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51 チンピラに絡まれる
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店内を出て、店の前で、チンピラたちに囲まれる。
どうやらこいつらは全員、ジョー・グレモン盗賊団とかいうところのメンバーらしい。
野次馬も集まってくる。
「そういうことか。考えたな」
俺はチンピラたちにわざとらしく頷きながら言った。
「つまりこういうことだろう? 大勢の組織で参加すれば、予選のバトルロイヤルは勝ち抜きやすくなる。同グループになったときに、組織同士で協調できるからだ」
俺がいうと、チンピラたちは口元を釣り上げる。
「しかしそれが通じるのも予選のみ。その後はどうするんだ? それでどうやって《剣帝》を倒す? 本選や決勝じゃ、力を合わせて強者を倒すことはできんぞ。やはり意味のない結束なのではないか? 貴様らがやっているのは、ただ協力してみんなで一定水準になりましょうとやっているだけで、一定以上の水準になろうとはしていない。一切の研鑽を諦めた弱者の、仲良しこよしの自己満足にすぎん」
「てめえ、やっぱり今ここでぶっ殺す!」
チンピラの一人が殴りかかって来るのを避け、避けざま、あごに拳をぶつける。
一人倒れたのを皮切りに、チンピラたちは一斉にかかってくる。
俺はそれをかわしながら、足を引っ掛け、殴り飛ばし、投げ飛ばす。
――と、すぐ横で、チンピラが誰かに殴られて吹っ飛ばされてきた。
「おっさん、多勢に無勢じゃ分が悪いだろ?」
そこには、金髪で、耳にピアスを開けた若者がいた。
「ここは助けさせてくれねえか!?」
言いながらチンピラをさらに殴り飛ばす。
「助太刀は無用だ」
背中合わせに、俺は答える。
「そうかよ? じゃあ準備運動代わりに勝手に参加させてもらうぜ」
「それはいささか気の毒だ。これでは準備運動にもならん。ただの時間の浪費だぞ」
「へっ、言うねえ! なら二人で片付ければ時短にならあ!」
金髪の若者と俺は、かかってくるチンピラを次々に殴り飛ばす。
相手が剣を抜いてもおかまいなしだ。
やがて相手の戦意が喪失して来ると、
「て、てめえは、まさか!?」
何かに気づいたらしいチンピラの一人が、若者を指差して震えた。
「俺様の名を知っているか。どうやらそれほどまでに名を馳せてきているようだなあ」
金髪の若者は笑う。
「せ、せ、《精霊剣使い》フューエル・ノックス!」
「ご名答。まったく、強くなりすぎると目立っちまって困るぜ。まあ、満更でもねえんだけど」
相当な手だれだと思ったが、精霊剣使いだったのか。
「で、俺様の名を知ってまだかかって来るやつはいるかよ? だったら――」
金髪の若者――フューエルは、魔法陣を展開し、そこから一振りの剣を召喚する。
「この精霊剣で相手になるぜ」
黒い剣だった。柄も刃も、すべて漆黒。それを手にした途端、フューエルの髪と瞳が、同じような黒に染まっていく。
「逃げろ! 一旦引くぞ!」「ひ、ひえええ!」
精霊剣を見た途端、チンピラたちは逃げ出していく。
「ふん、他愛ねえ。……ん?」
フューエルが呟く。
チンピラが逃げた先に、茶色い短髪の大男がいた。左の瞳に大きい傷跡がついている。
大男は、長く細い剣の鞘で、チンピラたちを一瞬で叩き伏せる。
「甘いぞ。こういった輩はちゃんと憲兵に突き出さんと」
言いながら、短髪の大男は俺たちに近づいてきた。
「知らねえのか、でけえにいちゃんよ。トーナメント期間中は町でケンカがあっても憲兵は見て見ぬ振りしてんだよ。多すぎて対処しきれなくてな」
「何? それは知らなんだ。なにせ初参加なものでな」
短髪の大男は腰にもう一振り、ナイフのような短い短剣を差していた。短剣と長剣の二刀流だろうか。
「あれ、まさかSランク冒険者のゼビカ・フラムバーナ!? あの伝説の冒険者ゼビカもトーナメントに参加するのか!?」
野次馬の一人が叫んだ。
「……へえ、あんたがあのゼビカか。噂は聞いてるぜ。なんでも、ドラゴンの軍勢を押し返した《竜殺し》の一人だとか。マジな話?」
「……有名になりすぎると、目立って困るな」
こいつらも、トーナメント参加者か。
俺は一歩進み出て、二人に頭を下げた。
「このたびは助かった。ありがとう」
「いや、余計な茶々入れちまった。俺様が暴れたかっただけなんだ。へへっ、邪魔したな、おっさん」
フューエルは悪気もなく笑う。
二人とも強い。一目でわかった。
「同じく、野暮だったようだ。……では本選で」
短髪の大男……ゼビカは短く言って、早々に踵を返した。
「楽しみにしてるぜ。殺しちまっても恨むなよ?」
すでに自分たちが本選へ進むことを確信しているらしい。
俺たちが別れるのを確認してから、倒れていたチンピラたちはコソコソと起き上がり散っていった。
「おい、メシ食い終わったぞ。金払って来い」
出てきた魔王にゲンコツをくれてから、俺は考える。
「さて……まずは予選を突破せねばな」
ランドみたいなのがいっぱいだったら楽だったのだが、思いのほか猛者は多そうだ。
そして俺は、最初から実力をひけらかすつもりはない。相手に情報をほとんど与えず、決勝まで勝ち残る。知られていないのは、強みだ。
「ふふっ、楽しくなってきたなあウルカよ」
