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本編

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 アナスタシアも、どちらかと言うとハンナに良い印象を受けない。

 アナスタシアは見た目を利用し、上手くあの義母に取り入っている……と言うか、上手くあしらっているが、ハンナはおだてれば、機嫌を良くしてペラペラと喋るから、物凄~く分かり易い。結婚した当初は、ハンナがまだ王妃だった為、一国の王妃がこれで大丈夫なのか?と不安に思った物だが、ジルギリスに、『王妃あれはあれで利用出来るんだよ。王妃を利用して、悪事を働こうとする連中を釣り上げるのに役に立つ。あれで不貞を働いていたなら、いくら王妃でも生かしては置けないけれど、今の所、そういう類いの事実は無いからね。実に残念だ』と聞いて、不貞をしなかったと言う理由だけで、一応生かされているけれど、理由さえ有れば、あっさり殺してしまえる相手なのだろうと理解してしまった。

 因みにアナスタシアは、見た目と違い、頭も賢く口も堅いとジルギリスに信用されたのだろう。本来なら、国王にしか教えないと言う、エヴァンス家の裏の役割を教えて貰っているのだ。

 理由としては、アナスタシアに後ろ楯が無い事、ジルギリスが持ち込んだ縁談である事、そして何よりアナスタシアが優秀であり、ある程度真相に近付く可能性もあるからだ。

 アナスタシアは賢くて行動的だ。隠すよりも協力者に仕立て上げた方が良いと判断したのだろう。

 勿論それは、ジーンも知っている事だが、だからこそ、ジーンは近付かなかったのだ。エヴァンス家が後ろ楯になっているとは言え、ジーンが近付き親しくなろう物なら、それこそアナスタシアに不貞疑惑が生まれてしまうだろうからと。

 勿論、アレクシスはエヴァンス家の役割を知っているのだから疑わないだろうが、他の貴族は事実を重視しない連中が多いのだ。

 自分達の都合の良いように取り、それを理由に正当性を主張する阿呆が多い。勿論それが現実で通用する筈も無いのだが、それを理解していない頭の軽い馬鹿者達がどこからか涌くのだ。

 リラの噂で分かるように、落ち度が無くてもああいった噂を面白おかしく流す輩がいる為、破談や離縁となる事もあるし、それを狙って流す輩もいるから質が悪い。

 ジーンであれば独身、王妃よりも年下で、若い愛人と言い出し兼ねないから、公式の場でしか近寄らないようにしていたのだ。

 今回は、国王も公爵であるエドワルドもいない為、後ろ楯のエヴァンス家から、数人の侍女と護衛を追加し、アナスタシアの警備を強化する事にした。

 何せ、リラもレベッカも、ダンに護身術を習っている上、そのダンとエヴァンス家内でも上位に当たる双子で固めたのだから、誰もアナスタシアには、手出しする事が出来ないだろう。
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