【R18】【Bl】死にかけ獣人が腹黒ドS王子様のペットになって溺愛される話

ペーパーナイフ

文字の大きさ
上 下
16 / 20

16 異国でどうやって生きていこうか

しおりを挟む
★クロ視点

「リ、リ、リアラ‥っ?!」

 誰かが部屋に入ってきて、とっさにクローゼットの中に隠れたがバレてしまった。しかし部屋に乱入してきたのはなんとリアラだった。

 なんで…パーティー会場にいるんじゃなかったのかよ。

 やばい…。抜け出したことをチクられるかもしれない。あと少しで城から出れそうだったのにクソ…!

 俺はキッと彼を下から睨みつけた。一方彼は目を丸くして暫く俺を見つめた。

 真っ暗の部屋で彼の目が光って見える。なんだか不気味だ。リアラはニヤリと満面の笑みを浮かべた。

「探す手間が省けたよ」

「はっ、?」

 そして勢いよく俺の腕を掴んだ。

「ちょっちょっとまってくれ、えっとその…トイレに行きたくて部屋を出ただけなんだ…だから…」

 彼はこちらの話に全く耳を傾けず、魔法陣の中に俺を突き飛ばした。

「わっ」

 ドタっと硬い床に尻餅をつく。

 さっきリアラが部屋に乱入してくる前、俺は偶然この不気味な魔法陣を見つけてしまった。
 魔法陣なんて今時書くやつがいるなんて…と感心していた。
 でもなんでリアラがここにいるんだろうか。パーティーはどうしたんだ。それにこの魔法陣はもしかして彼が書いたのだろうか。

「あの…」

「なんで」

「…え?」

「なんでいつもお前なんだよ!僕のほうが王子のこと好きなのに!なんでなんでなんでなんでなんで」

「…リアラ?」

 なんだか様子がおかしい。

「早くどっかに消えてよ!僕たちのいないところに行けよ」

「…」

 そうやって怒鳴り散らす彼の目には大粒の涙が浮かんでいた。

「何?それともレオ様のことが好きになっちゃったの?ふふ、バカだね。君みたいな汚い猫レオ様は相手になんかしないのにさ」

「お前は遊びなんだよ。性欲発散の道具。いつか捨てられる飽きられる」

 彼が俺に向かって両手を伸ばすと、黄色い光が魔法陣を包み込んだ。

「強制転移魔法。消えろクロネコ」

 その瞬間、視界が真っ白になった。眩しくて目を閉じる。

 …そして次に目を開けた先は全く知らない土地だった。













「ここは…」

 周囲を見回すとここが町の路地裏であるということは理解できた。しかしどこなのだろうか。石でできた高い建物、ゴミ箱には数匹のネズミが群がっていた。さっきまで夜だったのに、空を見上げると青空が広がっている。

「強制転移魔法…まじか…」

 俺はどうやらリアラにどこかへ飛ばされたらしい。王都と随分時差のある場所、つまり遠くの異国へと転移された可能性が高い。

 とりあえず立ち上がると、人通りの多い道へ歩き始めた。そして人々を観察する。

 困ったときいちばん大切なのは冷静さを失わないことだ。今までそれでどうにかなってきた。

 町を行き交う人は皆、ひらひらした白い服を着ていた。やけに露出が激しい。そして身長は高く、日に焼けた肌に黒い髪と緑の目をしていた。

「にしてもあっちぃ…」

 俺はパタパタと服の襟を動かした。王都でもこんなに暑い日はなかった。やはりここが異国であることは理解したけど…これからどうしようか。

「☓☓☓」

「ん…?」

 その時、道を行き交う中の一人がなにか喋りながらこちらに向かってきた。身長の高い、日に焼けた肌にサラサラの黒髪をもつ男だった。四角い眼鏡をかけている。

「☓☓☓☓☓、☓☓」

「???」

 なにか怒ってるのか?それとも困惑してる?男は何かを必死に伝えようとしてくれているが如何せん言葉が通じない。

 俺は唖然としてその場に立ち尽くした。

 突然、男は俺の腕をつかむと歩き出した。

「あ、ちょっと待てよ。おい!」

 すると男はその場で立ち止まり後ろを振り返る。

「お前、もしかして王都の人間なのか」

「へ?」

 今、言葉通じたような…気のせいか?

