな。大きくなっていくにつれて俺たちは互いにかけがえのない友人になっていったんだよ。」

それを聞いて、リッキーさんは苦笑いをする。

「そうだな……あの当時、俺は表面的には笑ってはいたが心の中では孤独だったんだ。だから両親からの愛情がなかったら、多分とっくの昔にこの世にはいなかったかもしれない。でもな、そんな時にスコットやエミリー、リリーと出会い、一緒に過ごすうちにかけがえのない仲間になったんだ。」

2人は当時のことを思い出したのか、目を合わせて苦いようなそれでいて懐かしい……そんな複雑な雰囲気を出していた。

俺は何もいえず、2人の昔話を聞いていた。

「それからしばらくして俺達が成人した年、リッキーが故郷の街を出て冒険者になるって両親に言っているのを偶々俺が聞いたんだ。だからそれを2人にも伝えた。だがそれからしばらく経ってもリッキーからは『一緒に街を出て冒険者にならないか?』っていう誘いが皆になかったんだ。皆でヤキモキしていたところ、急にこいつが街から姿を消したんだ。俺たちには声もかけず、たった1人で街を出て冒険者になろうとしたんだよ。」

スコットさんは軽くリッキーさんを睨みながら言う。

リッキーさんは申し訳無さそうな顔で「すまなかった」と謝った。

「だから俺たちはリッキーの両親に行き先を聞き、3人で追いかけたんだ。追いかけた先でリッキーはもう冒険者になっていたが、俺たちもすぐに冒険者になり、そして4人でパーティーを組んだんだ。それからはずっと4人で行動を共にしているんだよ。」

なるほど、皆にはそんな過去があったんだね。

でも、それだけ4人の絆は深いんだろうと思う。

友情…かぁ……。また山田や姉さんに会いたいなぁ~……。

俺が寂しそうな顔をしていたのか、2人は俺の頭を撫でてきたり、背中を軽く叩いてきたりして励まそうとしてくれた。

「……ありがとうございます。これからも俺と仲良くしたください!」

「「ああ、よろしくな!」」


それからしばらく俺たちが部屋でユーリと遊んでいたら、またドアの外から声がかけられた。

今度は夕飯行こうとエミリーさんたちが声をかけてきたようだ。

俺たち3人は2人に向かって「今行く!」と声をかけ、ユーリにはまた肩掛け鞄の中に入ってもらい、一緒に食堂に向かった。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

異世界召喚?やっと社畜から抜け出せる!

アルテミス
ファンタジー
第13回ファンタジー大賞に応募しました。応援してもらえると嬉しいです。 ->最終選考まで残ったようですが、奨励賞止まりだったようです。応援ありがとうございました! ーーーー ヤンキーが勇者として召喚された。 社畜歴十五年のベテラン社畜の俺は、世界に巻き込まれてしまう。 巻き込まれたので女神様の加護はないし、チートもらった訳でもない。幸い召喚の担当をした公爵様が俺の生活の面倒を見てくれるらしいけどね。 そんな俺が異世界で女神様と崇められている”下級神”より上位の"創造神"から加護を与えられる話。 ほのぼのライフを目指してます。 設定も決めずに書き始めたのでブレブレです。気楽〜に読んでください。 6/20-22HOT1位、ファンタジー1位頂きました。有難うございます。

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。

八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。 パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。 攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。 ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。 一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。 これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。 ※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。 ※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。 ※表紙はAIイラストを使用。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します

湯崎noa
ファンタジー
ブラック企業に入社して10年が経つ〈宮島〉は、当たり前の様な連続徹夜に心身ともに疲労していた。  そんな時に中高の同級生と再開し、その同級生への相談を行ったところ会社を辞める決意をした。  しかし!! その日の帰り道に全身の力が抜け、線路に倒れ込んでしまった。  そのまま呆気なく宮島の命は尽きてしまう。  この死亡は神様の手違いによるものだった!?  神様からの全力の謝罪を受けて、特殊スキル〈コピー〉を授かり第二の人生を送る事になる。  せっかくブラック企業を卒業して、異世界転生するのだから全力で謳歌してやろうじゃないか!! ※カクヨム、小説家になろう、ノベルバでも連載中

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

処理中です...