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14 王子様のペット
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それから俺は言われるがまま採寸をされ、きせかえ人形にされた。この色が似合うとかこれじゃないだとか使用人は大忙しだった。
「はぁ…レオ、結局パーティーについて何も教えてくれなかったな」
ここ一週間、王子とは毎日顔を合わせていたが、彼の口からパーティーに関することは一切出てこなかった。いよいよ明日が例のパーティの日だというのに。
もしも本当に彼が俺のことを信用してくれてパーティへの参加が許されるならそれはとても嬉しいことだ。
ずっと自分がなぜ監禁されているのか考えていた。レオは逃げないためだと言っていたけど本当は表に出すのが恥ずかしいからではないのだろうか。
俺はリアラと違って美しくないしそのへんによくいる目つきの悪い黒猫の獣人だ。ペットとして紹介するのがみっともないと思われていたら少しショックだった。
「あのさレオ」
「クロ、早起きだね?」
翌日の朝、王子は日の出とともに起床した。最近彼は俺の部屋で朝まで寝て過ごすようになった。しかしいつも俺のほうが起床時間が遅いから朝の挨拶をすることは殆どない。
でも今日は違った。俺は意を決してここ一週間尋ねたかったことを口にする。
「今日…パーティあるんだよな」
すると王子はなぜそれを知っているのかと言いたげに目を見開いた。
「執事に聞いたんだけど…俺も参加したいなって思…」
「だめだ」
しかし俺が言い終わらないうちにレオが言葉をかぶせてきた。
「…」
「言ったよね?クロはこの部屋から出れない」
やっぱりだめか。分かっていたけど実際聞くと結構ダメージが来る。
「わかった」
それだけ言うと俺は布団に潜った。その時、コンコンコンと誰かがドアをノックする音が聞こえた。こんな早朝に誰だろうか。
「あの、レオ様こちらにいると伺ったのですが…」
透明感があって繊細な声だった。俺がよく知ってる人の声。
「あぁ、リアラ。今から支度するよ」
訪ねてきたのはアルビノの美しい獣人だった。王子は立ち上がるとドアまで歩み寄った。
「…この部屋レオ様のお部屋じゃないですよね…?」
リアラは部屋の中を覗き込むとベッドで丸まる俺を見つめた。一瞬驚きの表情をしたあと、憎悪の感情を剥き出しにし顔を歪めた。
「お前‥チッ」
「…っ」
「はあーーーっ。レオ様早く行こ?パーティの準備しないと」
「あぁ」
リアラはコテンと頭を傾けるとレオの腕に抱きつく。そして王子もそれを許容した。傍から見たらとてもお似合いな二人だった。
「クロ、今日は一日僕がレオ様と一緒にいるから安心してね~」
リアラは笑顔でそう言うと、ドアの向こうに王子を引っ張っていった。レオは…ちらりと一瞬こちらを見たが、何も言わずに部屋を出ていってしまった。
「…なんだよ」
結局選ばれたのはリアラだったのか。一瞬でも、もしかしたら自分が選ばれるかもしれないなんて思ったのが恥ずかしい。
俺は夕方まで寝て過ごすことにした。窓の外を見るとぞろぞろと馬車が城に入ってくるのが見えた。
「ちっ」
退屈だ。俺は伸びをするとダメ元でドアに触れてみた。もしも今鍵が開いていたら…。今日はいろんな貴族たちがお城に出入りする日らしい。さっき確認したけど今日ばかりは門番の検問も緩くなってるっぽい。
もしもドアが開いたら、この混乱に乗じて城を抜け出せるかもしれない。
まぁでも今朝王子がしっかりと結界魔法をはって出ていったのを見たからそれはありえないんだけど。それでも念の為ドアノブを握ってみた。すると
ガチャッ。
「え…」
なんと扉が開いたのだ。
「うそだろ…」
今まで王子が結界を張り忘れたことなんて一度もない。足が震えた。
どうしよう。
昔聞いたことがある。檻の中にずっと閉じ込められていた犬は例え鍵が開いたって外には出ないらしい。
多分自由が怖いんだ。もしくは閉じ込められるのが、当たり前だと思っているから外に出る自分をイメージできないんだ。
俺は恐る恐る足を前に出した。床がある。大丈夫だ。一歩出るともう大丈夫だった。心臓がバクバクして自分がものすごく悪いことをしているような気がした。