「答えろ。この言語であっているか」

「あ、うん伝わる…お前セルトラル語喋れるのか」

「あぁ、王都の学校に通っているからな。一応二か国語喋れる」

 男は眼鏡をくいっとあげると俺から視線をそらさずにそういった。

「た、助かったぁ」

 全く知らない土地で母国語を聞くと安堵感がすごい。一気に体の力が抜けてその場にしゃがみこんだ。

「おい、具合でも悪いのか」

「いや、大丈夫…。それより、この国について教えてほしい」

「はぁ…」


 とりあえず、二人公園のベンチに腰掛けることにした。

 男の名前はシャロンというらしい。シャロンはこの国出身、王都の学生で、現在長期休みで帰省しているという。そしてここはマーラハラントという地域で王都からかなり離れたところにあるらしい。

「なるほどな…」

「クロは何故手ぶらであんなところにいたんだ。あの路地は犯罪が横行していることで有名だ。観光なら別のところにしてくれ」

「あー観光と言うか…。転移魔法で飛ばされたっぽいんだ」

「転移魔法?」

 シャロンは訝しげにこちらを見た。

「んーなんか、いろいろあってさ…まぁこれはこれれで俺の望んでた結果なんだけど」

「ほぅ」

「でも流石に言語通じないのはやばいんだよな…せめて王都に帰りたくて…。帰り方とか知らないか。あんた魔法学生なんだろ?」

「転移魔法は上級魔法使いしか使えないから無理だ。何ヶ月も歩くか、もしくは魔法石を使って移動する必要がある」

「魔法石はどこで手に入るんだ?」

「まぁ、そのへんの店では売ってないだろうな。そもそも魔法石はものすごく高価な代物だが、お前金はあるのか?」

「いや…」

「そうか…」

「えっと…ってことは俺もう戻れないってことか?」

 シャロンの顔を覗き込んだ。どうしようか。城から出たいとは思っていたが全く知らない国で生活していける自信はない。

「私が三ヶ月後、学校に戻るタイミングで良ければ送れる」

「本当に?!」

「あぁ、王都で帰りの魔法石を買ってきたからな」

「ありがとう!ぜひよろしくお願いします!!」

 助かったぁ。シャロンというこの神によってどうにかまだ生きていけそうだ。俺は深く頭を下げた。

「あぁ…なぁ、あとそれから…三ヶ月間、俺でも働けるところとか住める場所ないかな」

「難しいだろうな。この地域でセントラル語を話せるやつなんてそうそういない」

「だよなー」

「そもそもこの国に不正侵入してる時点で移住権もないだろう」

「はぁ…詰んだ。三ヶ月どうしよう…」

「…」

 シャロンは俺から視線を外すと足を組み直した。

「私も昔一度家出をしたことがある」

「え?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレ化していた幼稚園ぶりの友人に食べられました

ミルク珈琲
BL
幼稚園の頃ずっと後ろを着いてきて、泣き虫だった男の子がいた。 「優ちゃんは絶対に僕のものにする♡」 ストーリーを分かりやすくするために少しだけ変更させて頂きましたm(_ _)m ・洸sideも投稿させて頂く予定です

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

美形な幼馴染のヤンデレ過ぎる執着愛

月夜の晩に
BL
愛が過ぎてヤンデレになった攻めくんの話。 ※ホラーです

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた

マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。 主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。 しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。 平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。 タイトルを変えました。 前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。 急に変えてしまい、すみません。  

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

頭の上に現れた数字が平凡な俺で抜いた数って冗談ですよね?

いぶぷろふぇ
BL
 ある日突然頭の上に謎の数字が見えるようになったごくごく普通の高校生、佐藤栄司。何やら規則性があるらしい数字だが、その意味は分からないまま。  ところが、数字が頭上にある事にも慣れたある日、クラス替えによって隣の席になった学年一のイケメン白田慶は数字に何やら心当たりがあるようで……?   頭上の数字を発端に、普通のはずの高校生がヤンデレ達の愛に巻き込まれていく!? 「白田君!? っていうか、和真も!? 慎吾まで!? ちょ、やめて! そんな目で見つめてこないで!」 美形ヤンデレ攻め×平凡受け ※この作品は以前ぷらいべったーに載せた作品を改題・改稿したものです ※物語は高校生から始まりますが、主人公が成人する後半まで性描写はありません

処理中です...