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15 ★リアラ視点 転移魔法
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★リアラ視点
時間は遡りパーティー開始前。1階のホールにて。
勝ったと思った。やっぱりパーティに誘われたのは僕だったのだから。
僕は獣人の中でも最も美しいとされるアルビノ種だった。しかもこの国で最も美しい王子様のペット。人生勝ち組だった。
一目見た時、王子に恋をした。銀髪のサラサラ髪が風に靡いて、髪を抑えた彼と一瞬目があった。非の打ち所のない美しい顔だった。
絵本で見た王子様を具現化したような存在。表面的には温厚で優しそうなのに、何も映さない暗い瞳をしていて…。そのミステリアスな雰囲気に飲み込まれていった。
お城に来て何一つ不自由ない暮らしが手に入った。甘いお菓子に香りのいい紅茶、大きな書庫。
お城に来た当初、王子様はよく僕に会いに来てくれた。他愛もない会話をするだけだったけど、それはとても楽しくて幸せな時間だった。
それなのに…あいつが来て全て変わってしまった。王子様は僕のところに週1でしか来てくれなくなったし、会話の内容はほとんどあの忌々しいクロネコのことばかりだった。
僕の中にどす黒い感情が湧いてきて、そしてそれは一匹のクロネコに向けられた。
そしてこの前、中庭で見てしまったんだ。王子が愛おしそうな顔をしてあいつを見つめていた。
手をつなぎ、愛を囁いていた。
僕の方がずっと綺麗で美しくて、王子様のことが前から好きなのに。
「はい、リアラ」
「ありがとうレオ様…」
世界一美しい王子様は僕にグラスを手渡した。そうだ、今はあいつはいないんだ。パンパンと頬を叩くと、少し風に当たりたいという王子についてバルコニーに出た。
パーティーが始まるまであと少しだ。レオ様は遠くの景色をぼんやりと見つめた。僕はこの目が嫌いだ。何を考えているのかわからない瞳。もっと僕のことを見てくれればいいのに。
まさかあいつのことが気になっているんじゃないよね…?
今頃あいつは城の外にいるはずだ。朝こっそりと部屋の結界を破壊しておいたから。どんな魔法にも欠点というものはある。レオ様の魔法を長いこと見てきて、毎日魔法の勉強を欠かさず行ってきた僕にだからこそ出来たことだった。
クロが外に逃げたがってるのは前から知っていた。
ペットは僕だけでいい。念のために用意しておいたあれも杞憂だったかもしれない。思わず口角が上がった。
暫くすると、レオ様の兄がやってきた。
「ひぇっ」
「わぉ、リアラ君じゃないですか!」
なんとなくこいつが嫌いだ。ベタベタしてくるのがうっとおしい。僕が一歩後ろに下がるとお兄さんは苦笑いをした。
そしてあたりをキョロキョロ見回し、王子に尋ねる。
「レオ、あれ?クロくんはどうしたんですか」
「…」
その言葉に王子はピクリと片眉を動かした。そして兄を睨みつける。
「置いてきた」
「ええ…あんなに執着してたのに?なんでですか?」
置いてきた理由?そんなの当然だろう。あんな汚いクロネコパーティーに呼べるわけがない。今日はたくさんの貴族が来るんだ。周りからどんな目で見られるかわかったもんじゃない。
本当に王子様のペットにふさわしいのは美しいこの僕なのだ。
そしてしばらく黙りこんだ後、レオ様は口を開いた。
「見せたくないんだ」
「ほう…?」
その言葉に思わず吹き出しそうになる。しかしレオ様の顔を見て頭が真っ白になった。
王子は顔を赤らめてむすっとした、拗ねたような表情をしていた。そして続ける。
「あいつに変な虫がついたら困るからね」
…。
「うわー独占欲すごいですね」
僕はまるで頭上から冷水の入ったバケツをひっくり返されたような気分だった。
自分が…僕が、レオ様に選ばれたからここにいるのではないということを知らされた。僕は特別なんかじゃなかった。ただ、代用品なんだ。あいつの。
頭にかぁーっと血が上る。くそ、くそ…くそ!あいつが、あいつさえいなければ!なんであいつばっかりいつもいつも。
僕はその場にいれなくなってホールを飛び出した。
「なんで…なんで!」
怒りと悲しみが同時に沸き起こり頭がパニックになる。
アイツを排除しなくては。
物置小屋として使われてる部屋の扉を勢いよく開けた。
「はぁ、はぁ、はぁ」
暗い部屋には誰もいない。
これが最後の頼みだ。部屋のカーペットを勢いよく捲った。机や椅子が倒れるのも厭わない。
するとそこには大きな魔法陣が現れた。僕がずっと数ヶ月前から書き続けた最高傑作だ。
レオ様のように凄腕の魔法使いではないけれど、本を見て見よう見まねで書き上げた。転移魔法がしこまれた魔法陣だ。
あいつを探さなくては…。これであいつをもう二度とレオ様の目の前に現れないように遠くの国へ飛ばすんだ。クロはもう城の外だろうけど、念の為城内を探しに行かなくては。このタイミングでしかクロをここに連れてくることはできないのだから。
僕はガリガリと親指の爪を噛んだ。
ガタンッ。
その時、クローゼットの中から物音がした。
「誰だ!」
呼びかけるが返答はない。まだクロを見つけていない以上これを誰かに見られるわけにはいかない。
ズカズカと物音がした方に歩み寄った。そしてクローゼットの扉を開ける。
