ナナ

楪 ぷぷ。

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1章

Jealousy

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「いい女だな。」



頭からつま先まで舐めまわすように私を見て品定めする男たち。



Douxドゥーのナナです。」



と翔が紹介してくれる。



「はじめまして。良かったら今度いらしてくださいね。」



名刺を配り微笑む。



「検討しとくよ。」



言葉ではそう言いつつもすっかり男の眼になっている男たちに苦笑したいのを必死で抑える。



男たちが去っていく。



「疲れたろ?大丈夫?」


「大丈夫よ。ありがとう。」



翔に招待されたパーティー。



パーティーが苦手な私を配慮して早く帰ることを許可してくれた。



「あと何枚?」


「9。」



持ってきた名刺は40枚だったのに恐ろしいスピードでなくなってしまった。



「名刺が無くなったら帰るわ。」


「あぁ。もう少し頑張ろうか。」



自ら動かずとも翔に挨拶しに、または私に興味があって相手側から寄ってきてくれることのほうが多くて。



9枚あったはずの名刺は残り1枚になった。



「あと1枚よ。」


「もうここまで来ると誰に配っていないかわからないな。」


「寄ってくるのを待つしかないわね。」



とりあえず一息出来そうだと2人でお酒を飲む。



「ねぇ。」



意外に早かったな、寄ってくるの。



とは思ったものの声は女。 



振り向くと茶髪のロングヘアに白のドレスを着た可愛らしい女が翔を睨みつけていた。



「この女誰?」



失礼という言葉を知らないのだろうか。



思いっきり指をさされる。



「俺の好きな人。」



これまでに聞いたことないくらいに低い声。



声を聞くだけで不機嫌なことがわかった。



「好きな人?ふざけないで。」


「ふざけてねぇよ。」


「付き合ってるの?」


「残念ながら今はまだ。俺の片思いだ。」



その言葉を聞き女の形相が変わったのがわかった。



嫌な予感を感じ女の行動を注意深く見る。



「お前ももういいだろ。解放してくれ。」



その言葉を皮切りに女が翔に向かって手をあげたのが見え、慌ててその腕を掴む。



「何よっ!離しなさいよ!なんであんたみたいなやつが翔の隣にいれんのよ!」



腕を離そうと抵抗する女。



「こういう女だから。それに翔が好きになったのは私だからよ。」



とその手に名刺を握らせる。



翔が隣で息を飲むのがわかった。



「なんなのよ!」


「あんたの知ってる男に広めたら?きっと喜ぶわよ。」



女の腕を離しぶっきらぼうに言い捨てる。



「翔、随分と注目されちゃったみたいだし今日はもう帰るわね。」


「あぁ。ごめんな。」



会場が騒然とする中視線を浴びながら会場をあとにする。



タクシーを捕まえて家の住所を伝える。



今日は災難だったわね・・・。



十中八九あの女は翔の許嫁。



あんな常識のない女が許嫁だったら翔も苦労する。



きっと甘やかされて育ったのだろう。



時間を確認しようとスマホを開くと通知が1件。



湊都からだった。



内容を確認すると刺青についてだった。



刺青で思い出しデザインや入れる場所を調べる。



悩んだ末、タクシーの中で答えは出ず、また後日考えようと家に入りすぐに眠ってしまった。








なんでお金持ちはパーティーが好きなんだろう。



お金持ちのお金の使い道なんてだいたい同じなんじゃないのかっていつも思う。



高い食事に高い服。



高い時計に高い靴。



高い家に高い別荘。



高い女に騒ぐだけのパーティー。



それでも彼らにはお金が有り余るんだろう。



全くこの世は不平等だ。



努力の限りにお金が発生するならそれほどいいことは無いのに。








「ナナ。」


「いらっしゃい。ゆっくりしていってね。」



今回はDouxドゥーが主催するパーティー。



娼婦たちは和服を身につけ自分の客と談笑してる。



「あーー。疲れたぁぁぁ。」


「お疲れ様。」


「全く・・・。みんな解放してくれないんだもの。」


「客が多いほど仇になる稀なケースよね。」


「ほんとよ。」



白の着物に水色の花柄。



頭にはピンクの花が刺さっている。



ピンクの唇。



相変わらずのスタイルのララ。



「ララ~。」


「はーい。ナナも頑張ってね。行ってくるわ。」


「行ってらっしゃ~い。」



引っ張りだこのララに苦笑しながら手を振る。



「ナーナ。」


「翔!」


「この間はごめんね。」


「大丈夫よ。気にしてないわ。」


「相変わらず綺麗だね。」 



肩を大胆に露出した黒の着物。



紅の花。



金色の襟。



黒の華と鼈甲の簪。



高級娼婦と謳われた花魁のような格好。



「ありがとう。」


「今日は客全員が招待客なの?」


「一応ね。けどNo.5までの娼婦はお客様が多すぎるから指名制よ。」


「じゃあ俺がここに来れたのはナナのおかげなんだね。」


「翔を招待しなくて誰を招待するって言うの?」


「あんまり可愛らしいこと言わないでくれよ。一人占めしたくなる。」



腰を折り曲げ耳元で囁かれる。



「でも今日はナナを一人占めしようものなら沢山の人を敵に回しちゃうからね。我慢しとくよ。」


「ありがとう。楽しんでいって。」


「あぁ。」



会場を見渡すと招待客の9割はもう到着しているようだった。



今回、オーナーからパーティーの責任係も任されている以上接客ばかりしていられない。



客に囲まれて微笑みながら談笑してるララの方に歩を進める。



「皆様、お忙しい中、今日はお越しいただきありがとうございます。少しの間ララ借りますね?」



ララの腕を引っ張り群衆から引き離す。



「どうしたの?」


「招待したお客様って全員来た?」


「ナナのお客様2人がまだ来てないわ。宮本様と天木様。」


「宮本さんからは行けないっていう連絡が来てたわ。」


「天木様は?」 


「分かんない・・・。」


「それ以外は揃ってるわ。特別イベントもないんだし気にすることないんじゃない?ただお金が一人分無駄になっちゃうけど。」


「そうね・・・。分かった。ありがとう。」



それからはいらっしゃったお客様の相手をした。



結局パーティーが終わるまで湊都は来なかった。
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