妹が約束を破ったので、もう借金の肩代わりはやめます

なかの豹吏

文字の大きさ
上 下
5 / 17

5,

しおりを挟む
 

「まったく、こんな事ならとっととダリアをダラビットの息子にくれてやるんだった……」

「今更なによ、そんな事より今は、ステラリアが嫁いでも加護はこっちに使ってもらうようにする事を考えるのよ」

 ……またやってる。 最近あの二人はずっとこの調子。 まだダラビット家から返事は無いけど、それも時間の問題だろう、何しろ相手は加護持ちだ。

 隣の部屋は放っておいて、わたしはドレスを選ぶとしよう。 ―――妹の。

「姉さん、わたしリオネルの趣味とか知らないんだよね~、彼どんなのが好みなのかな?」

「そうね、あまり派手なのは……」

「でもわたしピンクが似合うから、それでいっか!」

「……そうね、きっと喜ぶわ」

 わたしはというと、まだ本当の事を家族の誰にも言っていない。 

 二人の婚約なんか納得いかない、そのわたしが何故妹の手伝いをしているのか、それは―――



 ◆



「本当に恥知らずね! 妹から声が掛かったらわたしなんてどうでもいいの!?」

「そんな事はないが、君とではいつまで経っても先に進まないじゃないか……!」

「簡単に進むなら誰でもいいって事? そんな男だと思わなかったわ!」

「……そこまで言うなら、言いたくはないが、同じ加護を持っていると言っても、君とステラリアじゃ――」

 全てを言い終える前に、わたしの掌がリオネルの頬を弾き、言葉を遮る。 

「ちょ、ちょっと姉さんやめなよっ!」

 怒りに震えるわたしと、顔を歪めるリオネルの間にステラリアが割って入った。 人目につかない場所で話していたのに、きっと家からつけて来たんだ。

「……私はもう帰る、ステラリア、婚約の返事は近いうちに」

「あっ、待ってリオネル!」

 立ち去るリオネルを妹は追いかけた。 わたしはその場から動かず、遠くなっていく二人を見送るだけ。


 ――――笑いながら。



 ◆



「辛いだろうけど、姉さんも来てよねっ。 婚約発表の夜会」

「わかってる。 でも、またリオネルを引っぱたくかもしれないわよ?」

 まだ返事も来てないのに、もう婚約したつもりでいる。 加護の力なんか手に入れたからかな、妹はわがままな子供のまま16になった気がする。

「あははっ、ダメだよ~」

「ふふふ」

 本当に、笑いが止まらない。

 だって、あの時もわたしは知っていたから。 あの子が、わたしの後ろをついて来てる事を……。


しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

【完結】返してください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと我慢をしてきた。 私が愛されていない事は感じていた。 だけど、信じたくなかった。 いつかは私を見てくれると思っていた。 妹は私から全てを奪って行った。 なにもかも、、、、信じていたあの人まで、、、 母から信じられない事実を告げられ、遂に私は家から追い出された。 もういい。 もう諦めた。 貴方達は私の家族じゃない。 私が相応しくないとしても、大事な物を取り返したい。 だから、、、、 私に全てを、、、 返してください。

どうやらこのパーティーは、婚約を破棄された私を嘲笑うために開かれたようです。でも私は破棄されて幸せなので、気にせず楽しませてもらいますね

柚木ゆず
恋愛
 ※今後は不定期という形ではありますが、番外編を投稿させていただきます。  あらゆる手を使われて参加を余儀なくされた、侯爵令嬢ヴァイオレット様主催のパーティー。この会には、先日婚約を破棄された私を嗤う目的があるみたいです。  けれど実は元婚約者様への好意はまったくなく、私は婚約破棄を心から喜んでいました。  そのため何を言われてもダメージはなくて、しかもこのパーティーは侯爵邸で行われる豪華なもの。高級ビュッフェなど男爵令嬢の私が普段体験できないことが沢山あるので、今夜はパーティーを楽しみたいと思います。

