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21章 責任
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裁判長は手元の書類を捲って、ひとつため息をつく。
「王族3名の判決は以上ですが、ここには王妃が不在です。しかし、第一王女の嫁いだ国へ亡命したと判断され、今は我が国で裁くことはできません。王妃、第一王女がどの程度内情を知っていたかは不明ですが、すでに祖国の地を踏めないという罰を与えられていると判断されます」
裁判長が静かにそう言うと、傍聴席からヤジが飛び出す。
「ふざけんな! いままで俺たちの犠牲の上でいい生活をしてたんだろう! ここに引きずって来いよ!」
「第一王女は王妃となっているんだろう? 王族としての生活は変わらないじゃないか」
カンカン
ガベルを鳴らし、裁判長はヤジを飛ばした傍聴人に視線を向けた。
「傍聴人は静かにするように。そして、一言言わせていただけるなら、本当に王族としての生活が変わらないとお思いですか? 後ろ盾のなくなった他国の王妃が、どのような扱いを受けるかはみなさんのご想像に任せましょう。しかも、母親が亡命してやっかいになっている。どちらにせよ、明るくはないでしょうね。第一王女のこれまでや今後の功績にもよりますが。」
針の筵
そんな言葉が頭に浮かんだ。
「さて。これにて閉廷といたします。無償労働の内容は、議会で決定しますので、それまでは3名とも今日と同じ貴族牢で過ごすように」
最後にもう一度ガベルを鳴らして、裁判官達は法廷を後にした。
暴れる国王を騎士が羽交締めにして法廷から連れ出し、王太子様はその後をゆっくりとついて行った。
その背中、とても小さくなっていた。
そして、残されたのはローゼリア様。
焦点の定まらない目で、空を見つめている。
騎士達が声をかけても、呆然とその場に座ったままだ。
騎士達は頷きあって、ローゼリア様の両腕を抱えて立たせ、法廷を後にした。
あんなに華やかだった人が、見る影もなく……。
その姿を見たわたしの心境は、なんとも言えないものだった。
わたしたち傍聴人も出ていくように促されて、みんな足早にその場を後にする。
人々の中では、王妃様と第一王女が裁判にかけられなかったことと、国王達の処罰が軽かったことがとても不満だったようで、いつまでもみんな愚痴をこぼしながら歩いて行った。
わたしは一人で帰らずに、建物を出て裏口でルーク様とお兄様が出てくるのを待つことにした。
2人とも、すごく疲れているだろう。
お屋敷に帰ったら、2人のために何か作ろうかな。
討伐からこっち、2人とも王城に泊まり込んでいて、全然帰ってこなかったけど、今日はデイヴィス家に帰るってルーク様言ってたもの。
きっとお兄様も一緒よね?
フランクさんとサリーさんに相談して、あ、本邸の厨房にもお願いしておかないと!
それからそれから……。
わたしが頭の中で考えていると、やっとルーク様とお兄様が裁判所の建物から出てきた。
「ルーク様! お兄様!」
一仕事終えた2人に、わたしは駆け寄る。
やっと裁判も終わって、さぞ肩の荷もおりただろうと、満面の笑みで2人を迎えるけど、わたしの予想に反して、2人の表情はあまり明るくなかった。
「ルーク様もお兄様も難しいお顔をしてどうなさったんですか?」
「ん? ああ、まだまだ色々とあると思うと、な」
「そうですね、義兄上。さきほど緊急召集をかけてもらったので、明日の朝には大臣も会議の席にそろうでしょう」
「そうだな。ま、こんなところで話すことでもないし、ルーク様の屋敷に行ってもいいか?」
お兄様の問いかけにルーク様は頷き、ルーク様とお兄様とわたしの3人は、デイヴィス家の馬車に乗って、デイヴィス家別棟に向かうのだった。
*****************
キリが悪いので、今日中にもう1話上げます。
はい。今日中です。
がんばります。
「王族3名の判決は以上ですが、ここには王妃が不在です。しかし、第一王女の嫁いだ国へ亡命したと判断され、今は我が国で裁くことはできません。王妃、第一王女がどの程度内情を知っていたかは不明ですが、すでに祖国の地を踏めないという罰を与えられていると判断されます」
裁判長が静かにそう言うと、傍聴席からヤジが飛び出す。
「ふざけんな! いままで俺たちの犠牲の上でいい生活をしてたんだろう! ここに引きずって来いよ!」
「第一王女は王妃となっているんだろう? 王族としての生活は変わらないじゃないか」
カンカン
ガベルを鳴らし、裁判長はヤジを飛ばした傍聴人に視線を向けた。
「傍聴人は静かにするように。そして、一言言わせていただけるなら、本当に王族としての生活が変わらないとお思いですか? 後ろ盾のなくなった他国の王妃が、どのような扱いを受けるかはみなさんのご想像に任せましょう。しかも、母親が亡命してやっかいになっている。どちらにせよ、明るくはないでしょうね。第一王女のこれまでや今後の功績にもよりますが。」
針の筵
そんな言葉が頭に浮かんだ。
「さて。これにて閉廷といたします。無償労働の内容は、議会で決定しますので、それまでは3名とも今日と同じ貴族牢で過ごすように」
最後にもう一度ガベルを鳴らして、裁判官達は法廷を後にした。
暴れる国王を騎士が羽交締めにして法廷から連れ出し、王太子様はその後をゆっくりとついて行った。
その背中、とても小さくなっていた。
そして、残されたのはローゼリア様。
焦点の定まらない目で、空を見つめている。
騎士達が声をかけても、呆然とその場に座ったままだ。
騎士達は頷きあって、ローゼリア様の両腕を抱えて立たせ、法廷を後にした。
あんなに華やかだった人が、見る影もなく……。
その姿を見たわたしの心境は、なんとも言えないものだった。
わたしたち傍聴人も出ていくように促されて、みんな足早にその場を後にする。
人々の中では、王妃様と第一王女が裁判にかけられなかったことと、国王達の処罰が軽かったことがとても不満だったようで、いつまでもみんな愚痴をこぼしながら歩いて行った。
わたしは一人で帰らずに、建物を出て裏口でルーク様とお兄様が出てくるのを待つことにした。
2人とも、すごく疲れているだろう。
お屋敷に帰ったら、2人のために何か作ろうかな。
討伐からこっち、2人とも王城に泊まり込んでいて、全然帰ってこなかったけど、今日はデイヴィス家に帰るってルーク様言ってたもの。
きっとお兄様も一緒よね?
フランクさんとサリーさんに相談して、あ、本邸の厨房にもお願いしておかないと!
それからそれから……。
わたしが頭の中で考えていると、やっとルーク様とお兄様が裁判所の建物から出てきた。
「ルーク様! お兄様!」
一仕事終えた2人に、わたしは駆け寄る。
やっと裁判も終わって、さぞ肩の荷もおりただろうと、満面の笑みで2人を迎えるけど、わたしの予想に反して、2人の表情はあまり明るくなかった。
「ルーク様もお兄様も難しいお顔をしてどうなさったんですか?」
「ん? ああ、まだまだ色々とあると思うと、な」
「そうですね、義兄上。さきほど緊急召集をかけてもらったので、明日の朝には大臣も会議の席にそろうでしょう」
「そうだな。ま、こんなところで話すことでもないし、ルーク様の屋敷に行ってもいいか?」
お兄様の問いかけにルーク様は頷き、ルーク様とお兄様とわたしの3人は、デイヴィス家の馬車に乗って、デイヴィス家別棟に向かうのだった。
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キリが悪いので、今日中にもう1話上げます。
はい。今日中です。
がんばります。
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