するとそこにはなんと…。なんと、僕が一番探していた憎い憎いあいつがいたんだ。
時間は遡りパーティー開始前。1階のホールにて。
勝ったと思った。やっぱりパーティに誘われたのは僕だったのだから。
僕は獣人の中でも最も美しいとされるアルビノ種だった。しかもこの国で最も美しい王子様のペット。人生勝ち組だった。
一目見た時、王子に恋をした。銀髪のサラサラ髪が風に靡いて、髪を抑えた彼と一瞬目があった。非の打ち所のない美しい顔だった。
絵本で見た王子様を具現化したような存在。表面的には温厚で優しそうなのに、何も映さない暗い瞳をしていて…。そのミステリアスな雰囲気に飲み込まれていった。
お城に来て何一つ不自由ない暮らしが手に入った。甘いお菓子に香りのいい紅茶、大きな書庫。
お城に来た当初、王子様はよく僕に会いに来てくれた。他愛もない会話をするだけだったけど、それはとても楽しくて幸せな時間だった。
それなのに…あいつが来て全て変わってしまった。王子様は僕のところに週1でしか来てくれなくなったし、会話の内容はほとんどあの忌々しいクロネコのことばかりだった。
僕の中にどす黒い感情が湧いてきて、そしてそれは一匹のクロネコに向けられた。
そしてこの前、中庭で見てしまったんだ。王子が愛おしそうな顔をしてあいつを見つめていた。
手をつなぎ、愛を囁いていた。
僕の方がずっと綺麗で美しくて、王子様のことが前から好きなのに。
「はい、リアラ」
「ありがとうレオ様…」
世界一美しい王子様は僕にグラスを手渡した。そうだ、今はあいつはいないんだ。パンパンと頬を叩くと、少し風に当たりたいという王子についてバルコニーに出た。
パーティーが始まるまであと少しだ。レオ様は遠くの景色をぼんやりと見つめた。僕はこの目が嫌いだ。何を考えているのかわからない瞳。もっと僕のことを見てくれればいいのに。
まさかあいつのことが気になっているんじゃないよね…?
今頃あいつは城の外にいるはずだ。朝こっそりと部屋の結界を破壊しておいたから。どんな魔法にも欠点というものはある。レオ様の魔法を長いこと見てきて、毎日魔法の勉強を欠かさず行ってきた僕にだからこそ出来たことだった。
クロが外に逃げたがってるのは前から知っていた。
ペットは僕だけでいい。念のために用意しておいたあれも杞憂だったかもしれない。思わず口角が上がった。
暫くすると、レオ様の兄がやってきた。
「ひぇっ」
「わぉ、リアラ君じゃないですか!」
なんとなくこいつが嫌いだ。ベタベタしてくるのがうっとおしい。僕が一歩後ろに下がるとお兄さんは苦笑いをした。
そしてあたりをキョロキョロ見回し、王子に尋ねる。
「レオ、あれ?クロくんはどうしたんですか」
「…」
その言葉に王子はピクリと片眉を動かした。そして兄を睨みつける。
「置いてきた」
「ええ…あんなに執着してたのに?なんでですか?」
置いてきた理由?そんなの当然だろう。あんな汚いクロネコパーティーに呼べるわけがない。今日はたくさんの貴族が来るんだ。周りからどんな目で見られるかわかったもんじゃない。
本当に王子様のペットにふさわしいのは美しいこの僕なのだ。
そしてしばらく黙りこんだ後、レオ様は口を開いた。
「見せたくないんだ」
「ほう…?」
その言葉に思わず吹き出しそうになる。しかしレオ様の顔を見て頭が真っ白になった。
王子は顔を赤らめてむすっとした、拗ねたような表情をしていた。そして続ける。
「あいつに変な虫がついたら困るからね」
…。
「うわー独占欲すごいですね」
僕はまるで頭上から冷水の入ったバケツをひっくり返されたような気分だった。
自分が…僕が、レオ様に選ばれたからここにいるのではないということを知らされた。僕は特別なんかじゃなかった。ただ、代用品なんだ。あいつの。
頭にかぁーっと血が上る。くそ、くそ…くそ!あいつが、あいつさえいなければ!なんであいつばっかりいつもいつも。
僕はその場にいれなくなってホールを飛び出した。
「なんで…なんで!」
怒りと悲しみが同時に沸き起こり頭がパニックになる。
アイツを排除しなくては。
物置小屋として使われてる部屋の扉を勢いよく開けた。
「はぁ、はぁ、はぁ」
暗い部屋には誰もいない。
これが最後の頼みだ。部屋のカーペットを勢いよく捲った。机や椅子が倒れるのも厭わない。
するとそこには大きな魔法陣が現れた。僕がずっと数ヶ月前から書き続けた最高傑作だ。
レオ様のように凄腕の魔法使いではないけれど、本を見て見よう見まねで書き上げた。転移魔法がしこまれた魔法陣だ。
あいつを探さなくては…。これであいつをもう二度とレオ様の目の前に現れないように遠くの国へ飛ばすんだ。クロはもう城の外だろうけど、念の為城内を探しに行かなくては。このタイミングでしかクロをここに連れてくることはできないのだから。
僕はガリガリと親指の爪を噛んだ。
ガタンッ。
その時、クローゼットの中から物音がした。
「誰だ!」
呼びかけるが返答はない。まだクロを見つけていない以上これを誰かに見られるわけにはいかない。
ズカズカと物音がした方に歩み寄った。そしてクローゼットの扉を開ける。
するとそこにはなんと…。なんと、僕が一番探していた憎い憎いあいつがいたんだ。
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