一瞬扉の方を振り返った。するとドアに小さな魔法陣のようなものが書かれたシールが貼ってある。
「これは何だ?」
まぁ、今はどうでもいいか。
俺は…これからどうしたい?額に汗が伝って手が震える。今頑張ればお城から逃げられるかもしれない。それは俺がずっと望んでいたことだった。でも…。
『そう…でも、お城から出ていきたいなんて絶対に言わないでね』
一瞬レオの悲しむ顔が浮かんで胸がチクリとした。思わず部屋のドアノブに手をかける。
『クロ、今日は一日僕がレオ様と一緒にいるから安心してね~』
「…いやあいつにはリアラがいるじゃん」
「…」
「…行くか」
それから無我夢中で走った。お城の構造は複雑だから、どこが出口かなんてわからない。それでもよかった。
しばらく廊下を走ると前から何やら笑い声が聞こえてきた。
「やべっ」
俺は慌てて近くの部屋に入る。チラリとドアの隙間から廊下を覗くと、そこには2人の金髪の男が談笑しながら廊下を歩いているのが見えた。多分どこかの貴族だろう。
もしかしたらまだパーティーは始まっていないのかもしれない。
どうせ逃げるのならばパーティーが始まってからの方がいいだろう。獣人が城を彷徨いていたら目立つ。そう思った俺はしばらくこの部屋に隠れることにした。
幸い中には誰もいなかった。ただ部屋のカーテンは閉め切られており、暗くて室内がよく見えない。小さい部屋だった。なんなら少しカビ臭い気がする。物置かなにかだろうか。
「はぁーっ」
俺は部屋の隅で体育座りをした。まだ心臓がバクバクいってる。きっと今頃1階のホールでは、パーティーのため多くの人で賑わってるのだろう。
時間が経つに連れ暗闇にも目が慣れてきた。そして下から陽気な音楽が流れ始める。
パーティーが始まったんだ。
さてそろそろ行くか。そう思い立ち上がった時、俺はうっかりカーペットの端に足を引っ掛けてしまった。
「わっ」
そのままどたんと床に倒れこみ鼻をぶつけた。
「 いてて‥なんだよこれ」
よく見るとカーペットの端がめくれ上がっていた。危ないな…誰かが転んだらどうするんだよ!というか転んだわ。
「ん…?これなんだ?」
そのとき、勢いよくドアが開かれた。
「はぁ…レオ、結局パーティーについて何も教えてくれなかったな」
ここ一週間、王子とは毎日顔を合わせていたが、彼の口からパーティーに関することは一切出てこなかった。いよいよ明日が例のパーティの日だというのに。
もしも本当に彼が俺のことを信用してくれてパーティへの参加が許されるならそれはとても嬉しいことだ。
ずっと自分がなぜ監禁されているのか考えていた。レオは逃げないためだと言っていたけど本当は表に出すのが恥ずかしいからではないのだろうか。
俺はリアラと違って美しくないしそのへんによくいる目つきの悪い黒猫の獣人だ。ペットとして紹介するのがみっともないと思われていたら少しショックだった。
「あのさレオ」
「クロ、早起きだね?」
翌日の朝、王子は日の出とともに起床した。最近彼は俺の部屋で朝まで寝て過ごすようになった。しかしいつも俺のほうが起床時間が遅いから朝の挨拶をすることは殆どない。
でも今日は違った。俺は意を決してここ一週間尋ねたかったことを口にする。
「今日…パーティあるんだよな」
すると王子はなぜそれを知っているのかと言いたげに目を見開いた。
「執事に聞いたんだけど…俺も参加したいなって思…」
「だめだ」
しかし俺が言い終わらないうちにレオが言葉をかぶせてきた。
「…」
「言ったよね?クロはこの部屋から出れない」
やっぱりだめか。分かっていたけど実際聞くと結構ダメージが来る。
「わかった」
それだけ言うと俺は布団に潜った。その時、コンコンコンと誰かがドアをノックする音が聞こえた。こんな早朝に誰だろうか。
「あの、レオ様こちらにいると伺ったのですが…」
透明感があって繊細な声だった。俺がよく知ってる人の声。
「あぁ、リアラ。今から支度するよ」
訪ねてきたのはアルビノの美しい獣人だった。王子は立ち上がるとドアまで歩み寄った。
「…この部屋レオ様のお部屋じゃないですよね…?」
