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転生国王は神の使いを寵愛する
最初の夜
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煮込み料理が見当たらないのも、水不足のせいだと思ったようだ。
「お水が足りないのなら、衛生面はどんな感じなんですか?」
リンは小首を傾げて言った。
……ああ、まずはそこを考えるか。
最初に思うのが飲み水に対しての不安でないのは、ある程度裕福な育ちなのだろうか。自分で出せるからこその余裕かもしれないが。
幸い、この国は川べりに酒の醸造所があるので、飲み物自体は困っていないのだが。
「光魔法の”浄化”が使えれば、身体を洗わなくても清潔は保てるよ。光属性を持たなくても浄化希望者は教会に行けばバートルアンが無料で掛けてくれる。教会では公衆衛生上、最低週に一度は掛けるよう推奨しているよ」
ここの城下町は衛生には厳しくしているため、二か月以上”浄化”していない民は城外追放と決まっているほどである。その努力の甲斐あって、我が国ではこの決まりを制定してからは伝染病が蔓延したことがない。
なので、可能であれば街ごとに教会があるのが好ましい。
わざわざ光属性の冒険者に依頼を出してまで綺麗にしたい住民はいないのだ。
*****
手本を見せた方が、自分で掛ける時もやりやすいだろう。
「では、試しにやってみようか? เอี่ยมอ่อง」
浄化の魔法を掛ける。
「わあ、」
リンは自分の髪などに触れ、確かめていた。
ああ、この世界に銭湯があれば、リンと一緒に入れただろうに。
残念ながら、まず風呂、という概念がないのだ。
「この辺に、川とか、水源はなかったっけ?」
「あるけど。遠いよ」
城下町を見る前に、軽くこの国の説明をするためにリンに見せた地図は、魔物の襲撃前のもので。今ではかなり変わってしまった箇所も多く、現在新しく編纂中である。
あの地図では比較的近くに川があったのだが、襲撃により、埋まってしまったのだ。
他は魔物の出る森の中に泉があるが、そこまで行って汲む者はいない。
「じゃあ、貯水池とか作っていいかな? 城壁の近くに空いてる土地があればいいんだけど……、」
遠慮がちに言うリンに。
「……え?」
ウッドロー公爵は不思議そうに首を傾げたが。
ああ、そうか。
”創造”のスキルを使えば、何もない土地にも”貯水池”を丸ごと作ることが可能なのか!
「オーソン、この国の最新の地図を」
オーソンに命じ、地図を持って来させた。この世界で精確な地図は最高機密事項にあたるのだが、神の使いになら見せてもかまわないだろう。
ウッドロー公爵も席を立ち、一緒に地図を覗き込んだ。
「ここがリズリーだ。この辺り一帯、現在荒野になっている」
改めて、この国の産業などを知りたいというリンに、この国の現在の状況を話す。
ここキングスレイは、大陸の中央であるため、海は遠い。塩は他国からの輸入、または岩塩を採掘することで賄っていた。
降水確率は高い方で、植物は育ちやすい。葉物の野菜や穀類、果物などが主だ。
現在はかなり減ってしまったが、肉や皮は魔物から得られ。鉱山からは鉄鉱石が採れるため、武器や防具は国内で賄える。
一部の果物や不足した野菜、布、魔石などは周辺国と取引している。
隣国のウェザビーは広大な牧草地で羊を飼っているため、布は潤沢で比較的安価で取引可能だ。
リンは地図を見ながら、この国のためになることを真剣に考えてくれているようだ。
真剣な顔も愛らしい。
*****
「じゃあ、明日はとりあえず貯水池の作成と、森の再生をしようと思います。いいですか?」
リンはウッドロー公爵の顔を見て言ったが。
ウッドロー公爵は、慌てて私を振り返り、意見を求めてきた。
仮にも国王代理なのだから、しっかりして欲しい。
「ああ。こちらからお願いしたいほどだ。やってもらえるとありがたい」
にっこりと笑ってみせた。
熱心に地図を見ていたリンだが。
見れば、うつらうつらと舟をこいでいる。
しっかりしているので、つい10歳の子供であることを忘れそうになってしまうが。肉体はまだまだ子供であった。
私もそうだが。精神は、肉体に引っ張られる傾向がある。36歳の精神を持っているが、17歳の肉体のせいで、どうも慎みを忘れがちになる。
リンもそうなのだろう。
声を潜め、皆に告げる。
「ここへ来たばかりで、一人で寝るのは寂しいだろう。私の部屋に連れて行く。使用人は下げるように」
「了解しました」
リンを起こさないよう、そっと抱き上げる。
ナムグンに乗せた時も思ったが。10歳の子というのは、こんなにも軽いのか。
もっと労わってやらねば。
*****
自室の寝室へ連れて行き、商会から運ばせた荷物から夜着を取り出す。
縫い目が肌に当たらないよう縫われた、やわらかな布地。
靴を脱がし、靴下留めを外し。シャツとハーフパンツを脱がすと、下着姿になった。
先程浄化魔法を掛けたが。おしぼりで身体を拭いてやったほうがいいだろうか?
拭いた方がさっぱりするだろう。
小さなタオルを水魔法で濡らし、絞ったもので首から拭う。
リンはすやすやと寝入っている。心地好いのかな?
