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幕間Ⅲ

楽しい時間

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……もう朝か。
窓ガラスは無いが、代わりにスクロールカーテンのようなものはついている。魔法でそれを上げると、朝日が差し込んだ。


久しぶりによく眠れた気がするのは、腕の中の、このぬくもりのおかげだろう。
こうしていると、気持ちが落ち着くのは何故なのか。

リンもちょうど目覚めたようだ。腰に回していた私の腕を動かそうとしている。


「おはよう。もうお目覚めかな?」
声を掛けると。

リンは振り向いて。驚きに目を大きく見開いていた。
その視線は、私の顔から肩、腕。胸板へと異動し。頬を赤く染めた。


*****


ああ、そういえば。
昨夜も、いつものように服を脱いで寝てしまっていたようだ。

流星が家で裸族だったせいもあるが。寝間着を脱ぐのも脱がされるのも面倒なので、普段は裸で寝ているのだ。


貴族というのは面倒で、着替えすら使用人にさせる。
これもある程度の身分がないと就けない名誉職ではあるし、彼らの仕事なので、恥ずかしいからといってやめさせるわけにもいかない。

私は裸になるのは慣れているので、恥ずかしくはないが。

リンは、自分が服を着ているかどうか確かめているようだ。
寝間着を着ているのを見て、ほっとしていた。


……中身がどうであれ、私が10歳の子供に手を出すような人間に見えるのだろうか。

リンのことは可愛らしく思うし、守ってやりたいと思っているが。
さすがに子供相手に、性的にどうこうしたいというような衝動はわかない。

しかし。この反応からして、とりあえず、ある程度性的な知識を持っていると思っていいだろう。
あまり性的に無防備すぎても危険だからな。

リズリーは遠い。
私がずっと張り付いて、目を光らせておくことは難しい。ある程度自衛できることが望ましい。


あらぬ方を見て。
恥じらっている様子が可愛らしいので、少々からかってやりたくなった。

「ん? 顔が赤いな。熱でもあるのかな? ……どれ、」
そっと、額を額にあてる。

ふふ、鼓動が早まった。可愛いな。


「だ、だいじょうぶ。驚いただけ、」
胸板を押し返された。


*****


「ひぇ、」
小さな悲鳴が上がった。


熱を測るのに、上半身を起こしたため。見えてしまったようだ。
朝勃ちした状態でもあるまいし。男同士だというのに、耳まで真っ赤になっている。

……男同士だと思うが。
まさか、中身は男ではないのか? だとしたらとんだセクハラだな。

特に嫌そうな様子でもないので、いいか。


ベッドサイドのベルを鳴らし、使用人を呼ぶ。
私はベッドから降り、使用人に着替えさせていたが。リンは恥ずかしがってベッドから出て来なかった。

自分で着替えるというので、昨日スキート紹介で誂えた服を一式ベッドに置くと、上掛けから出てきた。


「ああ、安心して。昨日、君の着替えは私がしたから」
にっこり微笑んで言うと、微妙な顔をされた。

この反応は、微妙な年ごろなのか、それとも実は女の子なのか。区別がつかないな。


「では、着替え終わったら教えておくれ」
あまりじっと見ていると変態のように思われそうなので、着替えが終わるまでは窓の外を見ていた。


今日もいい天気だ。


*****



城壁に上がり、そこから予定地を見て。
リンは、あっという間にコンクリート製の貯水池を作ってみせた。

ろ過装置もついていて、城内と水道で繋がっており、蛇口も作ったという。

雨水は砂とかを経由すると綺麗になる、という話は聞いたことがあるが。
その仕組みをよく知っているようだ。土木関係者だったのだろうか。


少々無茶振りをして、塩湖は欲しいと望んだ。
テレビの企画でウユニ湖の奥にある赤い塩湖をイメージしたのだが。リンは見事、イメージ通りの塩湖を作ってみせた。

この世界には塩湖は存在していなかったが。
そろそろ岩塩も掘り尽くされていたので、助かった。

これで我が国は当分、塩に困ることはないだろう。この国は、地理的に塩を得ることが困難だからな。


リズリーへは馬車ではなく、騎馬で向かうことにした。
馬車は目立つ上に機動性に欠ける。もし山賊などに襲われた場合、単騎のほうが対策しやすいからだ。

それに、私の腕の中に納まっているリンがかわいい。


……おや。
「あ、ここにも黒子ファイ発見」

つついてみると、リンは声を上げ、びくっと身体を振るわせた。敏感だ。
かわいいなあ。

「ふふ、目の下の黒子って、色っぽいよね」
目元の黒子をつついてみたりして。


あっという間にリズリーに着いてしまった。
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