氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

文字の大きさ
上 下
437 / 805
後日談

29

しおりを挟む
 翌日からランドールのハードルが上がり、それを利用してのポイントを稼がれてしまうものの、初日と比べるとマシになって来ている。

 ランドールの一日は、食後直ぐ、執事関連の初歩の初歩が載っている本から読み始め、徐々に子供の本から専門書のような書物へと変化して、少しずつだが物になって来ている。

 まぁ、それでも、エヴァンス家の執事から見れば、まだまだな所は多々有るが。

 ある程度、令嬢の苦労を知った後は、その令嬢の世話をする侍女の役もして貰う。

 因みに、令嬢役はマッド達だ。

 着付けにメイク、お茶会の用意や令嬢の部屋の掃除。

 着付けは順番を覚えれば何とか出来たが、メイクはどうすれば良いのかさっぱりだ。


「で、何であたしがこの人にメイクを教えなきゃなんないんですか?」


 レベッカはランドールを指差し不機嫌だ。

 それはそうだろう。自分の仕事に誇りを持ってやっていると言うのに、無能扱いされたのだから。


「教えなくても良いよ。レベッカのスピードを見せたいってだけだから。因みにレベッカがメイクをするのはマッドさん達だから」

「マッド様達にするのは良いですけど……。終わったら、直ぐに去りますよ?あたしにも一応仕事は有りますからね」

「それで良いよ。普通仕様と茶会、お出掛け、夜会に催事用の五つを宜しく。籤引きで決まってるから、籤を見てから順番に」

「じゃあ早速始めて良いですか?あまり時間を掛けたく無いので」


 レベッカはランドールを一睨みして、化粧道具を持って、メイクをし始めた。

 レベッカは、大体一人三十分を目安に、次々と仕上げて行く。しかも普通仕様に関しては、半分の時間で済ませている。

 レベッカの道具捌きはそれは見事な物で、素人のランドールだと、何をやっているのか解らないが、仕上がった人達の顔を見れば、これまで見たメイク姿の中で、一番綺麗に仕上がっている事は分かる。

 しかも、自分が女装をさせられていた時にメイクを施されたが、時間の掛かった夜会用のメイクですら、その時の半分程の時間で済んでいるから驚きだ。

 有能な侍女と言われて当然の腕だった。


「じゃあ、あたしはこれで」


 全員にメイクを施し終えたレベッカは、さっさとその場を辞退する。

 ランドールは何も言えないまま、レベッカを見送るぐらいしか出来なかった。


「……ランちゃん、ずっと気になってたんだけど、レベッカちゃんに何したの?あの子、リラちゃん以外にはあんまり興味湧かないから、余程の事で無い限り、怒んないのよぉ?まさか、リラちゃんに対して、悪口になるような何かを言ったの?」


 シュンとするランドールに、思わず聞いてしまうマッドに、サイナスが答える。


「選りにも選って、ウチのレベッカを無能と勘違いして、仕事の邪魔すらしてたんですよ」

「あ~……それは怒るわぁ。レベッカちゃん、仕事に対する情熱は、半端じゃ無いものぉ」


 マッドはランドールに、お馬鹿な子を見るような視線を向けた。
しおりを挟む
感想 2,440

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。 そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。 相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。 トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。 あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。 ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。 そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが… 追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。 今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。

新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

処理中です...