「我はつまらんぞトントン。甘いものを奢れ」
「…………」
「無視か? うんとかすんとか言ったらどうだ」
であれば、おじさんらしく、いろいろと小賢しい手を練っておこうか。
どうやらこいつらは全員、ジョー・グレモン盗賊団とかいうところのメンバーらしい。
野次馬も集まってくる。
「そういうことか。考えたな」
俺はチンピラたちにわざとらしく頷きながら言った。
「つまりこういうことだろう? 大勢の組織で参加すれば、予選のバトルロイヤルは勝ち抜きやすくなる。同グループになったときに、組織同士で協調できるからだ」
俺がいうと、チンピラたちは口元を釣り上げる。
「しかしそれが通じるのも予選のみ。その後はどうするんだ? それでどうやって《剣帝》を倒す? 本選や決勝じゃ、力を合わせて強者を倒すことはできんぞ。やはり意味のない結束なのではないか? 貴様らがやっているのは、ただ協力してみんなで一定水準になりましょうとやっているだけで、一定以上の水準になろうとはしていない。一切の研鑽を諦めた弱者の、仲良しこよしの自己満足にすぎん」
「てめえ、やっぱり今ここでぶっ殺す!」
チンピラの一人が殴りかかって来るのを避け、避けざま、あごに拳をぶつける。
一人倒れたのを皮切りに、チンピラたちは一斉にかかってくる。
俺はそれをかわしながら、足を引っ掛け、殴り飛ばし、投げ飛ばす。
――と、すぐ横で、チンピラが誰かに殴られて吹っ飛ばされてきた。
「おっさん、多勢に無勢じゃ分が悪いだろ?」
そこには、金髪で、耳にピアスを開けた若者がいた。
「ここは助けさせてくれねえか!?」
言いながらチンピラをさらに殴り飛ばす。
「助太刀は無用だ」
背中合わせに、俺は答える。
「そうかよ? じゃあ準備運動代わりに勝手に参加させてもらうぜ」
「それはいささか気の毒だ。これでは準備運動にもならん。ただの時間の浪費だぞ」
「へっ、言うねえ! なら二人で片付ければ時短にならあ!」
金髪の若者と俺は、かかってくるチンピラを次々に殴り飛ばす。
相手が剣を抜いてもおかまいなしだ。
やがて相手の戦意が喪失して来ると、
「て、てめえは、まさか!?」
何かに気づいたらしいチンピラの一人が、若者を指差して震えた。
「俺様の名を知っているか。どうやらそれほどまでに名を馳せてきているようだなあ」
金髪の若者は笑う。
「せ、せ、《精霊剣使い》フューエル・ノックス!」
「ご名答。まったく、強くなりすぎると目立っちまって困るぜ。まあ、満更でもねえんだけど」
相当な手だれだと思ったが、精霊剣使いだったのか。
「で、俺様の名を知ってまだかかって来るやつはいるかよ? だったら――」
金髪の若者――フューエルは、魔法陣を展開し、そこから一振りの剣を召喚する。
「この精霊剣で相手になるぜ」
黒い剣だった。柄も刃も、すべて漆黒。それを手にした途端、フューエルの髪と瞳が、同じような黒に染まっていく。
「逃げろ! 一旦引くぞ!」「ひ、ひえええ!」
精霊剣を見た途端、チンピラたちは逃げ出していく。
「ふん、他愛ねえ。……ん?」
フューエルが呟く。
チンピラが逃げた先に、茶色い短髪の大男がいた。左の瞳に大きい傷跡がついている。
大男は、長く細い剣の鞘で、チンピラたちを一瞬で叩き伏せる。
「甘いぞ。こういった輩はちゃんと憲兵に突き出さんと」
言いながら、短髪の大男は俺たちに近づいてきた。
「知らねえのか、でけえにいちゃんよ。トーナメント期間中は町でケンカがあっても憲兵は見て見ぬ振りしてんだよ。多すぎて対処しきれなくてな」
「何? それは知らなんだ。なにせ初参加なものでな」
短髪の大男は腰にもう一振り、ナイフのような短い短剣を差していた。短剣と長剣の二刀流だろうか。
「あれ、まさかSランク冒険者のゼビカ・フラムバーナ!? あの伝説の冒険者ゼビカもトーナメントに参加するのか!?」
野次馬の一人が叫んだ。
「……へえ、あんたがあのゼビカか。噂は聞いてるぜ。なんでも、ドラゴンの軍勢を押し返した《竜殺し》の一人だとか。マジな話?」
「……有名になりすぎると、目立って困るな」
こいつらも、トーナメント参加者か。
俺は一歩進み出て、二人に頭を下げた。
「このたびは助かった。ありがとう」
「いや、余計な茶々入れちまった。俺様が暴れたかっただけなんだ。へへっ、邪魔したな、おっさん」
フューエルは悪気もなく笑う。
二人とも強い。一目でわかった。
「同じく、野暮だったようだ。……では本選で」
短髪の大男……ゼビカは短く言って、早々に踵を返した。
「楽しみにしてるぜ。殺しちまっても恨むなよ?」
すでに自分たちが本選へ進むことを確信しているらしい。
俺たちが別れるのを確認してから、倒れていたチンピラたちはコソコソと起き上がり散っていった。
「おい、メシ食い終わったぞ。金払って来い」
出てきた魔王にゲンコツをくれてから、俺は考える。
「さて……まずは予選を突破せねばな」
ランドみたいなのがいっぱいだったら楽だったのだが、思いのほか猛者は多そうだ。
そして俺は、最初から実力をひけらかすつもりはない。相手に情報をほとんど与えず、決勝まで勝ち残る。知られていないのは、強みだ。
「ふふっ、楽しくなってきたなあウルカよ」
「我はつまらんぞトントン。甘いものを奢れ」
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