【R18】【Bl】死にかけ獣人が腹黒ドS王子様のペットになって溺愛される話

ペーパーナイフ

文字の大きさ
上 下
14 / 20

14 王子様のペット

しおりを挟む
 それから俺は言われるがまま採寸をされ、きせかえ人形にされた。この色が似合うとかこれじゃないだとか使用人は大忙しだった。



「はぁ…レオ、結局パーティーについて何も教えてくれなかったな」

 ここ一週間、王子とは毎日顔を合わせていたが、彼の口からパーティーに関することは一切出てこなかった。いよいよ明日が例のパーティの日だというのに。

 もしも本当に彼が俺のことを信用してくれてパーティへの参加が許されるならそれはとても嬉しいことだ。

 ずっと自分がなぜ監禁されているのか考えていた。レオは逃げないためだと言っていたけど本当は表に出すのが恥ずかしいからではないのだろうか。

 俺はリアラと違って美しくないしそのへんによくいる目つきの悪い黒猫の獣人だ。ペットとして紹介するのがみっともないと思われていたら少しショックだった。







「あのさレオ」

「クロ、早起きだね?」

 翌日の朝、王子は日の出とともに起床した。最近彼は俺の部屋で朝まで寝て過ごすようになった。しかしいつも俺のほうが起床時間が遅いから朝の挨拶をすることは殆どない。

 でも今日は違った。俺は意を決してここ一週間尋ねたかったことを口にする。

「今日…パーティあるんだよな」

 すると王子はなぜそれを知っているのかと言いたげに目を見開いた。

「執事に聞いたんだけど…俺も参加したいなって思…」

「だめだ」

 しかし俺が言い終わらないうちにレオが言葉をかぶせてきた。

「…」

「言ったよね?クロはこの部屋から出れない」

 やっぱりだめか。分かっていたけど実際聞くと結構ダメージが来る。

「わかった」

 それだけ言うと俺は布団に潜った。その時、コンコンコンと誰かがドアをノックする音が聞こえた。こんな早朝に誰だろうか。

「あの、レオ様こちらにいると伺ったのですが…」

 透明感があって繊細な声だった。俺がよく知ってる人の声。

「あぁ、リアラ。今から支度するよ」

 訪ねてきたのはアルビノの美しい獣人だった。王子は立ち上がるとドアまで歩み寄った。

「…この部屋レオ様のお部屋じゃないですよね…?」

 リアラは部屋の中を覗き込むとベッドで丸まる俺を見つめた。一瞬驚きの表情をしたあと、憎悪の感情を剥き出しにし顔を歪めた。

「お前‥チッ」

「…っ」

「はあーーーっ。レオ様早く行こ?パーティの準備しないと」

「あぁ」

 リアラはコテンと頭を傾けるとレオの腕に抱きつく。そして王子もそれを許容した。傍から見たらとてもお似合いな二人だった。

「クロ、今日は一日僕がレオ様と一緒にいるから安心してね~」

 リアラは笑顔でそう言うと、ドアの向こうに王子を引っ張っていった。レオは…ちらりと一瞬こちらを見たが、何も言わずに部屋を出ていってしまった。

「…なんだよ」

 結局選ばれたのはリアラだったのか。一瞬でも、もしかしたら自分が選ばれるかもしれないなんて思ったのが恥ずかしい。







 俺は夕方まで寝て過ごすことにした。窓の外を見るとぞろぞろと馬車が城に入ってくるのが見えた。

「ちっ」

 退屈だ。俺は伸びをするとダメ元でドアに触れてみた。もしも今鍵が開いていたら…。今日はいろんな貴族たちがお城に出入りする日らしい。さっき確認したけど今日ばかりは門番の検問も緩くなってるっぽい。

 もしもドアが開いたら、この混乱に乗じて城を抜け出せるかもしれない。
 まぁでも今朝王子がしっかりと結界魔法をはって出ていったのを見たからそれはありえないんだけど。それでも念の為ドアノブを握ってみた。すると