……あ、足の付け根にも黒子があるな。
子供なんだが。妙に色っぽく見える時があるな。……何だかおかしな気になりそうだ。
早く夜着を着せて、私も寝よう。
リンに夜着を着せ。
私はいつものようにベッドへ潜った。
いつもと違うのは、傍らにあるこのぬくもりか。子供の体温は高いからな。
今夜はよく眠れそうだ。
おやすみ、リン。可愛い神の使い。
「お水が足りないのなら、衛生面はどんな感じなんですか?」
リンは小首を傾げて言った。
……ああ、まずはそこを考えるか。
最初に思うのが飲み水に対しての不安でないのは、ある程度裕福な育ちなのだろうか。自分で出せるからこその余裕かもしれないが。
幸い、この国は川べりに酒の醸造所があるので、飲み物自体は困っていないのだが。
「光魔法の”浄化”が使えれば、身体を洗わなくても清潔は保てるよ。光属性を持たなくても浄化希望者は教会に行けばバートルアンが無料で掛けてくれる。教会では公衆衛生上、最低週に一度は掛けるよう推奨しているよ」
ここの城下町は衛生には厳しくしているため、二か月以上”浄化”していない民は城外追放と決まっているほどである。その努力の甲斐あって、我が国ではこの決まりを制定してからは伝染病が蔓延したことがない。
なので、可能であれば街ごとに教会があるのが好ましい。
わざわざ光属性の冒険者に依頼を出してまで綺麗にしたい住民はいないのだ。
*****
手本を見せた方が、自分で掛ける時もやりやすいだろう。
「では、試しにやってみようか? เอี่ยมอ่อง」
浄化の魔法を掛ける。
「わあ、」
リンは自分の髪などに触れ、確かめていた。
ああ、この世界に銭湯があれば、リンと一緒に入れただろうに。
残念ながら、まず風呂、という概念がないのだ。
「この辺に、川とか、水源はなかったっけ?」
「あるけど。遠いよ」
城下町を見る前に、軽くこの国の説明をするためにリンに見せた地図は、魔物の襲撃前のもので。今ではかなり変わってしまった箇所も多く、現在新しく編纂中である。
あの地図では比較的近くに川があったのだが、襲撃により、埋まってしまったのだ。
他は魔物の出る森の中に泉があるが、そこまで行って汲む者はいない。
「じゃあ、貯水池とか作っていいかな? 城壁の近くに空いてる土地があればいいんだけど……、」
遠慮がちに言うリンに。
「……え?」
ウッドロー公爵は不思議そうに首を傾げたが。
ああ、そうか。
”創造”のスキルを使えば、何もない土地にも”貯水池”を丸ごと作ることが可能なのか!
「オーソン、この国の最新の地図を」
オーソンに命じ、地図を持って来させた。この世界で精確な地図は最高機密事項にあたるのだが、神の使いになら見せてもかまわないだろう。
ウッドロー公爵も席を立ち、一緒に地図を覗き込んだ。
「ここがリズリーだ。この辺り一帯、現在荒野になっている」
改めて、この国の産業などを知りたいというリンに、この国の現在の状況を話す。
ここキングスレイは、大陸の中央であるため、海は遠い。塩は他国からの輸入、または岩塩を採掘することで賄っていた。
降水確率は高い方で、植物は育ちやすい。葉物の野菜や穀類、果物などが主だ。
現在はかなり減ってしまったが、肉や皮は魔物から得られ。鉱山からは鉄鉱石が採れるため、武器や防具は国内で賄える。
一部の果物や不足した野菜、布、魔石などは周辺国と取引している。
隣国のウェザビーは広大な牧草地で羊を飼っているため、布は潤沢で比較的安価で取引可能だ。
リンは地図を見ながら、この国のためになることを真剣に考えてくれているようだ。
真剣な顔も愛らしい。
*****
「じゃあ、明日はとりあえず貯水池の作成と、森の再生をしようと思います。いいですか?」
リンはウッドロー公爵の顔を見て言ったが。
ウッドロー公爵は、慌てて私を振り返り、意見を求めてきた。
仮にも国王代理なのだから、しっかりして欲しい。
「ああ。こちらからお願いしたいほどだ。やってもらえるとありがたい」
にっこりと笑ってみせた。
熱心に地図を見ていたリンだが。
見れば、うつらうつらと舟をこいでいる。
しっかりしているので、つい10歳の子供であることを忘れそうになってしまうが。肉体はまだまだ子供であった。
私もそうだが。精神は、肉体に引っ張られる傾向がある。36歳の精神を持っているが、17歳の肉体のせいで、どうも慎みを忘れがちになる。
リンもそうなのだろう。
声を潜め、皆に告げる。
「ここへ来たばかりで、一人で寝るのは寂しいだろう。私の部屋に連れて行く。使用人は下げるように」
「了解しました」
リンを起こさないよう、そっと抱き上げる。
ナムグンに乗せた時も思ったが。10歳の子というのは、こんなにも軽いのか。
もっと労わってやらねば。
*****
自室の寝室へ連れて行き、商会から運ばせた荷物から夜着を取り出す。
縫い目が肌に当たらないよう縫われた、やわらかな布地。
靴を脱がし、靴下留めを外し。シャツとハーフパンツを脱がすと、下着姿になった。
先程浄化魔法を掛けたが。おしぼりで身体を拭いてやったほうがいいだろうか?
拭いた方がさっぱりするだろう。
小さなタオルを水魔法で濡らし、絞ったもので首から拭う。
リンはすやすやと寝入っている。心地好いのかな?
……あ、足の付け根にも黒子があるな。
子供なんだが。妙に色っぽく見える時があるな。……何だかおかしな気になりそうだ。
早く夜着を着せて、私も寝よう。
リンに夜着を着せ。
私はいつものようにベッドへ潜った。
いつもと違うのは、傍らにあるこのぬくもりか。子供の体温は高いからな。
今夜はよく眠れそうだ。
おやすみ、リン。可愛い神の使い。
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