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本編

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 ルナとルネが、髪結いの紐で髪を束ねて貰っているので、モーラが新たに運んでくれたお茶のセットでリラがお茶を淹れていく。


「リラ様、そんな事をしなくても宜しいのよ?」

「ええっ?!えっと、そのっ、わたくし、お茶を淹れるのが割りと好きなので……しっ、シアお義姉様に、飲んで頂けるのなら、うううっ、嬉しい、です!」

「アナスタシア王妃、リラの淹れるお茶は絶品なのよ?先ずは飲んでみて下さいな♪」


 アナスタシアはリリーに言われて、リラが淹れたお茶を口に運び、驚く。お茶を淹れるのが上手いと言われている、王宮内の侍女の物よりも、格段に美味しかったからだ。

(こんなにも美味しいお茶なんて、初めてですわ……。リラ様は、取り柄も無いと仰ったけれど、これは充分取り柄になりますわよ?そんな事にも気付かないなんて。リラ様は、どれ程謙虚なのかしら。ますます興味深いお方だわ)


「……本当は、お菓子も作るので、いつか、食べて頂いても、宜しいです、か?」

「ええ!是非食べてみたいわ!!絶対に食べさせて頂戴ね?楽しみにしていますから!」

「良かった……」


 リラが本当に嬉しそうに微笑むので、それを見たアナスタシアは、悶えるしかない。

(可愛過ぎですわ!リラ様!!エドワルド様が、リラ様の前で別人だったと、アレク様から聞いていましたが、エドワルド様が別人になるのも頷けます!!今は変装中なので、随分、外見の印象が違っていますが、普段は近寄り難い高嶺の花で、中身がこんなに可愛い方だなんて知れたなら、悪い虫が沢山寄って来そうですもの。ジルギリス様率いるエヴァンス家だからこそ、隠せたと言っても過言では無い筈です!エドワルド様、よく彼女を見付けられましたわね。さすがですわ!)

 前に幾度か、アレクシスがエドワルドに結婚しないのかと言っていた時、アナスタシアは無理では無いのかと内心思っていたのだ。

 エドワルドは女に全く興味を示さない。どれ程の美女だろうと、対応は一律だと言われていたが、アナスタシアからすれば、当然だろうと思えたからだ。

 エドワルドの周りに寄って来る女はどれも似たような心持ち。彼女達はエドワルドの金や権力、容姿を目当てに寄って来るだけ。

 その為に媚びへつらい、貪欲に欲しがる。エドワルドの事等何も考えずに。エドワルドも同じ価値観だとでも言いたげに。

 そもそも、エドワルドは外見よりも中身を重視する男で、媚びへつらう女を特に嫌う。

 当然だろう。エドワルドの母であるハンナが、時折マーウィンに見せる姿がそれなのだ。

 エドワルドを嫌悪する癖に、その癖、マーウィンの前ではエドワルドが悪いのだと言い切り自身の正当性を主張するのだ。

 そんな母と同種の女ばかりに寄って来られた所で、あのエドワルドが、興味を示す訳が無い。

 だが、この国の貴族の女性の殆どは、そう言った女性ばかりなのだと、アナスタシアは知っていた。

 だからアナスタシアも、エドワルドは独身のままでいるのではないかと思っていたのだ。
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