ガチャッ。

「え…」


 なんと扉が開いたのだ。

「うそだろ…」

 今まで王子が結界を張り忘れたことなんて一度もない。足が震えた。

 どうしよう。

 昔聞いたことがある。檻の中にずっと閉じ込められていた犬は例え鍵が開いたって外には出ないらしい。

 多分自由が怖いんだ。もしくは閉じ込められるのが、当たり前だと思っているから外に出る自分をイメージできないんだ。

 俺は恐る恐る足を前に出した。床がある。大丈夫だ。一歩出るともう大丈夫だった。心臓がバクバクして自分がものすごく悪いことをしているような気がした。
 
 一瞬扉の方を振り返った。するとドアに小さな魔法陣のようなものが書かれたシールが貼ってある。

「これは何だ?」

 まぁ、今はどうでもいいか。

 俺は…これからどうしたい?額に汗が伝って手が震える。今頑張ればお城から逃げられるかもしれない。それは俺がずっと望んでいたことだった。でも…。

『そう…でも、お城から出ていきたいなんて絶対に言わないでね』

一瞬レオの悲しむ顔が浮かんで胸がチクリとした。思わず部屋のドアノブに手をかける。

『クロ、今日は一日僕がレオ様と一緒にいるから安心してね~』

「…いやあいつにはリアラがいるじゃん」
「…」
「…行くか」



 それから無我夢中で走った。お城の構造は複雑だから、どこが出口かなんてわからない。それでもよかった。

 しばらく廊下を走ると前から何やら笑い声が聞こえてきた。

「やべっ」

 俺は慌てて近くの部屋に入る。チラリとドアの隙間から廊下を覗くと、そこには2人の金髪の男が談笑しながら廊下を歩いているのが見えた。多分どこかの貴族だろう。

 もしかしたらまだパーティーは始まっていないのかもしれない。
 どうせ逃げるのならばパーティーが始まってからの方がいいだろう。獣人が城を彷徨いていたら目立つ。そう思った俺はしばらくこの部屋に隠れることにした。

 幸い中には誰もいなかった。ただ部屋のカーテンは閉め切られており、暗くて室内がよく見えない。小さい部屋だった。なんなら少しカビ臭い気がする。物置かなにかだろうか。

「はぁーっ」

 俺は部屋の隅で体育座りをした。まだ心臓がバクバクいってる。きっと今頃1階のホールでは、パーティーのため多くの人で賑わってるのだろう。

 時間が経つに連れ暗闇にも目が慣れてきた。そして下から陽気な音楽が流れ始める。

 パーティーが始まったんだ。

 さてそろそろ行くか。そう思い立ち上がった時、俺はうっかりカーペットの端に足を引っ掛けてしまった。

「わっ」

 そのままどたんと床に倒れこみ鼻をぶつけた。

「 いてて‥なんだよこれ」

 よく見るとカーペットの端がめくれ上がっていた。危ないな…誰かが転んだらどうするんだよ!というか転んだわ。

「ん…?これなんだ?」

 そのとき、勢いよくドアが開かれた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレ化していた幼稚園ぶりの友人に食べられました

ミルク珈琲
BL
幼稚園の頃ずっと後ろを着いてきて、泣き虫だった男の子がいた。 「優ちゃんは絶対に僕のものにする♡」 ストーリーを分かりやすくするために少しだけ変更させて頂きましたm(_ _)m ・洸sideも投稿させて頂く予定です

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

美形な幼馴染のヤンデレ過ぎる執着愛

月夜の晩に
BL
愛が過ぎてヤンデレになった攻めくんの話。 ※ホラーです

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた

マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。 主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。 しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。 平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。 タイトルを変えました。 前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。 急に変えてしまい、すみません。  

頭の上に現れた数字が平凡な俺で抜いた数って冗談ですよね?

いぶぷろふぇ
BL
 ある日突然頭の上に謎の数字が見えるようになったごくごく普通の高校生、佐藤栄司。何やら規則性があるらしい数字だが、その意味は分からないまま。  ところが、数字が頭上にある事にも慣れたある日、クラス替えによって隣の席になった学年一のイケメン白田慶は数字に何やら心当たりがあるようで……?   頭上の数字を発端に、普通のはずの高校生がヤンデレ達の愛に巻き込まれていく!? 「白田君!? っていうか、和真も!? 慎吾まで!? ちょ、やめて! そんな目で見つめてこないで!」 美形ヤンデレ攻め×平凡受け ※この作品は以前ぷらいべったーに載せた作品を改題・改稿したものです ※物語は高校生から始まりますが、主人公が成人する後半まで性描写はありません

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

処理中です...