ナナ

楪 ぷぷ。

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1章

Present

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「はい。」


「何これ?」


「プレゼント。」



Douxドゥーのパーティーから2週間後。



ここに来るのは2回目になる湊都。



部屋に入ってくるなり手渡された紙切れ。



「これが?」


「あぁ。」



紙切れを開くと電話番号と‘’Nor”という言葉が書かれていた。



「刺青師の連絡先とその店だ。」


「わざわざ届けに来てくれたのね。」


「近くに来たついでだ。」



コートを脱ぎベッドに腰掛ける湊都。



「今日も休む目的で来たわけ?」


「あぁ。」


「休むなら別の場所に行けばいいのに。ここは娼館よ。」



そう口では言いつつ一応ベッドの傍に行く。



「お前、そんなにヤりたいのか?」


「そういうんじゃないけど・・・。」


「けどなんだよ。」


「・・・罪悪感があるだけ。」


「お前そういうの考えるやつだったんだ?」


「失礼ね。一応仕事なんだから当たり前でしょ。」


「・・・じゃあ、来い。」


「は?」


「来いよ。」



そう言われ仕方なくベッドに乗る。



腕を引っ張られて抱き寄せられる。



「ちょっ。」



片手は腰に、片手は顎に。



ぐっと引き寄せられて視線が上がる。



最初は触れるだけのキス。



段々と深くなっていき身体の力が抜けてくる。



押し倒され両手をベッドに押し付けられる。



いやらしい水音だけが部屋に響く。



クチュと音を鳴らし唇を離す湊都。



「口の・・・。」


「あ?」


「口の中の性感帯・・・全部わかるの・・・?」



やっとの思い出紡ぎ出した声を聞いて軽く笑う湊都。



「あぁ。ついでに言うと・・・。」


「っ・・・!」



鎖骨から胸元までを人差し指でなぞられる。



「体の性感帯もな?」



あぁ。



まずい。



湊都のペースに入ったらどうなるかよく分かってる。



ただでさえ、身にまとっているものが少ないというのに秒で剥ぎ取られてしまう。



「んっ!」



どこをどうすれば私が感じるのか完全に把握されてる。



指で責められ、舌で責められる。



「あっ・・・んっ・・・。」



演技せずとも引き出される声。



明らかにテクニックが違う。



「この前より感じてるな。」 


「やめっ、言わないで・・・。」


「もっと啼けよ。」








「ねぇ、なんでパーティー来なかったの?」


「興味なかっただけ。」


「連絡くらいくれればいいのに。」


「忙しかったんだ。」



‘’だ”の部分を強調して言う。
 


ベッドに寝転がりながら会話する。



湊都は散々私をイかせて終わった。



挿れなくていいのか聞くと声枯れるほどイきたいか?と死刑宣告。



「ヤクザってどんな仕事してるの?」


「お前・・・客でいないのか?」


「いないわよ。政治とか芸能とか各界のお金持ちばっかりよ。」


「ふーん。」



聞いた割には興味無さそうにタバコをふかす。



「で?何してるの?」


「聞かない方がいいと思うぞ。」


「そういうもの?」


「そういうもの。」



タバコを私に預け、身支度を始める湊都。



手に持たされたタバコを吸う。



「美味しい・・・。」


「あれ、お前吸ったこと無かったっけ?」


「湊都が吸ってるのは見たことあるけど吸ったのは初めて。」



もう一度吸うと近くにやってきた湊都にタバコを奪われる。



湊都も一度吸い、灰皿で火を消す。



「ねぇ、湊都って結婚してるの?」


「あ?んなわけねぇだろ。」


「じゃあ彼女は?」


「いねぇ。」


「許嫁は?」


「なんだよ。いきなりどうした。」



不機嫌そうな声。



「ここに来る人は私たちを1番目の女にはしたがらないの。だから湊都もそうなのかなって。」


「バカ。1番も何もねぇよ。」


「どういうこと?」


「いずれ教えてやる。」


「いずれって?」



遠回しの言い方に疑問は深まるばかり。



「お前が俺に惚れた時。」


「どういう・・・」


「これ以上無いくらい俺に惚れてみろ。そうしたら本当のお前を教えてやる。」



そう言って部屋を出ていってしまった。



そこで私は初めて意識するようになる。



湊都に対する自分の想いを。
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