7人のメイド物語

第七章 動物の園

第116話 王妃の告白

「あれがパンダの親子になります。」
「タウったら、あんなのがいるなんて先に教えてくれたっていいじゃない。」
「いや、北の山で偶然見つけたんだよ。」
「でも、子供の方は本当にヌイグルミみたいですわね。」
「タウ、あの子は抱けないのかな？」
「もう少し様子を見てからですね。」
「そう。うーん、やっぱりここの園長は私しかいないと思うのよね。」
「妃よ、動物の世話というのは、綺麗ごとではすまないと思うのだが……。」
「そうですね。知識も必要だし、なにより動物を好きでいてくれるスタッフを集めないといけません。」
「うむ。エサ代だってかかるし、人件費も必要か。」
「とりあえず、今日のところは子供たちが楽しめる施設かどうか、ご判断をお願いします。」
「うむ、わかった。」

「こちらはペンギンという鳥の仲間です。」
「まあ、飛べない鳥がいるというのは理解しているが……。」
「水面を泳ぐ鳥もいましてよ。」
「では、下のエリアからご覧ください。」
　全員でガラス越しの窓から見てもらう。
「……水の中を、飛んでいるようだな。」
「このように、水中を泳いで魚を捕らえます。」
「これも驚きだな。」
「時間によっては、エサやりを体験してもらおうかと思っています。」
「人の手からエサを食べるのか？」
「はい。上でお見せしましょう。」
　俺は小魚をペンギンに食べさせる様子を見てもらった。
「よちよちと二本の足で歩くのもかわいいですね。」

　ゾウを見てもらった後で、俺の屋敷でお茶にする。
「ほかにも、世界には想像もできない動物がいます。それと、見るだけじゃなくて犬や猫、ウサギなどを放し飼いにして、触れ合うエリアも作ろうと思っています。」
「私は賛成ですわ。今日見ただけでも心が癒されましたもの。」
「お姉さまのいう通りですね。私も賛成ですわ。学び舎の子供たちを連れてきて、気晴らしの一日にするのも考えたいと思います。」
「俺は……、国の事業というよりも、王族の事業として一般公開してはどうかと思うんだ。」
「わしも同意見じゃな。国の事業だと、各町にも導入しろと言い出しかねんからな。」
「それならば、やはり園長は私ですわね。」
「妃よ、なんだかやけに園長に拘っているようだが。」
「当たり前ではないですか。園長ともなれば、野良着で藁を抱えたり、エサやりをしなくてはなりません。」
「あっ！」
「どうした？」
「そういえば、お姉さまは泥だらけになって走り回るのが好きな子供でした……。」
「思い出したのね。そうよ、ドレスから解放される瞬間がついに現実のものになるの。」
「き、妃……。」

　思いもかけない王妃のカミングアウトにより、皆あっけにとられてしまった。
　しかも、体力づくりと称して、翌日からランニングを始めるにあたって、本気なのだと信じざるを得なかった。

　施設の名称は『フォンダン動物公園』に決まり、来月より開園。
　政府も、賛助金として年に金貨２０００枚を支出することとなった。

　俺は、公園の周りを塀で囲い、道路を整備してゆく。
　その合間に、北の山地でパンダを６頭捕獲して増やし、パンダの遊具も作っていく。
　滑り台やゴムタイヤなどだ。

　冒険者ギルドに頼んでいた動物も、徐々に集まってきた。
　ウサギやトラ、シカなどだ。

　こうして、動物公園はともかくオープンを迎えた。
　特にイベントなどはない。
　スタッフを配置し、粛々とお客さんを迎え入れる。
　初日は、貴族や城の関係者が多かった。
　まだ、一般までは知れ渡っていないのだろう。

　俺は、服飾ギルドに頼んで、動物のヌイグルミを作ってもらい、園内で販売を始めた。
　売店、食堂、カフェなどの複合施設でだ。
　当然だが、パンダとコアラのヌイグルミは、あっという間に売り切れてしまった。

【あとがき】
　動物園って、一日中いても飽きませんよね。サル山とかライオンとか……。