リアラは部屋の中を覗き込むとベッドで丸まる俺を見つめた。一瞬驚きの表情をしたあと、憎悪の感情を剥き出しにし顔を歪めた。
「お前‥チッ」
「…っ」
「はあーーーっ。レオ様早く行こ?パーティの準備しないと」
「あぁ」
リアラはコテンと頭を傾けるとレオの腕に抱きつく。そして王子もそれを許容した。傍から見たらとてもお似合いな二人だった。
「クロ、今日は一日僕がレオ様と一緒にいるから安心してね~」
リアラは笑顔でそう言うと、ドアの向こうに王子を引っ張っていった。レオは…ちらりと一瞬こちらを見たが、何も言わずに部屋を出ていってしまった。
「…なんだよ」
結局選ばれたのはリアラだったのか。一瞬でも、もしかしたら自分が選ばれるかもしれないなんて思ったのが恥ずかしい。
俺は夕方まで寝て過ごすことにした。窓の外を見るとぞろぞろと馬車が城に入ってくるのが見えた。
「ちっ」
退屈だ。俺は伸びをするとダメ元でドアに触れてみた。もしも今鍵が開いていたら…。今日はいろんな貴族たちがお城に出入りする日らしい。さっき確認したけど今日ばかりは門番の検問も緩くなってるっぽい。
もしもドアが開いたら、この混乱に乗じて城を抜け出せるかもしれない。
まぁでも今朝王子がしっかりと結界魔法をはって出ていったのを見たからそれはありえないんだけど。それでも念の為ドアノブを握ってみた。すると
ガチャッ。
「え…」
なんと扉が開いたのだ。
「うそだろ…」
今まで王子が結界を張り忘れたことなんて一度もない。足が震えた。
どうしよう。
昔聞いたことがある。檻の中にずっと閉じ込められていた犬は例え鍵が開いたって外には出ないらしい。
多分自由が怖いんだ。もしくは閉じ込められるのが、当たり前だと思っているから外に出る自分をイメージできないんだ。
俺は恐る恐る足を前に出した。床がある。大丈夫だ。一歩出るともう大丈夫だった。心臓がバクバクして自分がものすごく悪いことをしているような気がした。
一瞬扉の方を振り返った。するとドアに小さな魔法陣のようなものが書かれたシールが貼ってある。
「これは何だ?」
まぁ、今はどうでもいいか。
俺は…これからどうしたい?額に汗が伝って手が震える。今頑張ればお城から逃げられるかもしれない。それは俺がずっと望んでいたことだった。でも…。
『そう…でも、お城から出ていきたいなんて絶対に言わないでね』
一瞬レオの悲しむ顔が浮かんで胸がチクリとした。思わず部屋のドアノブに手をかける。
『クロ、今日は一日僕がレオ様と一緒にいるから安心してね~』
「…いやあいつにはリアラがいるじゃん」
「…」
「…行くか」
それから無我夢中で走った。お城の構造は複雑だから、どこが出口かなんてわからない。それでもよかった。
しばらく廊下を走ると前から何やら笑い声が聞こえてきた。
「やべっ」
俺は慌てて近くの部屋に入る。チラリとドアの隙間から廊下を覗くと、そこには2人の金髪の男が談笑しながら廊下を歩いているのが見えた。多分どこかの貴族だろう。
もしかしたらまだパーティーは始まっていないのかもしれない。
どうせ逃げるのならばパーティーが始まってからの方がいいだろう。獣人が城を彷徨いていたら目立つ。そう思った俺はしばらくこの部屋に隠れることにした。
幸い中には誰もいなかった。ただ部屋のカーテンは閉め切られており、暗くて室内がよく見えない。小さい部屋だった。なんなら少しカビ臭い気がする。物置かなにかだろうか。
「はぁーっ」
俺は部屋の隅で体育座りをした。まだ心臓がバクバクいってる。きっと今頃1階のホールでは、パーティーのため多くの人で賑わってるのだろう。
時間が経つに連れ暗闇にも目が慣れてきた。そして下から陽気な音楽が流れ始める。
パーティーが始まったんだ。
さてそろそろ行くか。そう思い立ち上がった時、俺はうっかりカーペットの端に足を引っ掛けてしまった。
「わっ」
そのままどたんと床に倒れこみ鼻をぶつけた。
「 いてて‥なんだよこれ」
よく見るとカーペットの端がめくれ上がっていた。危ないな…誰かが転んだらどうするんだよ!というか転んだわ。
「ん…?これなんだ?」
そのとき、勢いよくドアが開かれた。
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