婚約して三日で白紙撤回されました。

Mayoi
恋愛
貴族家の子女は親が決めた相手と婚約するのが当然だった。 それが貴族社会の風習なのだから。 そして望まない婚約から三日目。 先方から婚約を白紙撤回すると連絡があったのだ。

今更「結婚しよう」と言われましても…10年以上会っていない人の顔は覚えていません。

ゆずこしょう
恋愛
「5年で帰ってくるから待っていて欲しい。」 書き置きだけを残していなくなった婚約者のニコラウス・イグナ。 今までも何度かいなくなることがあり、今回もその延長だと思っていたが、 5年経っても帰ってくることはなかった。 そして、10年後… 「結婚しよう!」と帰ってきたニコラウスに…

私がいなくなって幸せですか?

新野乃花(大舟)
恋愛
カサル男爵はエレーナと婚約関係を持っていながら、自身の妹であるセレスの事を優先的に溺愛していた。そんなある日、カサルはあるきっかけから、エレーナに自分の元を出ていってほしいという言葉をつぶやく。それが巡り巡ってエレーナ本人の耳に入ることとなり、エレーナはそのまま家出してしまう。最初こそ喜んでいたカサルだったものの、彼女がいなくなったことによる代償を後々知って大きく後悔することとなり…。

貴族の爵位って面倒ね。

しゃーりん
恋愛
ホリーは公爵令嬢だった母と男爵令息だった父との間に生まれた男爵令嬢。 両親はとても仲が良くて弟も可愛くて、とても幸せだった。 だけど、母の運命を変えた学園に入学する歳になって…… 覚悟してたけど、男爵令嬢って私だけじゃないのにどうして? 理不尽な嫌がらせに助けてくれる人もいないの? ホリーが嫌がらせされる原因は母の元婚約者の息子の指示で… 嫌がらせがきっかけで自国の貴族との縁が難しくなったホリーが隣国の貴族と幸せになるお話です。

「きみ」を愛する王太子殿下、婚約者のわたくしは邪魔者として潔く退場しますわ

茉丗 薫
恋愛
わたくしの愛おしい婚約者には、一つだけ欠点があるのです。 どうやら彼、『きみ』が大好きすぎるそうですの。 わたくしとのデートでも、そのことばかり話すのですわ。 美辞麗句を並べ立てて。 もしや、卵の黄身のことでして? そう存じ上げておりましたけど……どうやら、違うようですわね。 わたくしの愛は、永遠に報われないのですわ。 それならば、いっそ――愛し合うお二人を結びつけて差し上げましょう。 そして、わたくしはどこかでひっそりと暮らそうかと存じますわ。

婚約破棄された令嬢のささやかな幸福

香木陽灯(旧:香木あかり)
恋愛
 田舎の伯爵令嬢アリシア・ローデンには婚約者がいた。  しかし婚約者とアリシアの妹が不貞を働き、子を身ごもったのだという。 「結婚は家同士の繋がり。二人が結ばれるなら私は身を引きましょう。どうぞお幸せに」  婚約破棄されたアリシアは潔く身を引くことにした。  婚約破棄という烙印が押された以上、もう結婚は出来ない。  ならば一人で生きていくだけ。  アリシアは王都の外れにある小さな家を買い、そこで暮らし始める。 「あぁ、最高……ここなら一人で自由に暮らせるわ!」  初めての一人暮らしを満喫するアリシア。  趣味だった刺繍で生計が立てられるようになった頃……。 「アリシア、頼むから戻って来てくれ! 俺と結婚してくれ……!」  何故か元婚約者がやってきて頭を下げたのだ。  しかし丁重にお断りした翌日、 「お姉様、お願いだから戻ってきてください! あいつの相手はお姉様じゃなきゃ無理です……!」  妹までもがやってくる始末。  しかしアリシアは微笑んで首を横に振るばかり。 「私はもう結婚する気も家に戻る気もありませんの。どうぞお幸せに」  家族や婚約者は知らないことだったが、実はアリシアは幸せな生活を送っていたのだった。

処理中です...