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後日談

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 マッドは充実した日々を送っていたのだが、ある日、よく通っている安い、旨い、多いが売り文句の下町の食堂に向かう際、言い争う二人組を見掛ける。

(あらぁ~ん?最近言い争いが多いわねぇ?こっちもトラブってるのかしらぁ?)

 マッドは先日、どこかの仕立て屋の青年を、貴族の迷惑娘から助けたばかりだ。

 なので、またまたちょっと覗き見する気になり、騒ぎの声が聴こえる方へと向かった。


「だから何度も言ってるだろうが!高がちょっとぐらい武芸を学んでいたぐらいで、お前みたいな世間知らずの女が、こんな場所で仕事なんか見付かる訳が無いって!!帰ろう、俺がお前を養ってやるよ!」


(なぁに?嫌味な男ねぇ。痴話喧嘩かしらぁ?にしても、どこから来たのかしらぁ?普通の旅人にしては服の生地が良さそうだし、仕事?を探す前に絡まれるのがオチよねぇ)


「高が幼馴染みと言うだけで、お前に養われる謂れは無い!ボクはお前に打ち明けた筈だ!!ボクは男で女じゃない!お前だって、そうなのかって言ってたじゃないか!!それなのに今更、お前はボクを女だと言うのか?!」


(……あらぁ?って事は、あたしとは真逆のタイプって事かしらぁ?)

 マッドは彼女……いや、彼だろうか?に興味をそそられる。


「あれは、そうでも言わなきゃお前が納得しないからだろうが。そもそも、お前のどこを見て男だなんて言えるんだよ。親父さんが男が欲しかったって、よく言ってたけど、それの影響だろ?その親父さんも亡くなって、後継ぎも無く、子爵位を返したからって、女の身でこんな下町で、貴族のお前が暮らして行ける筈もない。悪い事は言わないから、俺に養われていろよ」


 ヘラヘラとする男に、ボクと言った、男服を着る女性が冷ややかに言う。


「それで?ボクにお前の愛人にでもなれって言うのか?お前、確か婚約間近の恋人がいたよな?別にお前の女癖をどうこう言うつもりは無いが、そこにボクを巻き込むな。ボクはお前を同性の友人だと思っていたが、それも今日までだ。ボクの前に、二度と姿を見せるな」


 女性の言葉にムッとしたのだろう男が、女性を責めるように言う。


「無理だって言ってるだろうが!知り合いもいないのに、こんな場所でどうやって暮らす気だ?!それこそ身ぐるみ剥がされて、娼館に売られるのがオチだぞ!」

「煩い!お前なんかの愛人になるぐらいなら、ここで生き抜く方がマシだ!」

「それはそうだろうなぁ。よし、お前。俺が仕事を世話してやるよ」


 マッドは話に割り込む事にした。
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