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幕間Ⅱ
魔法の適性
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「ウィリアムさんは、何の魔法が得意なの?」
リンが私を見上げた。
敬語は抜けてくれたようだが。まだまだ硬いな。
「ウィル。そう呼んでくれないと返事しないよ?」
と言いながら、あらぬ方を向いてみせる。
「……ウィル、は。何の魔法が得意なの?」
素直でよろしい。
「雷が一番で、次に光と闇。少しだけ、火と土も使えるよ」
本当は闇が一番強く、次いで光と雷が強く、他の魔法はだいたい同じくらいの強さで、全ての種類を持っているのだが。
隠蔽の魔法で、上級冒険者と同じくらいのレベルに見せかけている。
一国の王子があまり弱すぎても、国の威信問題にかかわる。
それでいて他国の脅威にならない程度に弱くないといけないのだ。調整が面倒である。
リンは素直に信じ、すごいんだ、と呟いた。
いや、君の方がすごいだろう、と思ったが。見えなかったふりをしたのだった。
*****
属性計測石は、他人の耳目のないところでしたいと告げた。
リンにはまだ、出力の調整は無理だろうと思ったのだ。あまり目立っては困る。
組合の会議室へ通され、属性計測石を持ってこさせた。
オズワルドの脇を肘でつつき、見本を見せてやるよう指示する。
私が先に見せてやりたかったのだが。隠蔽の準備には、少々時間が掛かるのだ。
「こうするんだよ」
オズワルドが石に手をかざし。強い赤色が出た。小さな緑色も。
これでも、オズワルドは火魔法にかけては騎士団一の実力を持っている。
「わあ。……ウィルは?」
期待に満ちた目で見られた。もう大丈夫だろう。
「さっき言ったとおりだよ。ほら」
強い紫に、白と黒。赤と茶。よし、なかなか上手くいった。
リンはわくわくした様子で、石に手をかざしたのだが。
「あれ?」
光らない。しかし、さきほどまで問題なかったのだ。故障ではないだろう。
「おかしいな。少なくとも、水魔法は確実に使えるのに」
……そうか。
光らないのは通常、属性魔法の才能が無い、ということだが。
”創造”で全てをカバーできるリンには、属性魔法など必要がない。
これは、とんでもないことだ。
それだけ”創造”の凄まじさを表しているのだが。
*****
リンは、石が光らないのが残念そうだ。
どうにかしてやりたいが。どうしたものか、と悩んでいると。
様子を伺っていた副組合長のネルソン・サムナーが顔を出し、空気を読んで無属性かもしれない、という助け舟を出した。
よし、それで行こう。
話に乗ったはいいが。
修練場で、魔法を撃って試してみることになった。
私が連れてきた謎の子供の能力が知りたかっただけだろう。タヌキ爺め。
無論、人払いはさせた。
リンは全属性の魔法弾を撃つことが出来たので、大喜びだった。
嬉しそうな様子は、本当に可愛かったが。
サムナー副組合長から、是非組合所属の賢者になって欲しいと頼み込まれていた。
組合に目を付けられると厄介だ。
だからリンの力のことは秘密にしておきたかったのだが。
登録証の、魔石がついた腕輪を、リンが嬉しそうに見ている。
その腕輪は、私がスキート商会で買ってきたものだ。リンの笑顔が見られるなら200トーンくらい安いものである。
リンは私やオズワルドの腕を見て、首を傾げている。
「私は、これに入ってる」
剣の柄を飾る一番大きな石がそうだ。他にも魔石を付けているため、かなり派手な剣になっている。
オズワルドも剣で、オーソンは片眼鏡の飾りが魔石である。
「普段自分が持ち歩くものに魔石をつけるようにしているのだよ」
「騎士は寝る時も剣を手放さないものですからね」
そんなことを言ったら、まるで寝ている時も危険な国なようではないか。
「でも、今は大々的に魔物を討伐した後なので、そこまで警戒しなくて大丈夫ですよ」
オズワルドは慌てて付け足した。
*****
暗くなったので、城に戻った。
できれば晩餐は豪華なものにしたかったのだが。
残念ながら戦いが終わってからそれほど間がなく、国庫が回復していないのだ。
それでも料理長に、リンにはできるだけ質の良いものを、と注文した。
食材が足りないのは仕方がない。しかし、この世界の料理はとにかく味が単調なのである。
味付けが塩くらいしかない。あっても胡椒とパクチーのような匂いのする草くらいで。
せめて海に近ければ魚も出せるのだが。干物すらない。
