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52 俺だった

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予選が始まった。

第十予選リーグへと入れられた俺は、闘技場へと入っていく。

ボロボロのローブを羽織った俺は、腰にブロードソードを差し、胸に剣の形をしたブローチを付ける。

俺がゆっくり歩きながら闘技場に入ると、すでに同リーグに入れられた四十九名が武器を構えていた。

予選は五十名によるバトルロイヤル。五十名全員で、制限時間いっぱいまで服につけた剣のブローチを奪い合う。ブローチを一つもつけていないと失格となる。
時間切れ後の集計でブローチを一番多く所有している者が本選へと進める。
決闘形式ではないため、相手を殺してしまった者はペナルティとなり、集計時にいくつかのブローチが没収され、場合によっては牢獄行きとなる。

いかに抜け目なくブローチを収集するか――それがこの予選のミソだろう。

闘技場は広い。五十人入ってもまだ余裕はある。

人数が揃うと、

「これよりトーナメントの予選を執り行う! 初代《剣帝》に礼ッ!」

立会人となる男が大声で叫んだ。

初代?

立会人が中心となり、参加者は一斉に頭を下げる。その方向には、主催席、それに大きな石像が『精霊王の剣』らしきものを持って立っていた。

「――いや、初代《剣帝》って俺か!?」

例のゼノン・ウェンライト(イケメン化した若者)の石像である。

《剣帝》になった覚えはないのだが……そもそもこんな町知らないのだが、いつの間にか初代《剣帝》にされていた。

皆が静かに礼をする中、俺か!? と叫んだので注目が一点に集まる。

てめえなわけねえだろ、みたいな空気の中全員に睨まれた。

立会人にも睨まれた。

「…………」

なんだかばつが悪いので、腕組しながら素知らぬ顔をすることにする。

「このトーナメントが始まったのは、ゼノン様が魔王との戦いで犠牲になられたあとのことである! しかし偉大なる剣士であるゼノン様を差し置いて《剣帝》の座を決めるなどあってはならぬ! ゆえに初代の《剣帝》をゼノン様とし、開催ごとに敬意を表明することとした歴史があるのだ! それを否定することはこのトーナメントへの侮辱である! 礼を失すれば失格もあることを覚えておけ!」

あきらかに俺に対しての注意を発した後、

「では予選はじめいッッッ!」

予選は始まった。

……いや、べつに俺を差し置いて《剣帝》でも何でも決めてくれてかまわないのだが?
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