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ネイディーンへ

女のいない世界で

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また、中のオーランドのものが膨らんでいくのを感じたが。


『そのまま続けようとするな。代われ』
再び動き出そうとするオーランドの肩を、クリシュナが引いた。

『えー』
『代・わ・れ』

オーランドはしぶしぶ引き抜いて、自分がいた場所を兄に譲った。


「あう、」
引き抜かれる際、排泄感に似た、背徳的な快感に海瑠は震えた。
抜けてしまった後の、物足りなさ。

早く埋めて欲しいと感じるのは、媚薬のせいだろうか。

『どちらのモノが良いか、決めてもらおうか』
クリシュナはナイジェルから受け取った香油を、早々に回復していた自身のものに塗りたくっている。


自分にも身に覚えはあるので、わかっている。……海瑠の場合は自家発電オンリーだったが。
覚えたての中高生は、サルと同じだ。
スイッチが入ってしまったら、もう止められない。快楽を、我慢できないのである。

終わらない陵辱の予感にぞっとしたが。
同時にどこか甘いものを感じたのは、何故なのか。


海瑠は一晩中、疲れを知らないと思われる年若い兄弟から、代わる代わる犯された。


◆◇◆


翌日。
海瑠は熱を出して寝込んでしまった。


身体中の関節が痛かった。特に股関節。
柔軟などの基礎訓練はしてきたつもりだが、普段使わない方向に無理に開かされたり、曲げ伸ばしされたせいだろう。

二人の剛直が出入りしていた場所や、弄られすぎた乳首はふっくらと腫れ上がり。全身に噛み痕やキスマークが刻まれていた。


二度や三度では飽き足らず、行為は朝まで続けられたのだ。
最後の方はもう記憶もあやふやで。

おそらく、気を失ったのだろう。
疲労と倦怠感で、指一本動かせない。

……孕め、と言われた。
男の身で孕むなんて無理だろ、と笑いたくなったが。


女の存在しないこの世界では、女神の加護により、当たり前に男が孕み、子を産むという。
出産に痛みは無いといわれても、全く安心できない。

自分の腹に、命を宿すなんて。合意ではない行為だったのに。
……できてしまっていたら、どうしよう。


海瑠はおそろしくて、泣きそうになった。


◆◇◆


『無茶をした。すまなかった』

クリシュナは、昨夜海瑠にした暴挙を謝罪に来て。
蜂蜜の入ったミルクを持ってきてくれた。


ミルクがあるということは、牛のメスはいるのか、と。不思議に思う。
蜜の元である草花だって、雄花や雌花がなければ繁殖できない種類も多いだろうに。

何故、人間の女だけが消えたのだろうか?
本当に、”女神”が存在しているとして、どんな理由で、人間の女だけを消したのだろう。


海瑠は周囲を見回した。

天蓋付の大きなベッド。
大理石で出来たドレッサー、豪奢な家具。

普通に女性用に見えるそれらは、城の保管倉庫から出したものを参考に、新たに作り直したものらしい。

男だらけのこの世界で。
この国の王にを据えることに、何か意味があるのだろうか?

神の声を聴く神官が、自分でも良いと言ったのなら、受け入れるしかないのだろう。
他に行くあてもない。


疲弊して、自力で起き上がれない海瑠の半身を、こわごわといった手つきで抱き起こし。
手ずからミルクを飲ませてくれているクリシュナを見上げる。


ミルクはほの甘く、優しい味がした。
温度もぬるすぎず熱すぎもしない。身体を気遣ったのだろう。

「……美味しい。ありがとう」
海瑠の浮かべた微笑みに。
こわばっていたクリシュナの顔が、目に見えてほっとしたのがわかった。


『オーランドも反省して、女王の戴冠式の準備を一手に引き受けていた』
「そうなんだ……」

普段はとても無口だというクリシュナが、一生懸命謝罪の言葉を探しているのが伝わってきた。
元々王族である。謝罪の言葉など、知らなくてもおかしくはない。


◆◇◆


背に回された大きな手。
これが、自分に何をしたか。まざまざと蘇る。

力の差は思い知った。
彼がその気になれば、海瑠など、いつでも好きにできるだろう。

今、すぐにでも。


『……快楽に、我を忘れるなど。あってはならなかった』
クリシュナは長い睫毛を伏せた。

気を失ってぐったりとした海瑠を目にして、兄弟はひどくうろたえたようだ。
しかし、慌てても医者を呼ぶわけにはいかない。海瑠が女でないことがバレてしまう。

応急処置の心得があるリッターが診て。
荒淫による過度の疲労だと判断し、しばらく安静にするように言ったようだ。


一国の王子なので、感情のまま動いてはいけない、と教育されていたというのに。
目の前の快楽に、情欲に流されて。

海瑠を抱き潰してしまったことを心底後悔していた。

王子といえども人間だ。ましてや15になったばかり。
若いのだし、そういうこともあるだろうと海瑠は思ったが。恥ずべきことらしい。


『しかし、国のためにもカイルを孕ませねばならぬ。許せ』

孕む、という言葉に、びくりと身体が震えてしまう。
また、されるのか。を。


今までろくに快楽を知らなかった身体には、毒にも等しいものだった。
兄弟から代わる代わる犯され、絶え間なく熱を送り込まれた。

あの、とてつもない快楽。


身体はきついが。度を越さない程度ならいいかも……と考えて。
海瑠はハッとした。

脳内がピンク色に染まってでもいるのか。流されてどうする。
犯されたのだ。自分の意思に反して。

結果的に和姦だったとか、許してはいけない。怒るべきである。
こちらの倫理観ではどうなのか知らないが。


悩む海瑠に、クリシュナは言った。
『……どちらを選ぶでもよし、両方でもかまわん』

兄弟どちらかを選ぶので悩んでいたわけではなかったのだが。

「いや、さすがに兄弟どんぶりはちょっと……」
『ドンブリ?』

クリシュナは不思議そうに目を瞬かせ、首を傾げた。
そういう表情をしていると、年齢相応に見えて、可愛らしく感じた。


あんな真似をされたというのに。
不思議と、嫌悪感はわかないのだった。


◆◇◆


あ~あ。おれ、……15も下の男に、ヤられちゃったんだよなあ……。

しかも、初体験が、自分的には未成年の兄弟相手に3P、である。
衝撃的にもほどがあった。


しかし、この男。
見れば見るほど、美形だ。

海瑠はクリシュナの横顔をそっと盗み見て、思った。


若く張りのある肌。高く、通った鼻筋。秀でた額。
眉もきりっとして男らしい。

長い睫毛に縁取られた黒い瞳は一見冷たく見えるが、本当はそうでないことを海瑠は知っている。
厚みのある唇。

あの唇に、フェラされたのかと思うと……。


その唇が、こちらを向いた。
『熱が上がったか? 頬が赤い』

額に、大きな手を当てられる。
指は長く節があり、手指には剣だこがあるが、この手に撫でられるのは心地好かった。

『冷たいものでも持って来るか……?』
声も良い。

すっかり大人の声で、色気がある。テノールからバスの間だろうか。
低く、耳元で囁かれると。ゾクゾクしてしまう。

「大丈夫……」
海瑠は頭を振った。


すっかり頭の中がピンク色であった。
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