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後日談

マッドの日常と春の予感 1

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 マッドの仕事は傭兵では有るが、傭兵はこの国では、力仕事を任せられる何でも屋だと言って良い。因みに最近の仕事は、夜の商売をする娼婦の店の用心棒なので、昼間は割りと自由な職場だ。

 そしてここは昔からよく雇って貰ってる一流店の一つで、唯一マッドの裏の顔、女性であると言う事が女店主や娼婦達には知られている店だった。

 用心棒でも店の商品である女性達に手を出されて貰っては困る。勿論、金を払うと言うのなら別だが。その稼業を楯にされちゃあ困るんだよと言われて、マッドは女店主に自分の事情を話したのだ。

 そして、最初は半信半疑だった女店主も、マッドを知る内に気に入り、他の娼婦の女性達とも仲良くするようになったのだ。

 それも、エヴァンス領で本性を晒し、リラやエヴァンス家の人達、エヴァンス領の領民達に受け入れられた事が、切っ掛けでも有ったのだが。

 お陰でマッドは、ここで娼婦の女性達と、女性の会話が出来て楽しい。

 勿論、営業時間は男の用心棒として嘗められないように、女言葉を封印してるが、営業後の男の客が帰った朝や、店を開ける営業前に、女店主や娼婦達と、女性だけのお喋りを楽しむ。

 別に男の用心棒に聞かれても問題は無いし、それをネタに脅そうとしても、大抵マッドの方が強いし、余所で喋ろうとしても、あの強い男が?単に悔し紛れだろうと受け流されるのがオチだ。

 しかもマッドは凄腕として知られる実力者で、喩えそれが本当だとしても、腕前に変わりは無いから、敵に回そうとする者は、ほぼいない。

 実際、それを流した奴が過去にいたのだが、傭兵仲間に黙殺された上、所属先から放り出され、王都での仕事が取れなくなり、ディーランから去っている。

 マッドの裏の顔を喋っていたら、逆に自分が、妬みや負け惜しみで流した噂だとされた挙げ句、王都の娼館等からは悉く出禁にされ、更に、マッドの後ろには、上位貴族の後ろ楯が有るって知らないのか。可哀想に……。とまで言われたのだから、去りたくもなるだろう。

 そしてマッドの本性は、極一部に知る人ぞ知る、暗黙の了解、触らぬ神に祟り無し、と言った具合で放置されている。

 だからこそ、マッドの所に同属の彼女達が接触出来、マッドの、『女性達の敵を、貪り食らって後悔させる裏仕事』にも参加するお誘いが掛かったと言う訳だ。

 そして、この店の女店主もその話をマッドから聞いた時、女達の敵はあたしらの敵。店の道具で良ければ、いつでも持って行って使いな。とのお言葉を貰っていたのだった。
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