前世の記憶を思い出したら、余計辛くなった。
邪神め、絶対に許さんぞ……。
リンが私を見上げた。
敬語は抜けてくれたようだが。まだまだ硬いな。
「ウィル。そう呼んでくれないと返事しないよ?」
と言いながら、あらぬ方を向いてみせる。
「……ウィル、は。何の魔法が得意なの?」
素直でよろしい。
「雷が一番で、次に光と闇。少しだけ、火と土も使えるよ」
本当は闇が一番強く、次いで光と雷が強く、他の魔法はだいたい同じくらいの強さで、全ての種類を持っているのだが。
隠蔽の魔法で、上級冒険者と同じくらいのレベルに見せかけている。
一国の王子があまり弱すぎても、国の威信問題にかかわる。
それでいて他国の脅威にならない程度に弱くないといけないのだ。調整が面倒である。
リンは素直に信じ、すごいんだ、と呟いた。
いや、君の方がすごいだろう、と思ったが。見えなかったふりをしたのだった。
*****
属性計測石は、他人の耳目のないところでしたいと告げた。
リンにはまだ、出力の調整は無理だろうと思ったのだ。あまり目立っては困る。
組合の会議室へ通され、属性計測石を持ってこさせた。
オズワルドの脇を肘でつつき、見本を見せてやるよう指示する。
私が先に見せてやりたかったのだが。隠蔽の準備には、少々時間が掛かるのだ。
「こうするんだよ」
オズワルドが石に手をかざし。強い赤色が出た。小さな緑色も。
これでも、オズワルドは火魔法にかけては騎士団一の実力を持っている。
「わあ。……ウィルは?」
期待に満ちた目で見られた。もう大丈夫だろう。
「さっき言ったとおりだよ。ほら」
強い紫に、白と黒。赤と茶。よし、なかなか上手くいった。
リンはわくわくした様子で、石に手をかざしたのだが。
「あれ?」
光らない。しかし、さきほどまで問題なかったのだ。故障ではないだろう。
「おかしいな。少なくとも、水魔法は確実に使えるのに」
……そうか。
光らないのは通常、属性魔法の才能が無い、ということだが。
”創造”で全てをカバーできるリンには、属性魔法など必要がない。
これは、とんでもないことだ。
それだけ”創造”の凄まじさを表しているのだが。
*****
リンは、石が光らないのが残念そうだ。
どうにかしてやりたいが。どうしたものか、と悩んでいると。
様子を伺っていた副組合長のネルソン・サムナーが顔を出し、空気を読んで無属性かもしれない、という助け舟を出した。
よし、それで行こう。
話に乗ったはいいが。
修練場で、魔法を撃って試してみることになった。
私が連れてきた謎の子供の能力が知りたかっただけだろう。タヌキ爺め。
無論、人払いはさせた。
リンは全属性の魔法弾を撃つことが出来たので、大喜びだった。
嬉しそうな様子は、本当に可愛かったが。
サムナー副組合長から、是非組合所属の賢者になって欲しいと頼み込まれていた。
組合に目を付けられると厄介だ。
だからリンの力のことは秘密にしておきたかったのだが。
登録証の、魔石がついた腕輪を、リンが嬉しそうに見ている。
その腕輪は、私がスキート商会で買ってきたものだ。リンの笑顔が見られるなら200トーンくらい安いものである。
リンは私やオズワルドの腕を見て、首を傾げている。
「私は、これに入ってる」
剣の柄を飾る一番大きな石がそうだ。他にも魔石を付けているため、かなり派手な剣になっている。
オズワルドも剣で、オーソンは片眼鏡の飾りが魔石である。
「普段自分が持ち歩くものに魔石をつけるようにしているのだよ」
「騎士は寝る時も剣を手放さないものですからね」
そんなことを言ったら、まるで寝ている時も危険な国なようではないか。
「でも、今は大々的に魔物を討伐した後なので、そこまで警戒しなくて大丈夫ですよ」
オズワルドは慌てて付け足した。
*****
暗くなったので、城に戻った。
できれば晩餐は豪華なものにしたかったのだが。
残念ながら戦いが終わってからそれほど間がなく、国庫が回復していないのだ。
それでも料理長に、リンにはできるだけ質の良いものを、と注文した。
食材が足りないのは仕方がない。しかし、この世界の料理はとにかく味が単調なのである。
味付けが塩くらいしかない。あっても胡椒とパクチーのような匂いのする草くらいで。
せめて海に近ければ魚も出せるのだが。干物すらない。
前世の記憶を思い出したら、余計辛くなった。
邪神め、絶対に許さんぞ……。
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